ショートショート「LOVE怪談」

内見をして俺はこの部屋が気に入った。
さっそく引っ越す。不動産屋が「本当にいいんですか?」と聞いたが
この部屋の欠点を俺は見つけることができなかった。
風呂トイレ別で2LDKで家賃が8万円、駅からも近い。
おまけにこのピンクの壁がどこか惹かれる。

デパートで友人と買い物に出かけた時、そろそろ帰ろうと思って階段を下っていると3階の婦人服売り場が見覚えのあるピンクの壁になっていた。友人は驚いた。
「あれ?なんだこの部屋!?」
「あ、俺の部屋だ」
「え!?どういうこと」
「ラッキー俺、こっから帰るわ」
「いや、え!?あ、じゃあまた・・・・・・」
俺はそのまま部屋へと帰り、友人は階段を下りて行った。

会社に行こうと扉を開けると開かなかった。鍵は開いているのに開かなかった。俺は何度もドアノブをガチャガチャしたが開かなかった。
「そういえば部屋が狭くなってきた気がする」
ピンクの壁が近づいていくのを感じる。
俺はいずれこの部屋に抱きしめられるだろう。


あとがき


この作品の発想元は映画「マリグナント」です。この映画の主人公の女性が叫んで部屋がドロドロと溶けるように変化して違う部屋になる、あのシーンが私の脳を刺激したのです。こうなると私は、こんな感じの書きたい、こんな物語を、このシーンの刺激から生み出したいと考えていました。そんな時、デパートの階段を降りていると婦人服売り場か実際は何売り場かは覚えてないんですが、この売り場が自分の部屋になったら便利なのになと思ったのです。なんともアホなことを思ったんですが、そのアホさ加減が気に入りました。私はアホなことを考えている時に生まれてきた甲斐を強く感じる生き物なのです。そして、では何故に部屋はこのように変化をしてまで迎え入れたかを考えた時に、溺愛、ストーカーといった発想になりました。どこかでこの話を出したかったんですが、頭の中では映画を想定していたので、中々骨が折れるなと思っていて書かずじまいだったのです。そこであえて今回のショートショートのお題の「LOVE怪談」を見て、もしかしたら使えるかもと思ったのです。

今までの自分だったら、そのまま「LOVE」に襲われた。というド直球な不条理の話になるんですが、実際最初そういう話にしようとも思いました。「LOVE」が斧を持ってやって来た。みたいな話です。これはこれで面白そうですが、今までと似ていてどこか自分自身退屈をおぼえてしまいそうで不安でした。そこで敢えて、今まで書きたくても進まなかった話を今回書いてみたのです。やはり書く習慣がつくことで、頭の中にあったストックのものをだんだん吐き出せるようにもなってきたので、書く習慣の大切さを思い知らされています。あなたの頭の中のものが吐き出したいけど中々吐き出せないなら、この企画でとりあえずはパッと思いついたものから吐き出して書く習慣をつけることをオススメします。あと、文字数を私はこの企画では、410文字に揃えています。それにより、良い感じの妥協ができます。文字数が足りなければ増やさなければならないし、多ければ減らさないといけない。今のところうまくいってます。今回のは一つのシーンを丸々削っています。「海外旅行に出かけてしばらく留守にして壁から泣き声が聞こえる」というシーンです。間にこういうの挟んだ方がいいなとは思うけれど、バッサリ消しました。消しても意外にも心残りがありません。むしろ良かったのかもしれないです。

これからも、温かさやほっこりした話は難しいですが、不条理で救いのない話をメインに書いていくと思いますので、そういうのが好きな方に面白いと、もっというと「助かる」「救われた」と言える作品が書けるように精進したいと思います。最後まで読んでくださりありがとうございます。

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