【不動産投資】「5年後の売却価格」から逆算して物件を選ぶ──2棟買ってわかった、手残りを最大化する“出口”の描き方
「5年後の売却価格」から逆算して物件を選ぶ

「この物件、毎月いくら手残りが出るかな?」
不動産投資を始めたばかりのころ、僕が真っ先に計算していたのは「インカムゲイン(家賃収入から経費と返済を引いたキャッシュフロー)」でした。
もちろん、毎月の手残りは大切です。しかし、2棟を購入し、エクセルで何通りものシミュレーションを回すうちに、もっと重要な視点があることに気がつきました。
それが「何年後に、いくらで売却できれば、トータルの手残りがプラスになるのか」という出口戦略(キャピタルゲイン・ロスを含めたリターン)です。
今回は、僕が所有する「築浅」と「築古」の2棟を例に、購入時点でどのように出口を想定し、どうやって手残りを最大化しようとしているのか、その思考法を公開します。
■ なぜ「出口」から逆算しなければならないのか
不動産投資には、絶対に避けて通れない税務上の落とし穴があります。それが「デッドクロス」です。
デッドクロスとは
ローンの「元金返済額」が、帳簿上の経費である「減価償却費」を上回ってしまう状態のこと。
デッドクロスを迎えると、手元に残る現金(キャッシュフロー)よりも、税務上の利益のほうが大きくなります。その結果、手元に現金がないのに多額の税金を払わなければならないという、最悪の「黒字倒産」状態に陥ります。
つまり、物件を買うときには「いつ減価償却が切れてデッドクロスを迎えるのか」を正確に把握し、その前に売却するか、持ち続けるための対策を打つか、あらかじめ決めておかなければなりません。
僕が属性の違う2つの物件(築浅の柏アパートと、築古の志木アパート)を選んだのは、この「デッドクロスまでの期間」と「出口の狙い」が明確に違うからです。
■ 1棟目(柏・築浅):安定の「長期保有」戦略
1棟目に購入したフェリックス柏は、取得時「築4年」の木造(準耐火)アパートです。
この物件を選んだ最大の理由は、減価償却が18年も残存していることでした。
18年という長期にわたって安定した税シールド(節税効果)を得られるため、デッドクロスを迎えるまでの猶予が非常に長く設定されています。
この物件の出口戦略は、基本的には「長期保有」です。
シミュレーション上、仮に10年後に売却した場合でも、ローン残債は十分に減っており、かつ建物の帳簿価格(簿価)も適度に残っているため、譲渡所得税を抑えつつ手残りを確保できる計算になります。
現在の低キャップレート(利回りが低く価格が高い)環境が続くのであれば、無理に売却せず、長く持ち続けて毎月のキャッシュフローを積み上げるのが最も理にかなっていると考えています。
■ 2棟目(志木・築古):「デッドクロス前売却」での資金作り
一方、2棟目に購入した志木のアパート(MYK VILLAGE IV)は、取得時「築18年」の築古木造です。こちらは柏の物件とはまったく違う狙いで購入しました。
築古木造の最大の特徴は、「短期間で大きな減価償却が取れる」ことです。
この物件は、取得後わずか7年で建物の減価償却(年間約170万円)が完全に終了します。つまり、7年後には確実に強烈なデッドクロスが訪れ、年間約60万円もキャッシュフローが悪化する計算になります。
では、なぜそんな物件を買ったのか。
それは、「デッドクロス前に売却し、次の物件(3棟目・4棟目)の頭金を作るため」です。
築古物件は利回りが高いため、初期の自己資金を抑えつつ(レバレッジを効かせつつ)、毎月分厚いキャッシュフローを生み出してくれます。さらに、短期の減価償却で個人の所得税を大きく圧縮できます。
ここでの戦略は、「最初の7年間で得られる高いキャッシュフローと節税効果をフル活用し、その資金でローンの繰り上げ返済を行って残高を圧縮。そして償却が切れる前に売却して、まとまった現金(次への頭金)を手にする」というものです。
■ 売却シミュレーションで見えた「現実」
ただし、この志木の物件(築古)の出口戦略には、シミュレーションをして初めてわかったシビアな現実もありました。
単純に「6〜7年後に売ればいい」と考えて計算してみると、32年ローンを組んでいるため元金の減りが遅く、そのまま売却するとローン残債が売却価格を上回ってしまう(売却損が出る)リスクがあることが判明したのです。
築古物件を6年後に売ろうとすると、相場(キャップレート8〜10%)で売却した場合、手残りが数百万円のマイナスになる計算が出ました。
ここが「出口からの逆算」の最も重要なポイントです。
この現実を事前に数字で把握できているからこそ、「ただキャッシュフローを使って贅沢をする」のではなく、「繰り上げ返済に回して残高を減らす」という明確なアクションプランが立てられます。
保有中のインカムゲイン(家賃収入+節税効果)の積み上げと、売却時のキャピタルロス(残債超過)を相殺して、最終的な「トータルリターン」がプラスになる分岐点(損益分岐キャップレート)を常に意識することが、築古投資の生命線になります。
■ まとめ:物件ごとに「役割」を持たせる
出口戦略とは、毎月の手残りだけでなく「売却時の手残り」まで含めたトータルリターンを設計すること
築浅物件(柏):減価償却が長く、デッドクロスが遠いため「長期保有」で安定したキャッシュフローの土台にする
築古物件(志木):償却が短くデッドクロスが早いため、「償却切れ前の売却」を前提とし、次物件の頭金を作るエンジンにする
売却時に残債が売却価格を上回るリスクを事前にシミュレーションし、保有中のキャッシュフローで繰り上げ返済を進めるなどの対策を打つ
不動産投資は、買った瞬間に「どう終わらせるか」が決まっている事業です。
「なんとなく家賃が入るからいいや」ではなく、「この物件は長期保有のディフェンス用」「この物件は数年後に売却して頭金を作るオフェンス用」と、ポートフォリオの中で明確な役割を持たせることが大切です。
これから物件を買う方は、ぜひ「5年後、10年後にいくらで売れるか(そのとき残債はいくらか)」をエクセルで逆算してから、買付証明書にハンコを押してみてください。
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