♭1 ”犬並み”家の人々
※ 作品は最後まで無料で読めます
うちの家では、人間の価値が“犬基準”で測られている。
今朝は「お座り。と言われたらすぐにしなさい」と叱られたばかりだ。
家での父は忠誠心が低い。
会社では命令一つで伏せるくせに、家では「今やろうと思ってた」と、言いはするが動かない。散歩――つまりゴミ出しや町内会――を嫌がるため、最近では「反抗期の老犬」と陰口をたたかれている。
母は吠え癖がある。
宅配便にもテレビのコメンテーターにも、政治家の“一言”にさえも吠える。
番犬としては優秀だが、吠えすぎて誰の声も聞こえない。
父が注意すると、母はさらに激しく吠える。
尻尾を丸めた父の様子を確認後「ピコッ!」と、序列が入れ替わる音がした気がした。
妹は芸覚えがいい。
芸は三回も見れば覚えている。
ただし面倒くさいのは、褒美がないと完全に止まるところだ。
今は冷蔵庫の前に座り、“テコでも動かない覚悟”のようだ。
僕は空気の匂いを嗅ぎ間違える。
冗談だと思って言ったことが本気だったり、その逆だったりする。
結果、評価は「散歩には連れて行けるが自慢はできない犬」で安定している。
ただし我が家において、その“安定感”は、求められていることではない。
評価は毎日変動する。
褒められると上がり、ため息で下がる。餌の量は同じだが、撫でられる回数が違う。
それが犬並みだ。
ある日、母が犬を連れて帰ってきた。
保健所からの一時預かりらしい。雑種で、芸ゼロ、年齢不詳。名前を呼んでも…だいたい来ない。取りあえず上目遣いに僕を見るが、視線を落とすのもやけに早い。
父は言った。「こいつ、指示を聞かないな」
母は言った。「吠え方も知らないみたいね」
妹は言った。「頭悪そう」
しかし僕的には…存在感だけは僕以上に、ある。
犬は何もしない。吠えない。媚びない。寝ている。起きている。以上だ。
それなのに家族全員が、なぜか静かになった。
次第に母は吠えなくなり、父は無言で水を替えた。
妹は芸を見せるのをやめた。
しかし…やはり僕は空気の匂いを嗅ぎ間違えてばっかりだ。
そしてその犬は“評価の外”にいた。
数日後、父がしびれを切らした。「芸、仕込まないのか」
妹が動画を見せ、母が名前を連呼した。
僕は相変わらず僕のままのようだ。
そして犬は…一度だけこちらを見たが、寝た。
その瞬間、家族全員が敗北した気がした。
犬は犬のままで十分だったようだ。
褒められなくても、役に立たなくても、序列に参加していなかった。
しかし、序列に入って来ようとされても…困る。
夜、父が言った。
「この犬、犬にしては出来がいいな」
その瞬間、にらまれた。
そして、父はすぐにしっぽを巻いた。
僕は犬にあこがれている。
そして犬並みとは案外…最高評価なのかもしれない。
★★★★ 以下はAIによる講評です ★★★★
もっと深く短編を読みこなしたい方や、
自分でも短編を書こうと思っている方は、是非参考にして下さい。
また、あなたの感想、評価もお伝えいただければ今後の励みになります。
P.N 四九十三(しく・じゅうぞう)拝
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
