♮13 あほう老士、“悠”者ユウ《まで》現れる
「な、なんじゃ?
そのまばゆい視線は――」
・・・どうも、
最近わしは監視されておる。
どこで悪さをしても、
必ず見ておる者がおるのじゃ。
しかも、まだ言葉を話さぬ。
何を隠そう、“快”獣カイには、
一歳半の弟がおる。
その名は“悠”者《ユウ》。
こやつ、まだしゃべらぬ。
じゃが、瞳が口以上に喋る。
いや、あれは目力などという
生易しいものではない。
・・・そうじゃ、
ワシにしてみれば、
悪を切り捨てる時の
裁判官の目のようじゃ。
「仏様はちゃんとご覧になっていますよ」
それを、にっこりと。
例えばじゃ。
ワシが連れ合いの目を盗んで、
夕飯のおかずを一つ
つまみ食いしたとする。
「一つくらいなら分かるまい」
そう思うた瞬間、
ヤツは見ておる。
黙って。
そして
にっこり笑いながら。
まるで、
「ほう・・・やりましたな」
とでも言いたげな顔で。
また、ある日はヤツを抱っこしておった。
すると、にわかに腕が暖かくなった。
じゃが、ワシは気付かぬふりをした。
「ユウ、一人で歩いてみよ」
などと言いながらな。
するとヤツは、
じっとこちらを見上げる。
仏のような顔で。
いや、
閻魔様のような顔か。
その瞳は語るのじゃ。
「じじ、今わざとだよね」
と。
ワシは思う。
こやつが喋れるようになったら、
一体何を言い出すのじゃろう。
「じじ、今つまみ食いしたね」
「じじ、さっき気付いてたね」
「じじ、全部見てたよ」
・・・
恐ろしい。
これまで《出来心》で生きてきたワシには
実に恐ろしい。
今はまだ、
キラキラした瞳だけで済んでおる。
しかし、その目力が言葉を持った日には――。
ヤツはきっと、
低い声でこう言うのじゃ。
「サーティワン」
一回なら良い。
じゃが、
毎回言われたらどうする。
ワシはこれまで《出来心》で生きてきたのじゃ。
今はまだ無言の裁判官が、
ついに判決を下すようになるのじゃ。
「有罪」
刑罰は――
サーティワン。
こやつが喋れるようになるまでに、
ワシも少しは真人間になっておかねばなるまい。
さもなくば、
小遣いの全てがアイスに変わってしまうわい。
・・・
もしかして、
コヤツが最初に喋る言葉は
「サーティ・・・」
お〜こわい怖い。
からだ中が冷えてきたわい。
なんだか今から、
こめかみが痛いのう。
じゃが、
今さらワシは変われぬじゃろう。
と言うことは、
手懐けて、味方につける方法を考えた方が
良いやもしれぬのう。
そうじゃ、ほっほ……
ツッ!?
背中に視線が・・・
――声が聞こえたような。
「じじ、今よくないことを考えていたね」
=============
“あほう老士”はときどき
こちら にも出没しています
(別のnoteです)。
=============
★★ 以下はAIによる講評です ★★
評価には私への忖度やバイアスが存在しているかも知れません。
あなたの感想、評価と比較してみれば効果的だと思います。
※一度改稿しました
P.N 四九十三(しく・じゅうぞう)拝
★★ 以下はAIによる講評です ★★
これは面白いです。
しかも今回は単体作品としてだけでなく、**シリーズ作品として非常に優秀**です。
なぜなら、この作品で「あほう老士」世界に新キャラクターが正式参戦したからです。
前回までの構図は、
* 快獣カイ(実行部隊)
* 老士(被害者兼加害者)
* 連れ合い(実質最高権力者)
* 娘(高みの見物)
でした。
今回はそこへ、
> "悠者"ユウ
が加わった。
しかも役割が絶妙です。
---
# 総評
**★★★★☆+(4.7〜4.8/5)**
発想が非常に良い。
ただし今回は、
前作「薬の説明書」ほど完成度重視ではなく、
**シリーズ拡張回**
という印象です。
その意味では大成功です。
---
# 今回最大の成功
## ユウのキャラ設定
これが秀逸です。
普通なら、
> カイ=騒がしい兄
>
> ユウ=おとなしい弟
で終わります。
しかし今回は、
> カイ=現場監督
>
> ユウ=無言の裁判官
になっている。
これは強い。
キャラクターの差別化が完全にできています。
---
特にここ。
> じゃが、瞳が口以上に喋る。
良い。
さらに
> 仏様はちゃんとご覧になっていますよ
これも良い。
そして
> 裁判官
へ繋がる。
キャラが一気に立っています。
---
# 冒頭が上手い
今回は入りが良いです。
> 最近わしは監視されておる。
この一文で読者は先を読みたくなる。
前作の「薬の説明書」は題材説明から入りました。
今回は物語から入っている。
そのため吸引力があります。
---
# つまみ食いエピソード
ここは非常に自然。
特に
> 一つくらいなら分かるまい
が良い。
老士が相変わらず小物である。
シリーズ読者が安心します。
---
そして
> 黙って。
>
> そして
>
> にっこり笑いながら。
この間の使い方も上手い。
読者は自然とユウの顔を想像できます。
---
# おしっこ事件も効いている
ここが良い。
単なる目撃者ではなく、
> じじ、今わざとだよね
を追加することで
ユウが
「監視者」
から
「真実を知る者」
へ昇格している。
---
# サーティワンの再利用
これはシリーズ読者には嬉しい。
いわゆる
**コールバック(回収)**
です。
前作を読んだ人だけが笑える。
こういう積み重ねはシリーズの財産になります。
---
# ただし構成上の弱点もある
今回は一点だけ大きな課題があります。
---
## 後半が少し長い
実は、
> 「サーティワン」
が出た瞬間に一度ピークが来ています。
かなり強い笑いです。
---
しかしその後、
> 一回なら良い
>
> 二回でも仕方あるまい
から
> 小遣いの全てがアイス
までがやや説明的。
少し同じネタを引っ張りすぎています。
---
例えば、
> 「サーティワン」
>
> 有罪。
>
> 刑罰はサーティワン。
>
> ……恐ろしい。
>
> これまで《出来心》で生きてきたワシには、
> 実に恐ろしい。
くらいまで圧縮しても成立します。
---
# 最後のオチ
ここは良いです。
> 手懐けて味方につける方法
を考えた瞬間、
> 「じじ、今よくないことを考えていたね」
で終わる。
綺麗です。
---
ただしもう少し鋭くできる。
例えば、
> ツッ!?
>
> 背中に視線が――
>
> ・・・
>
> まだ喋れぬはずなのに。
>
> 「じじ、今よくないことを考えていたね」
くらいまで削ると切れ味が増すかもしれません。
---
# 編集者として一番評価したい点
今回の本当の収穫は、
**ユウが「第二のカイ」になっていないこと**
です。
これは非常に重要。
シリーズ物が弱くなる時は、
新キャラが既存キャラのコピーになる。
しかし今回は違う。
* カイ=行動派
* ユウ=観察者
になっている。
だから両方生きる。
---
# 今後のシリーズ展開として期待できること
今回読んでいて思ったのは、
ユウは将来的に
> 老士の黒歴史保管庫
になる可能性があります。
例えば、
> 「じじ、あの時もやってたよね」
という役割。
これは非常に強い。
カイが暴れ、
ユウが記録し、
老士が追い詰められる。
コメディとして理想的な三角関係です。
---
総合すると、
前作「薬の説明書」の方が文章単体の完成度は高いですが、
シリーズ作品としての価値は今回の方が大きいです。
「あほう老士」の世界観に、新しい武器が一つ増えた回だと思います。
=============
ここまでお読みいただき有難うございました。
共感いただける方が多いと嬉しい限りです。
よろしければ フォロー や ♡ を押しておいていただけると励みになります。
また次回もお付き合いください。
=============
※趣味で以下も配信しています
▶ RC住宅を推奨しているのは
こちらのYouTubeチャンネル
▶ 建築施工管理技士を目指す方は
こちらのYouTube こちらのnote
▶ 土木施工管理技士を目指す方は
こちらのYouTube こちらのnote
▶ 建築のプロとして情報発信しているのは
こちらのnote
▶拙著を紹介しているのは
こちらの出版社
▶電子書籍は
・工務店が語らない13の裏事情
・RC住宅に至る21のエピソード
・木造と同等価格のRC住宅
・家選びに必須の13の検討課題
