髭は恋をする。 (毎週ショートショートnote)
「ちは~!」と陽気な声を響かせ、二つ年上の俺の従兄、照也がいつものように家にきた。
今夜は泊まり込みで照也イチ推しの新作ゲームを攻略するんだ。
隣町に住む照也は俺が同じ中学に入学したのをきっかけに、よく遊びに来るようになった。背ばかりが伸びてきた薄っぺら体形の俺と違って、照也は背も大きいし野球をやってるせいかがっしりとしてる。男の俺から見てもカッコいい。
夜中にゲームに白熱していると、窓の外から迷惑そうな声がした。隣に住む同い齢のリコが自分の部屋から顔を出している。
「ねえちょっとゲームの音下げてよぉ、眠れないじゃん……あ、照也先輩」
「ごめんごめんリコちゃん」
照也は素早く窓際に移動して網戸を開けるとリコに話しかけた。
「あ、あのさ、明日二人で登校するとき俺も混ぜてよね、よろしくー」
リコはツンとして俺をチラ見すると、愛想のいい笑顔を照也には見せた。
「毎日健人の顔見るのもさすがに飽きてるんで。先輩楽しいし大歓迎でーす。じゃおやすみなさい」
ったくリコのやつ! 相変わらずの毒舌だ。
ぶつくさ言う俺とは反対に、照也はなんだかご機嫌だった。
翌朝、朝食をなかなか食べに来ないから呼びに行くと、照也はシェーバーを使って慣れた手つきで髭を剃っていた。
――同じ年頃のやつの髭剃り、初めて見た。
ついじっと見てしまった俺の疑問に答えるように、「三か月位前からな。俺、結構濃いみたいでさ。リコちゃんに嫌われたくないじゃん」とニヤついて言う。
恋バナとかに鈍い俺も、なんで照也がしょっちゅう家に来てたのか、やっとわかった。
その途端、なんだか急にモヤモヤしだした。照也に差をつけられたようで無性に悔しい。
平静を装おうとして、俺は無意識に顔を掻いた。すると指先のあちこちに、小さく鋭いなにかが引っかかかった。――この前まで自分の肌に感じたことのなかった感触だった。
ふつふつと、ある思いが芽生えてきた。
照也なんかに負けねーぞ!
何度も粗い感触をなぞりながら、俺は強く心に誓った。
(了)822字
今回は青春掌編が書きたくなってラノベ調作品で参加です。
しかも堂々800字越えでスミマセン😅
残念ながら私には立派な髭は生えたことがないので😂、思春期男子の髭事情はネットを頼りに書きましたが、あくまで想像の世界……。生え始めってどうなんでしょう??
お読みくださりありがとうございました☺️
(この作品は小説家になろう、カクヨムにて公開中)
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