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「そのシステム、ほんとに使っているの?使用料すごいんだから」——運用を決めずに導入すると、一番高くつく話

こんにちは、再起動史郎です。今日も再起動絶好調です。


そのひと言は、四半期レビューで飛んできた

「このシステム、ほんとに使ってるの? 使用料すごいんだから」

経理からそう聞かれたのは、四半期の予算レビューの場だった。画面に映っているのは、1年前に設計部門向けに導入したクラウド版のテストシステムの使用料明細。

正直、返答に詰まった。

「……確認して、また報告します」

そう言うしかなかった。使われているかどうかを、感覚でしか把握していなかったからだ。


導入したときは、みんな乗り気だった

そもそもの経緯を思い出す。

1年前、設計部門から「テスト工程をクラウド版のシステムに移したい」という要望が上がってきた。検証環境をすぐに立てられる、外部の協力会社ともデータ共有がしやすい——導入の理由はどれも筋が通っていた。

説明会も開いた。デモも好評だった。「これは便利そう」という声も聞こえていた。予算を確保し、契約し、アカウントを配布した。導入プロジェクトとしては、完了。そこで、情シスとしての意識も一区切りついてしまっていた。


ログを見て、青ざめた

経理に「確認します」と言った手前、ログイン履歴と操作ログを引っ張り出した。

結果は、想像より悪かった。

配布したアカウントのうち、直近3ヶ月で一度もログインしていないものが半数近い。ログインしていても、月に数回、数分だけという利用も多い。「本格的に使っている」と言えるアカウントは、ごく一部だった。

クラウドの使用料は、契約したアカウント数に応じて発生する。使っていようがいまいが、請求は同じ額でやってくる。

つまりこの1年、ほとんど使われていない仕組みに、毎月一定額を払い続けていたことになる。


なぜ「導入した」で終わってしまうのか

原因を探って行き着いたのは、結局のところ一つだった。

運用が、そもそも固まっていなかった。

導入プロジェクトでは、「何を」「いつまでに」「誰が使えるようにするか」は決めていた。でも、稼働した後の話——誰が使い方を定着させる責任を持つのか、使われなくなったら誰が気づくのか、費用に見合っているかを誰がいつ確認するのか——は、誰も決めていなかった。

現場からすれば、新しいシステムを覚えるより、慣れた従来のやり方の方が早い。締め切りが近いときほど、その傾向は強くなる。それ自体は自然なことだ。問題は、そうやって使われなくなっていく流れを止める運用の仕組みが、最初から存在しなかったことにある。

情シス側も、導入プロジェクトの完了をもって「成功」とみなしていた。契約更新の際も、「去年契約したから今年も」という惰性で更新が続いていた。誰かの怠慢というより、運用フェーズの設計そのものが抜け落ちていたのだ。

「導入した」で終わってしまうのは、現場が悪いのでも、システムが悪いのでもない。導入後の運用を誰がどう回すか、決めずに走り出したことが原因だった。


情シスが次に作った、地味な仕組み

この一件のあと、私が作ったのは特別な対策ではない。

利用回数と延べ利用時間を、月次で可視化する仕組みだ。

やっていることは単純で、システムのログを月に一度集計し、部門ごとに「何人が」「何回」「合計何時間」使ったかを一覧にするだけ。それを四半期ごとに部門長と共有する。

これだけで、二つのことが起きるようになった。

一つは、利用が落ち込んでいるシステムに早めに気づけること。「導入したのに使われていない」を、経理に指摘される前に情シス側から拾えるようになった。

もう一つは、契約更新のたびに「継続するか、縮小するか、やめるか」を、感覚ではなく数字で判断できるようになったこと。アカウント数を実利用者数に合わせて削減し、使用料を圧縮できたケースも出てきた。


費用負担を、使う部門に移した

ただ、可視化の仕組みだけでは、「運用が固まっていない」という根っこまでは解決しなかった。

そもそもの原因を突き詰めると、使用料をIT部門が一括で負担していたことにもあった。使う側の設計部門にとって、それは「自分たちの財布から出ていくお金」ではなかった。だから、使われなくなっても誰も困らない。痛みを感じるのは、請求書を受け取るIT部門だけだった。

そこでこの一件を機に、使用料の負担を設計部門に移した。予算も、利用状況の確認も、契約更新の判断も、使う部門が自分で持つ。情シスは、そのための利用データを提供する役に回った。

効果は、思った以上にはっきり出た。自分たちの予算から出ていくとわかった途端、設計部門内で「これ使ってる?」「使ってないなら減らそう」という会話が自然に始まった。第三者から指摘されるより、当事者が自分で気づく方が、ずっと早い。

派手な取り組みではない。ただ、「入れて終わり」を防ぐには、地味な利用実績の可視化と、費用を使う人に寄せること——この二つの積み重ねが一番効く。


「導入」はゴールではなくスタートだった

システムを入れるとき、私たちは「これで解決する」という前提で動きがちだ。

でも本当の勝負は、導入した後にある。使われているか。使われているなら、それに見合う成果が出ているか。使われていないなら、なぜか。

これを定点観測する仕組みがなければ、どんなに良いシステムを選んでも、ただの固定費になって終わる。

経理からのあの一言は、耳が痛かった。でも、おかげで一つ学んだ。

「導入した」で満足しない。「使われているか」まで見届ける。

それが、情シスの本当の仕事なのだと思う。


この記事は、製造業の情シス担当者が実際に経験した話をもとに書いています。


著者プロフィール

再起動史郎|製造業現役情シス

ソフトウェアの世界にどっぷり浸かって数十年。かつては組込系エンジニアとして製品の中身と格闘していたが、いつの間にか社内インフラ・システム全般を一手に担う情シス担当へ。現在は中堅製造業に勤務。

現場からの「ちょっといい?」に今日も応じながら、再起動を勧め、表領域を監視し、たまにコンベアを止めるよう求められる日々を送っている。

同じ境遇の情シス仲間に向けて、リアルな現場の話を書いていきます。


まとめ

  • クラウドの使用料は、使っていなくても契約アカウント数に応じて発生し続ける

  • 「導入した」で終わってしまうのは、稼働後の運用(誰が定着させ、誰が気づき、誰が費用対効果を確認するか)を決めていなかったから

  • 利用回数・延べ利用時間を月次で可視化すると、使われなくなった兆候に早く気づける

  • 費用負担を使う部門に移すと、当事者意識が生まれ、見直しが自然に進む

  • 情シスの仕事は「導入した」で終わりではなく、「使われているか」まで見届けること

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