セルシン/ホリゾン(ジアゼパム)
筆者は既に10年以上抗うつ薬や抗不安薬、睡眠剤を服用し続けていますので、実験台か臨床試験かというほど様々な種類の薬を試してきましたが、先の記事でも取り上げた依存や耐性の他にも意外な落とし穴があります。身近にもあることですので、少しでもお役に立てれば幸いです。
離脱症状(禁断症状)
処方薬の変更や服薬の中止を急に行うことにより、それまで当たり前に血液中を流れていたはずの有効成分が体内から消失することで、薬(有効成分)を求める体のサインとして表れる状態を指します。お酒(アルコール)やタバコ(ニコチン)といった依存にも近い現象でもありますが、漢方薬等を除く医薬品はもともと血液中に流れていること自体が不自然な人工的な成分ですので、処方薬の変更や中止にあたっては慎重に減薬をしていき、できるだけ自然な形で薬の有効成分を体内から排出していくことが重要です。筆者はかつてパキシル(パロキセチン塩酸塩水和物)の減薬ではなく断薬による強烈な離脱症状(シャンビリや胃の不快感、思考の低下等)に嫌というほど苦しんだ経験がありますので、急な断薬を行う医師はヤブかモグリと見做して転院したので構わないと思います。
献血・臓器提供の制限がある
たまに献血車が来たりすると、特に血液が不足していて、急を要する血液型の方は献血をお願いされることがあるかと思います。しかし、筆者のように何かしら薬を毎日服用していると、薬にもよりますがほぼ24時間血液中に有効成分が流れています。そのため、治療の一環で服用している薬であるが故に、状況によっては血液の提供を受ける方にも薬の成分が微少であっても行き渡ることになるため、せっかく献血の機会があっても献血できないということになります(筆者も当日の朝抗うつ剤や抗不安薬等を服用したことで献血を丁重にお断りされたことがあります)臓器提供や献体も同様に、医師が不可能と判断すれば提供できないという結果にならざるを得ないこともありますので、その点は理解し受け入れた上で忘れずに記入することが重要です。
また、身近なところでは運転免許証やマイナンバーカード等に臓器提供の意思表示を書く欄がありますが、最終的には医師による判断に委ねられます。意思表示自体ができないということではありませんが(ご本人の希望は尊重されますので、臓器提供を希望される方はその旨ご記入いただいても問題ありません)その可否については専門の医師が決めることですので、意思表示を記入する際に頭の片隅に置いておくことや、服薬中の薬についてご家族との意思の共有も必要になると思います(お薬手帳をお持ちでしたらそれも十分参考資料になります)
もちろん、事前に服用中の薬を正確に(ここが重要です)専門のスタッフにお伝えすることで、献血ができるかどうかについてはその場でわかるようになってはいるのですが、その結果献血できないとわかると、それが却って薬の影響の大きさを痛感させられてしまうことに落胆してしまうことも多々ありますが、やむを得ない事情として受け入れることも重要です。
セルシン/ホリゾン(ジアゼパム)



セルシン/ホリゾン(ジアゼパム)は、多くの抗不安薬同様ベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。即効性があり(服用から約15~20分程度で効果が発現し始め、服用から約1時間で最高血中濃度に達します)半減期も長いため、不安障害やパニック発作時に症状が起きた時に服用する「頓服薬」としても使われ、発作の緩和や予期不安の軽減が見られる場合にも処方されることが多いと思います(筆者は常用として処方されています)そのため現在も幅広い症状において処方されているものと思われます。筆者も長年服用していますが、その即効性には目を見張るものがあります。
基本的な作用機序は他のベンゾジアゼピン系の抗不安薬同様、脳内にある神経伝達物質「GABA」の働きを強めることで、神経の過剰な興奮を抑える作用があります。また、主に抗精神病薬の副作用で生じるアカシジア(パーキンソン病の症状の一つで、足がムズムズする現象を指します)の予防や緩和にも使用されます(精神関連の薬ではありませんが、アキネトン(ビペリデン)も同じ働きをします)他にも筋弛緩作用を有することから、ランドセン/リボトリール(クロナゼパム)と同様ジストニア(不随意運動・異常姿勢等)の治療・抑制にも使われます。また、注射液はワイパックス(ロラゼパム)と同じくカタトニア(緊張病)の治療・抑制に使用されることもあります。
また、抗不安薬としてだけでなく、抗痙攣作用も有するため、抗不安薬のワイパックス(ロラゼパム)や以前記事でも紹介したランドセン/リボトリール(クロナゼパム)のように痙攣の抑制にも使用されます。
更にセルシン/ホリゾン(ジアゼパム)には錠剤の他にも注射液やシロップ、坐薬といった多種多様の形態が存在しており、症状や状況に合わせて選択することになります(ここでは外来で処方される内服薬に限定して紹介します)
効能・効果
内服薬の効能・効果は以下となっています。
神経症における不安・緊張・抑うつ
うつ病における不安・緊張
心身症(自律神経失調症、循環器・消化器疾患、更年期障害腰痛症、頸肩腕症候群)における身体症候並びに不安・緊張・抑うつ
脳脊髄疾患に伴う筋痙攣・疼痛
麻酔前投薬
用法・用量
内服薬の用法・用量は、通常、成人ではジアゼパムとして1回2~5mgを1日2~4回内服する。ただし、外来患者では原則として 1日15mg以内とする。
小児に用いる場合には、3歳以下は1日量1~5mgを、4~12歳は1日量2~10mgを、それぞれ1~3回に分けて内服するものとする。筋痙攣に用いる場合は、通常成人では1回2~10mgを1日3~4回内服する。麻酔前投薬の場合は、通常成人では1回5~10mgを就寝前または手術前に内服する。
なお、年齢、症状、疾患により適宜増減する。
薬物動態
内服においては、先述の通り服用後約15~20分で効果が発現し、血中濃度は約1時間で最高濃度に達し、半減期は約27~28時間に及びます。毎日内服することで、服用から約7日目には一定の濃度に維持されます。
主代謝産物のN-デスメチルジアゼパムは約14日目に一定の濃度に維持されます。
副作用
主な副作用として以下のようなものが報告されています。
眠気、疲労・倦怠感、ふらつき、めまい、口渇、脱力感、運動失調等
特に筋弛緩作用によるふらつきや転倒には十分ご注意ください。
ジェネリックを巡る問題
セルシン/ホリゾンは、セルシンが1969年、ホリゾンが1971年に国の承認を得て別々の製薬会社から同時期に発売されており、有効成分も同じジアゼパムですので薬物動態や作用機序は同じです。特許が切れた現在はジアゼパムとしてジェネリック医薬品を処方されることが多いと思われますが、先発薬に強いこだわりを持たれている患者さんや医師もまだ一定数おりますので、先発薬の処方を希望される方もいらっしゃるのではないでしょうか(一部のジェネリック医薬品にアレルギー物質が含まれている等、何らかの問題があるともないとも断言できないことが主な理由として挙げられます)しかし、特許が切れて安価で製造、処方が可能となったジェネリック医薬品があるにもかかわらず、価格の高い先発薬に固執することは、日本の医療費の高騰にも多大な悪影響を及ぼし、更に高齢化が進むことで医療費の負担は右肩上がりとなるのは容易に推測できます。これは年金同様、後の世代にツケを回すことにもなり、既に高齢者医療の1割負担も収入等に応じて2割であったり3割に増加する等、厚生労働省も医療費の負担軽減の対処に長年に渡って頭を悩ませているのは何となくおわかりいただけるかと思います。ここからは筆者個人の見解ですが、近い将来医療費が現在の水準のままでは破綻しかねない状況にまで陥るようなことがあれば、現役世代の更なる負担を招き、その理不尽な扱いに反発している方々の更なる怒りを買うこともないとは言い切れません。医療制度における優遇措置が(中学生までの子どもは別として)高齢者向けにより多く回された末に現役世代の足枷にもなってしまっては、日本が世界に誇る「国民総保健」という医療制度にも限界が近づくのは時間の問題です。決して他人事と思わず、日本が抱える医療制度の問題も理解した上で、自分たちが受けてきた恩恵のツケを子や孫の世代に押し付けるようなことにならないよう、受診にあたっては一人一人が考え努力する義務と責任を自覚してもらいたいものです。
ではまた。
