小説家の連載 ミッション・ニャンポッシブル 第十二話
第十二話
前回の続き。
CATロンドン本部リーダーの娘、アリスお嬢様が「人間の姿で観光したい!」と言って来日。人間の姿でも戦えるよう訓練した令達エージェントは、意外とフレンドリーだったアリスと共に、人間の姿で楽しく日帰り旅行する事になったのだが?
東京、原宿。
平日でも人通りの多い大都会に、奇抜な男女五人が、クレープ片手に談笑しながら歩いている。
黒髪ロングの美女は、美脚な百五十七センチの身長、フェミニンな白いトップスと、脚が綺麗に見えるネイビーのミニスカ、そして紅い五センチのハイヒール。この美女に化けているのは令である。ナチュラルメイクがよく似合う、まるでPerfumeのかしゆかのようないでたち。
令の隣に居るのは、アリス。アリスは不思議の国のアリスみたいな金髪美女に化けている。ブルーの瞳が美しい。身長は百六十五センチ、服装は所謂クラシックロリータ。ロリータ服の中でも、昔の時代のお嬢様が実際に着ていそうな感じの、上品なロリータで、今日のコーデはヴィクトリアメイデン風の、グリーンのドレス。袖にはたっぷりのフリル、パニエも着こなし、白タイツもよく似合う。足元はドレスと同じグリーンのパンプス。レトロな感じの帽子は、ドレスと同じ色。ヘアスタイルを三つ編みにして、いかにも映画から飛び出してきたお嬢様。
令とは反対側に、アリスを挟むようにして歩くのが、みたらし。身長百五十五センチの小柄な和風美女に化けたみたらしは、艶やかな黒髪をお団子にまとめ、紅い玉のついた簪をさしている。着ているのはもちろん着物だが、振袖ではなく普段着用の着物。白地に紅い椿の柄。椿が大柄で、白い生地をほぼ覆い隠している。足元は草履に下駄。メイクは薄めで、口紅だけ、真っ赤な口紅をぽんと塗っている。あんまり笑わないところが、気品のある京都女子っぽい。
三人の女子の後ろには、二人の男が連れ立って歩く。だが全然恰好も何もかも似ていない。
無言でクレープにがっついている陸は、身長百七十センチの、細マッチョ。そんなゴリマッチョではないが、鍛え上げられた筋肉が服の上からでも判るマッチョに化けている。日焼けした肌に、ヘアスタイルは茶髪の短髪で、若干いかつい感じ。青いシャツのボタンを開けて、白いインナーを見せている。ボトムスはジーンズ、足元はスニーカー。全体的な雰囲気でいうと、マッチョな中にも爽やかさがある、佐川男子。
その隣に居るトムは、まー陸とは正反対。身長百六十センチしかなく、色白で小柄。ヘアスタイルは茶髪にパーマをかけて、ふわっと可愛いスタイルに。だぼっとしたグレーのトップスは長めの袖で、萌え袖。SNSで話題になった、ステゴサウルスのポシェット(何にも入らないぐらい小さいけど)、白いズボン、目元はアイシャドウでキラキラにさせて、全体的に可愛い系男子。可愛さを全面的に押し出している男性アイドルのイメージである。
各々身長は全体的なイメージを元に自動で決まっただけで、元から(猫の姿の時から)こういうサイズでは無い。ちなみに、年齢は実年齢が反映されるので、令達はだいたい三十代前半ぐらいの姿である。また、もし万が一何かあってはいけないので、全員耳に超小型イヤホンをつけており、もし何かあってもすずがハッキングで援護できる状態にしてある。
それに加えて、これもアルファが作った緊急用のサプリメントを渡されている。これも試作品の段階である。どんなサプリかは、使う際にすずから説明があるとの事。
全体的に、キャラがバラバラなまま行動している。通りすがりの人間達は異様な集団だと思ってじろじろ見ているが、猫達は全く気にしていない。人にどう思われようと気にしていない猫らしい、態度である。
「このクレープ、味がまあまあね・・・それとも猫だからそう感じるだけなのかしらね?」
原宿クオリティのクレープにぼやくアリス。
「人間と同じ味覚、さいこーう!」
人間としていろいろ楽しめる事を楽しんでいる令は、アリスのぼやきを聞き流している。
「令ちゃん、お嬢の話ちゃんと聞いてあげへんの?」
呆れるみたらし。
女子三人がわいわい話している後ろで、男子二人も会話。
「このクレープ超美味しいー❤❤❤❤❤ってか、このクレープと同じぐらい僕も超かわいいよね?」
可愛い系男子に化けているトムは、自分とスイーツが同じぐらい可愛いと言い出す始末。
細マッチョイケメンになった陸は、顔をしかめながら、クレープをかじって、げっという表情に。
「お前、それは流石にナルシスト過ぎるだろ。自分の事お菓子ぐらい可愛いって。・・・・・このクレープ、甘すぎるだろ。俺は好きじゃないな。もう食べたくない」
「陸、このクレープが美味しくないって、一体どういう味覚してんの?せっかく人間の姿になれてるんだから、もっと楽しもうよ!」
「そうは言ってもなあ。俺はもっと違うものを食べたいんだよ!」
「陸が食べたいものって何だよ?」
「俺?俺はな・・・・ぎっとぎとの次郎系ラーメンかな!」
ザ・男!みたいな食べ物を食べたいと、目をきらきらさせながら答える陸に、今度はトムがげえっという表情をした。
「何それー!僕、絶対にそんなものは食べたくないかなー。僕はもっと原宿に居たいな!もっと美味しいものをいろいろ食べて、可愛いスイーツとか」
「俺から言わせれば、美味しいスイーツの方がごめんだぜ」
「何それ!ぎとぎとラーメンなんて最悪!」
「何だと!」
「何だよ!」
系統の違うイケメン二人が居るので、道行く女子達は令と陸を見てきゃーきゃー騒ぐ。男子二人がわーわー言い争いをしていると、冷静なみたらしが後ろを振り返って言った。
「あんたら、そろそろ東京出るで。お嬢が京都に行きたいって言ってるんや。京都、うちのい地元!」
「そうよ、せっかく日本に来たら京都に行かなきゃだわ!」
自分の地元を案内できる事に鼻高々なみたらしと、嬉しそうなアリス。
「令、京都の抹茶スイーツいっぱい食べるー❤」
もはや食べる事しか考えていない令。
こうして、一行はプライベートジェットに乗って、京都へ。関西国際空港に飛行機を止めた後、アリスの用意した高級外車で京都まで移動。
京都での一行も、やりたい放題である。
金閣寺の黄金に騒ぎ、京都タワーに登って高い所が好きな猫達は大喜び。抹茶スイーツを食い荒らし、茶団子をめぐって令とトムが喧嘩。みたらしが地元を案内しようとして、猫しか通れないようなところを人間の姿で通ろうとして無理、となる。
嵐山に行き、渡月橋の上で記念写真。サルに餌をやるのに、何故か陸がサルに威嚇しようとし、それを全員で止めるのが大変。
休憩の度に、抹茶、抹茶、抹茶。お抹茶、抹茶パフェ、抹茶クッキー、抹茶ケーキ、抹茶キャンディ、とにかくとにかく抹茶抹茶抹茶、抹茶パラダイス。
京都で好き放題やり、その後またプライベートジェットに乗って、今度は令の地元、広島県へ。
辺鄙なところにある広島空港に飛行機を止めた後、高級車で広島市内へ。広島市は令のママの地元だ。
広島パルコや本通り商店街、広島市の中でも中心部、若者達が集う場所。人間の姿になった猫達は、集合場所を決めた後、これまた好き放題タイムへGO!
「令、もっと美味しいものを食べたい!」
食いしん坊な令は、かしゆかみたいな見た目で美味しいものばっかり貪り食いたいという欲望を叶えるため、次々カフェに入っては、アリスから渡されたお金を浪費。
トムは可愛い洋服のお店に次々入り、猫に戻るから使わないのに、洋服を見まくり。
「僕みたいな可愛い系男子にぴったりのお洋服ばっかり❤」
陸は本通りから離れ、ちょっと遠いが、広島城へ。
「せっかく人間の姿になってるんだから、歴史を学ぶぜ!」
着物姿のみたらしは、その姿によく似合う縮景園へ一人向かった。
「今のうちが一番似合うてる場所やな」
妖艶な和服と、美しい庭園のコントラストはぴったりだ。
アリスはというと、リーガロイヤルホテルで優雅にアフタヌーンティー。
「やっぱり私に似合うのはこういう場所よね」
とにっこり優雅に微笑む。
広島市内で楽しんだ後は、全員集合し、広島市内から船に乗って宮島へ。
廿日市市に属する宮島は、世界遺産にもなっている厳島神社で有名である。平清盛が建立し、およそ千年前から姿を変えていない朱色の神社は、世界中から観光客を呼び寄せている。
神社以外にも、宮島水族館や弥山等の観光スポットが多数ある。
飼い主のお嬢様が日本に行った時に宮島へ行った事があると聞き、どうしてもアリスはここへ来たかったのである。
「これで行きたいところに行けたわ!全部とはいかなかったけど。それでも、一日でこれだけ回れたんだから、最高よね」
フェリーを降りて、アリスがそう言う。
「猫は水が怖いものだけど、あの海はキレイだった」
令がそう言い、全員がうんうんと言い、しみじみと同意した。
「それじゃ、ここでも楽しみましょう!」
「おー!」
アリスの掛け声に全員合わせて答えた。
宮島では別行動はせず、集団で行動した。もうすっかり、午後三時ぐらいになっていたので、まずは神社参拝。次は宮島水族館に行き、楽しむ。皆水族館の魚達を見て美味しそうと思いつつ、美しい生き物の展示を見て感動。メインの大通り、表参道でいろいろ食べ歩きをしていると、女性の悲鳴が上がった。
「きゃー!」
悲鳴を聞いて、すぐに猫達は反応した。アリスは四人を見回して、
「本来は私を護衛する任務だったけど、困っている人がいるなら助けるべきよ。私も一緒に行くわ」
「ラジャー!」
令が敬礼するポーズを取り、五人は声のした方へ向かった。
表参道から海沿いに出ると、海沿いの街道で、お腹の大きな女性が悲鳴を上げていた。女性の手首をつかんでいるのは、大学生っぽいチャラチャラした若者。ニヤニヤしながら女性に絡んでいる。大学生五人組は、妊婦さんを取り囲むようにして絡んでおり、飼い主が妊娠している令は頭に血が上った。
「その女性から離れなさい!」
令は怒って彼らの方に突進していった。突然現れた美女に男達はびっくりして、女性の手首を離した。その隙に妊婦さんをみたらしが保護し、彼女の背中をさすって慰める。
「お姉さん、一体何があったんか話してくれへん?」
みたらしの恰好と方言に妊婦さんはちょっと驚きつつも、震えながら何があったか話してくれた。
「あの人達、酔っ払っているみたい。私の夫がトイレに行っている間に絡んできて・・・その、私の事タイプだとかってナンパしてきて」
なるほど彼らは酔っぱらっているらしい。宮島ビールでも飲んだのだろう、酒の匂いがぷんぷんする。
「この人は妊婦さんよ!旦那さん以外に興味がある訳無いでしょ!」
声を上げる令に、妊婦さんに絡んでいた男がにやにやしながら近づく。他の男達も後ろでにやにや。
「あ~?何だ、お姉さん、あの女の知り合いか?こっちもな、腹ぼて女には用は無えんだよ!良く見て無かったからな、気づかなかったんだよ!だいたい、妊婦何て中に出しただけの癖に、偉そうに!あんな腹ぼて女より、お姉さんみたいな綺麗な女に相手してもらいてえな~!お姉さん、俺の居る宿で一発どう?!」
男が令の肩に触れたので、令は手刀ですぱーんと男の手を振り払った。男は痛さのあまり声を上げて、令を睨む。
「いってぇ~!何しやがるこのアマ!」
陸が令の後ろに立ち、彼女の肩を持つようにして、守るように胸を張る。
「おい、てめえ、彼女に指一本でも触れたら、ただじゃ済まねえぞ」
「あ~ん?!お前、この女の彼氏か?!」
陸に噛みつく男。
「彼女は俺の姉ちゃんだよ。俺の姉ちゃんに触ったらただじゃおかねえ」
「お前シスコンかよ!それになんだ、お前の後ろに居る女ども、そろいもそろって、コスプレ集団かよ!」
男は陸を馬鹿にし、みたらしとアリスの服装まで馬鹿にする。アリスが顔を真っ赤にして怒り、
「な!何て失礼なのあなた!恥を知りなさい!」
と男に詰め寄った。
「何だてめえ?俺を殴れるのか?ロリータちゃん」
にやにやする男に向かって、アリスは小さい鞄から、取っ手付きの折り畳み傘を取り出すと、男の足に傘の取っ手をひっかけた。男は転んで顔面を打ち、
「ぎゃあああああああああああ!」
と叫んだので、他の人がこちらをちらちら見始めた。
「おい、何しやがる!」
他の男がアリスに詰め寄ったので、アリスは言い返した。
「殴れるかって言ったからし返しただけよ!何か文句でも?!」
そこで男達が怒り狂って殴りかかってきたので、令達も戦闘を開始した。
令は、顔面を打った男に、
「妊婦さんを馬鹿にするなんて!令のママも妊娠してるから、許せない!食らえ!」
と叫びながら、ハイヒールで思いっきり股間をキック。男が悶絶する。
「ぎゃああああああああああああああ!」
陸はグーで殴り掛かってきた男の腕をつかんで勢いよく背負い投げ!
「俺の姉ちゃんに暴言吐いた罰だ!」
「ぎいやああああああああああ!」
悲鳴を上げてぶっとぶ男。
トムは殴ろうとする男に向かって、脚をひっかけて転ばしたりの技。
「さあ、転べ転べ!」
「ぎゃー!」
みたらしはもっと容赦が無い。着物姿なのに、空手のような技で男に向かっていく。
「うちを甘くみる奴は、痛い目に遭ったらええんや!」
「ぎやああああああああああああ!」
こんだけ攻撃してんのに、全く着物が乱れていないみたらし、凄すぎる。
人間の姿になってもスーパーパワーを発揮するスーパーエージェント達。
「ふっ、楽勝にゃ」
クールぶりつつも、人間の姿で戦う練習しといて良かった、と猫達は思った。
するとその時、一人の男性が騒ぎを聞きつけたのか慌ててやってきた。結構がたいのいい男性である。
「なっ、大丈夫か?!」
男性は妊婦さんに駆け寄った。妊婦さんは答える。
「大丈夫よ、こちらの方達が助けてくれたの。皆さん、この人は私の旦那です」
「お腹を下してトイレに籠っていたんですが、その間に一体何があったんですか?」
ガタイのいい男性に、令達が今起きた事を全部説明すると、男性は険しい顔になり、地面にしゃがんでうーうー唸っている大学生達を睨んだ。
「実は私は警察官でして・・・今日は妻と厳島神社に安産祈願に来たんですが、まさかこんな事になるとは。急遽、同僚を呼びます!」
何と妊婦さんの夫は広島県警だった。彼が急いで本土に居る同僚を呼んだので、数十分後には何台ものパトカーがサイレンを鳴らしながらフェリーに乗って到着し、島中は大騒ぎになって大勢の観光客が野次馬と化する事になってしまった。
最初のパトカーが到着して、「くそっ」「俺らは悪くねえよ!」等と悪態をつく男達が警察官に拘束されている間、令達は顔を見合わせて相談した。
「まずい事になったよ。私達、事情聴取されても身分証とか何も持ってないもん。やばいよ!それにこのままだと警察に港を封鎖されちゃうかも。帰れなくなっちゃう!」
「そもそも猫だから、戸籍自体無い訳だし」
令と陸の発言に、他の三人も同意する。
「私なんて見た目外国人だから絶対パスポートあるかとか聞かれるわ」
とアリス。
「こういう時こそすずちゃんや」
みたらしの発言で、イヤホンを通してすずに助けを求める。
「かくかくしかじかですずちゃんどうしよう!」
ここでやっとハッキング担当のすずの出番である。
「任せて。緊急用サプリをもらったのを覚えてる?水無しで飲めるから、今すぐ飲んで。これを飲むと、一時的に猫以外の動物に変身できるの。とりあえず、島から逃げないといけないから、何でもいいから飛べる鳥になって。飲む前に鳥の名前を言うんだよ。効き目は二十分しかないから、急いで!」
「判った!」
という訳で、物陰に避難した五人は、サプリを飲んだ。陸の提案で、不審がられないカラスに全員化けた。
カラスに化けた五人は、急いで飛び立ち海を渡る。飛び立つ瞬間、同僚警官とさっきまで話していた妊婦さんの男性が戻ってきて「あれ、あの人達は?!」と言っているのが見えた。本当にぎりぎりだった。
翼を動かし続けていないと海に落ちるので、五人は必死で飛び続けた。どうにか本土にたどり着いたあたりで効き目が切れ、五人はひとまず人間の姿に戻った。渡った先は宮島へのフェリー乗り場がある宮島口である。
「はあ、逃げてきたはいいけど、これからどうしよう・・・」
五人は途方に暮れた。すると、高級車が目の前で止まり、車から降りて来たのはスーツを着たでっぷり太った男。何だか大阪市長に似ているな・・・と五人が思っていると、男が笑って令達の方へ歩いてきて、こう言った。
「令ちゃん!ほんま、お疲れさんやったな」
「え、ごん太?!」
そう、それはごん太だった。すずから連絡を受けて来たにはずいぶん早すぎる。
「実は、どっちみち人間に化けてこようと思ってたんや。わいもアルファの作ったのでビームを浴びてな。元々は、令ちゃん達に合流出来たら一緒に観光さしてもろおうと思って。けど、道中に連絡を受けてな、急いで来たんや。観光どころやなくなったな。どうや、わい、飼い主そっくりやろ」
ごん太の言葉に、みたらしが小声で、
「ほんま、肥えようもそっくりやで」
と言った。
ごん太は皆の顔を見回して安心させるように言った。
「アリスちゃんは、わいが、わいの家まで連れて行って、家に着く前に猫の姿に戻して、それから猫用ジェットでイギリスに帰ってもらう。皆には、車の中で、猫に戻るためのサプリを飲んでもらって。アルファが急遽用意してくれたんや。人間の姿になってまだ二十四時間経ってへんから、それを飲んで。皆がわいの家に置いてきた猫用ジェットも、全部持ってきたから、それで家へ帰れるで。車の中でサプリを飲んだら、もうあとは解散や」
するとトムが不安そうに質問。
「で、でもアルファ、この車の運転手は?運転手は人間なんだから、中で猫に戻ったらばれるよ」
その時、運転席から若い男性が降りてきた。
「やあ、こんにちは」
皆ぎょっとするが、ごん太が説明する。
「大丈夫や。彼もCATのメンバーや。人間に化けて、ここまで運転してきてもろうたんや」
「僕の飼い主は長距離トラックの運転手で、よく助手席に僕を乗せて仕事に行きます。運転は日頃から見てきたから大丈夫」
「なるほど」
トムは興味深そうに返事した。
「さ、もう時間が無い。皆車に乗るんや」
こうして、令達は車に乗り、中でサプリを飲んで、元の人間の姿に戻った。猫用ジェットに乗り、サイレントモードにして姿が見えないようにし、それぞれの家へと飛び去った。
令達が去った後、人間の姿のまま車で三人は大阪へ直行し、ごん太の家まで来た時に三人共サプリを飲んで猫の姿に戻った。ごん太がアルファから借りた、「物変身ライト」を車に当てると、車は子供用のミニカーの姿に戻った。
「アルファはいくつ試作品を作ってるんやろなあ」
令が帰宅してから数日後のこと。令は一人で留守番である。ほどなくして、産婦人科に検診に行った佐々木夫婦が帰宅した。
パパとママが帰ってきたのが嬉しくて、お腹を見せてごろにゃんする令に、ママはにこにこして、エコー写真を見せる。
「ほら、令ちゃん。これが赤ちゃんだよ。令ちゃん、お姉ちゃんになるね」
「にゃ?」
白黒のエコー写真は、どう見ればいいのか判らないが、令はとりあえずママの手をなめた。
パパが令を抱っこする。
「令ちゃんは我が家の長女、第一子だな。赤ちゃんが第二子だよ」
「にゃー」
パパに抱っこされて嬉しい令。
でも、アリスちゃん達と一緒に観光できて、すごく楽しかったな。アリスちゃんともお友達になれたし。
もしまた人間の姿になる事があったら・・・パパとママと、生まれてくる赤ちゃんと旅行したい。でも、そしたらCATの秘密がバレるから駄目にゃ。
令はそんな事を考えながら、飼い主一号と二号に媚を売るのだった。
次回に続く
