大団円
人はね、明るいものを求めているんだよ。屈託のない、憂鬱のない、憂いがあってもそれは大団円への跳び板、勧善懲悪、ハッピーエンド、めでたしめでたしで終わる要素、単なる物語の一場面にすぎないものでなければならないんだよ。絶望のまま終わるなんて、誰も望まないだろう?
みんな大変なんだ、お前だけが大変なんじゃない。あんまりいい時代じゃないんだよ、そんな時代があったならの話だが! ところで要素、単なる一場面… 物語の色合いに必要必須なこの要素は、とりたてて大事なことに思わないかね。こここそに重要な、考え甲斐が色めき立つ、頭や精神の働き甲斐のある、気力の充実、心神の充溢、お前の中にある神的精神に、今こそその躍動の機会が賦与されるものではないのかね。
娯楽や慰安、笑いばかりを求めている体勢… そのきっかけを求めて目を動かせば、そればかりが目に入ってくるね。それを求めているのだから当然だ、求めよ、さらば与えん、などの言葉も要らない。
落語の演会を観に行く人びとは、すでに笑う準備ができているんだよ。ネット小説やスマホでつくる空白だらけの小説に、人は娯楽を求めるよ。みんな大変なんだ、家計簿の計算に頭を使うばかりでね、せめて人智の集大・スマホにぐらい、慰めを求めたいものさ!
いいかい、いっぱい読まれたいなら、人をおバカにさせるものを書くべきだ。考え込ませるようなことを書くのはご法度だよ、ニーズに応えるのが作家の仕事、商売の基本なんだから。あるいは、ちょっと「ためになる」ふうなものを書くんだね。表面をやさしく、なぞるように… 5分でわかる番組のように、表面だけをつくろって、知ったかぶりのお面を供給するんだよ。それなりに需要がある。この需要と供給のバランスから逃れることはできないね、どこまで行ってもぐるぐる円環を描く、この成り立った軌道から外れることは反社、自殺にも等しい行為だよ。歯を浮かせて、足を浮かせて行くがいい、でないと落っこっちゃうよ、いいね、ランキング、評価の対象から。お前があんなに価値を置いていた…
単なる一場面、取るに足らない憂愁、忌むべき、避けるべき憂愁、憂鬱。苦しみ、煩悶、やるせなさ、悲しみ、つらさ、胸のかきむしられる思い。取り組みたいと思わないかね、この大事な一場面、取るに足らない物語の一要素、この「一」に、どれほど考えるべきことが満載されていることか、8tトラックどころじゃない、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に出てきたクルマみたいな未来カーだ。ただ走ればいいってもんじゃない… 何がここに積まれているか、よく検分するんだ。ガソリンは憂鬱! どこで戦争が起ころうが、こいつは採掘無限の絶対エネルギーさ。
