メンバーが結婚した時だけ活動再開するバンド|歌と言葉
去年の大晦日。大学の軽音楽部の後輩から、グループLINEに突然の報告が届いた。
「実は子どもが生まれました!」
嬉しくて、祝福の曲を書くことにした。
社会人になってから組んだ6人組バンド、「アプリコットキャンベル」。略してアプリコ。
何回もスタジオに入ったし、ライブはたしか3回した。いっぱい曲を作ったけど、音源はほとんど残っていない。よく飲みに行ったり、誰かん家に押しかけて朝まで騒いだりした。
「ボーカル」と「作詞家」は大人になってから出会った仲間だったけど、完全に「THE★青春」。って感じの思い出。
解散はしてないけど、みんな遠方に行ってしまったので、もう滅多に逢うこともできない。開店休業状態。
数少ないアプリコの音源
①自分が結婚した2017年に録音した『縁結び』
②ボーカルが結婚した2018年に録音した『bouquet』
③ドラムが結婚した2024年に録音した『森のハルウタ』(ただしボーカル以外全て打ち込み)
このように、アプリコはここ10年
「メンバーが結婚した時だけ、活動を再開するバンド」となっていた。
そして今回作った『with you』は、
④父親になったギタリストへのハナムケの歌。
「あいつ、aikoが好きだったよなぁ」という記憶から、女性目線の歌詞にしてみた。
『with you』
今朝はトーストが少し焦げました
でもあなたは気にせず笑って食べてた
特別なことは何も起きないけど
窓からの光がやけに温かい
泣き声が小さな世界を揺らし
私たちは一緒に目を覚ます
眠れない夜さえ愛おしくなるなんて
少し前の私じゃ想像もできなかったよ
なんでもない日 なんでもない今
ここで生きているよ
名前はなくても 確かな幸せ
迷いながらも 手探りのままでも
かけがえのない日々
今日もあなたと
不器用なままでもいいと思えた
隣にあなたがいてくれるから
強くなれなくて落ち込む日もあるけど
「そのままがいい」と
あなたが真面目な顔で言うから
なんでもない日 なんでもない今
繰り返し積み重ねて
ともに生きていこうね
明日も歩いていこうね
あなたと、
あなたと。
二人の暮らしに赤ちゃんが加わり、夜もゆっくり眠れず、日々ぶっつけ本番で戸惑いの連続の中、深い幸福を噛み締めるという温かい内容。
youは「パートナー」のことと、「子ども」のこと、両方を示す「複数形」の、youだ。
『c/w』←カップリングウィズ、というトリッキーな案もあったけど、結局最初の直球タイトルに落ち着いた。
この曲はSunoで制作した初めての曲。
100回近く生成し直したし、メトロノームに合わせて鼻歌を録音してみたり、DAW上で切り貼りしてみたり、たくさん遠回りした。
最終的に全パートを手弾きでオーバーダビングした音源を作ってから、それをSunoにカバーさせる形で仕上げた。
でも完成した生成物には、その苦労の跡は残らない。数々の深夜の格闘を全く感じさせず、たった数分間でサラッと出力したかのように、小綺麗に鳴っている。少し虚しかったけれど、送った直後に
「すっごー!明日トースト焦がしてみよー!」
「伝わった想いのぶん、こっげこげにしますね〜!」
と、いつもの調子で飄々とおどけて返してくれたから、「あぁ、贈って良かった」と思った。
作り方なんて、どうでもいいや。
いつかみんなで演奏できたら、この曲は本当に「アプリコの曲」になれる気がする。
後日、グループLINEにベースから届いたメッセージ↓
「声の違和感ないのがすごいな。
AIを活用しながら個性を出せれば良いのかも。
あ、あと自分は餅を焦がしたよ」
味わい深すぎる。
会えなくても、こうして音楽で繋がっている。
誰かが結婚したり子どもが生まれたら歌を贈り、グループLINEには餅を焦がした報告が流れて生存確認ができる。
この緩いやり取りが続いていく限り、バンドが解散しているかどうかなんて、些細なことだ。
この勢いのまま、ベースの彼にも曲を贈った話は、また別の機会に。
