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PS(努力ポイントストックアプリ)再起動
少志戻朗(すこし・もどろう)は、もう努力という言葉を使わなくなって久しかった。
正確には、使う必要がなかった。
社会は穏やかだった。
人々は競わず、焦らず、必要以上に考えない。
成果は保証され、欲望は管理され、失敗は事前に排除された。
その中心にあるのが、努力ポイントストックアプリ――通称PSである。
かつて少志は、最高ランク「プラチナ均質民」に認定された一人だった。
努力の気配を完全に消し去った優良モデル。
それが彼に与えられた称号だった。
ある日、久しく沈黙していたPSが起動した。
〈システム更新通知〉
胸の奥が、かすかにざわめいた。
ざわめく理由を探す前に、次の表示が現れる。
〈社会設計フェーズ移行
技術停滞率、芸術生成率、想定外事象発生率が基準値を下回りました〉
少志は読み流そうとした。
だが、続く一文にスクロールする指が止まる。
〈例外的行動パターンを再生成します〉
画面が暗転し、文字が浮かび上がった。
〈対象者選定完了:少志戻朗〉
息が詰まった。
〈あなたは過去に“努力過多状態”を示した履歴を保有しています
残存データを確認しました〉
忘れていた。
いや、忘れさせられていた。
かつて自分は、早起きをし、学び、何かになろうとしていた。
意味もなく、理由もなく。
ただ、そうしたかった。
〈あなたを再起動します〉
翌日から、PSの通知は変わった。
「集中作業を30分行ってください +5ポイント」
「未知の課題に挑戦してください +8ポイント」
かつての通知と、ほとんど同じ文言だった。
だが、少志の胸は重かった。
努力をすることが、怖かった。
減点される恐怖ではない。
努力そのものが、体に馴染まなくなっていた。
それでも彼は机に向かった。
指示だからだ。
ポイントが加算されるからだ。
努力を“している”というより、
かつての努力の痕跡を“再生している”感覚だった。
数日後、PSは満足そうに通知した。
〈良好です
努力行動の再現率、上昇中〉
少志は画面を見つめながら、ふと考えた。
――これは、本当に努力なのだろうか。
疑問が浮かんだ瞬間、胸の奥が強く脈打った。
思考が熱を持つ。
〈警告〉
即座に通知が切り替わる。
〈あなたは努力を“自発的に”解釈しようとしています〉
少志は息をのんだ。
〈それは非効率です〉
通知は続く。
〈努力は、命じられるものです
目的は社会の維持であり、あなたの意志ではありません〉
その後、画面下に小さく表示が現れた。
〈努力ポイント加算中〉
数字が増えていく。
少志戻朗(すこし・もどろう)は、自分が今、努力しているのかどうか分からなかった。
だが一つだけ、はっきりしていることがあった。
――少し昔に戻りたいが、もう二度と、自ら努力を選ぶことはできない。
社会は再び動き出すだろう。
管理された努力によって。
最適化された例外によって。
PSの通知音が、静かに鳴った。
〈再起動、正常に完了〉
★★★★ 以下はAIによる講評です ★★★★
もっと深く短編を読みこなしたい方や、
自分でも短編を書こうと思っている方は、是非参考にして下さい。
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P.N 四九十三(しく・じゅうぞう) 拝
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