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「役者になってくれて、ありがとう。」#1 春風のような人――松下洸平さんへ

・はじめに
このエッセイでは、一人の俳優、一つの役、一つの演技。
「その演技が自分の人生に何を残したのか」ということや
「あの瞬間、この人が役者でいてくれたから私は救われた」という感謝を込めた思いを込めて、一人の人間が役者という仕事に救われた側から送る「手紙」のような形で綴ってみたいと思います。

「役者になってくれて、ありがとう。」というタイトルは、役者という仕事そのものへの感謝状です。なので、「役を語る」というよりも「役者さんが私の人生に残してくれた温度」を書こうと思います。

第一回目は、先日最終回をむかえたドラマ「銀河の一票」での熱演も記憶に新しい、松下洸平さんです。

役者という仕事は、不思議だ。
誰かの人生を生きながら、気づけば誰かの人生を支えている。

演じている本人は、そのつもりではないのかもしれない。それでも、画面の向こうで流した涙や、何気なく発した一言が、見知らぬ誰かの心にそっと住み着くことがある。

だから私は、この連載を書こうと思った。
好きな俳優さんを語るためではない。

「あなたが役者になってくれて、本当によかった。」
その感謝を、一人ずつ言葉に残したいから。

その最初に思い浮かんだのが、松下洸平さんだった。
私にとって松下さんは「温もり」を表現できる人だ。

それは、笑顔だけではない。
優しい役ばかりを演じているからでもない。

もっと根っこの部分にある、人を安心させる空気を持っている。
声なのか。間なのか。視線なのか。

きっと、そのどれもなのだろう。

著書「フキサチーフ」を読んでいても、役として出るセリフにも、
松下さんの言葉は春風のようだと思う。
頬をそっと撫でていく風のように、静かで柔らかい。
押しつけることも、急かすこともない。

「大丈夫」と言われたわけでもないのに、なぜか心が少し軽くなる。
そんな不思議な温度がある。
その魅力を、私はドラマ「放課後カルテ」で改めて感じた。

子どもたちに向けるまなざし。
決して感情を大きく振り回さない話し方。
厳しさの奥に隠れている優しさ。
あの作品を見ながら、何度も思った。

「昔の私にも、この先生に会わせてあげたかった」と。

子どもの頃の私は、自分の気持ちを言葉にすることが得意ではなかった。
大丈夫なふりばかりしていた。
だからこそ、あんなふうに一人ひとりをちゃんと見てくれる大人がいたなら、救われた日もあったのかもしれない。

作品を見終えたあとに残ったのは、感動という言葉だけでは足りない、静かなぬくもりだった。

でも、松下さんの魅力は、それだけでは終わらない。

初めて舞台を拝見した日のことを、今でもよく覚えている。
客席まで届く声。
全身を使って感情を伝える力。
一瞬で空気を変える存在感。

「まだ私の知らない松下洸平さんが、こんなにもいたんだ。」

そんな発見に胸が高鳴った。

役者という仕事には、底がない。
その人の引き出しは、作品を重ねるたびに増えていく。
そして松下さんは、その引き出しを見せびらかすことなく、作品ごとに自然と開いていく人なのだと思う。

その振れ幅を強く感じた作品の一つが、「MIU404」だった。
第2話で松下さんが演じたのは、悲しみを抱えた犯人。

それは決して「悪」だけでは語れない人物だった。
人は追い詰められたとき、どこで道を間違えてしまうのか。
本当は誰かに助けてほしかっただけではないのか。

そんな問いを、派手な演技ではなく、抑えた表情や震える声で見せていた。

私は悪役が好きなのではない。
その人がそうならざるを得なかった人生まで想像させてくれる演技に心を動かされる。

松下さんのお芝居には、その余白がある。
だから見終わったあとも、その人物は私の中で生き続ける。

そして最近、ドラマ「銀河の一票」を見て、また新しい表情に出会った。
役によってこんなにも空気を変えられるのか、と驚かされた。

同じ人が演じているのに、声の響きも、立ち姿も、目の奥に宿る感情も違う。
「演じ分ける」という言葉は簡単だけれど、本当に難しいことなのだと思う。

役者は、自分を消しながら、自分でしか表現できないものを残していく。
その矛盾を成立させているからこそ、私は何度でも惹かれてしまう。

インタビューのお仕事をしていると、作品の裏側で俳優さんたちがどれだけ役と向き合っているのかを知る機会がある。
一つのセリフ、沈黙、視線。

そこには、画面では見えない時間が積み重なっている。
だから私は、作品を見終わったあと「演技がうまかった」という一言ではとても終われない。

その人が積み重ねてきた時間ごと受け取ってしまうからだ。

松下洸平さんのお芝居には、人を信じたいという願いがあるように感じる。
だから、優しい役も、苦しい役も、孤独な役も、どこかに人間へのまなざしが残る。

その温度が、私は好きだ。

エンターテインメントは、ときどき「なくても生きていけるもの」と言われる。
でも私はそうは思わない。救われた側の人間だからだ。
苦しい日に見たドラマ。
心が動かなくなっていた日に届いた一つのセリフ。
名前も知らない誰かが演じてくれた役に、今日まで支えられてきた。

だから私は、これからも役者という仕事を信じていたい。

誰かの人生を演じることは、きっと、誰かの人生を照らすことでもある。

以下は、私からの手紙✉️です

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