24【ジジとババと、みなさまと私】ジジの「おめでとうございます」の日
父をイジメる娘の話、
はじまり、はじまり。
父がショートステイに落ち着いて3、4日たった頃。
まぁ様子でものぞいてこようかと、電話をしてから出かけた。
面会室に行くのかと思ったら、ちょうど昼ご飯が終わったところで、
「もうお部屋に戻られましたよ」
と職員さんに言われ、父の個室へ案内された。
トントン。
「おーい」と、声をかけながら部屋に入ると、
父は相変わらず、ベッドに寝転んでテレビを見ていた。
「おいおい、昼間からベッドに寝ちゃいけないんじゃなかったっけ?」
私がそう言うと、父はニヤニヤしながら体を起こす。
部屋は白くて、ベッドの前にタンス。
その上にテレビ。
タンスの横に歩行器。
ベッドから手が届く距離に、いろいろなものがきちんと置いてある。
なるほどね。
この距離なら、自分で出し入れできる。
おやつがあると聞いていたので、ひとまずいつもの甘い缶コーヒーだけ買ってきていた。
食後のコーヒーだ。
父に渡すと、ぐいぐい飲んで、あっという間に
飲み干した。
少し落ち着いたところで、私は聞いた。
「ねぇねぇ。
今日って何の日か知ってる?」
父は少し考えてから答えた。
「今日は……
12月の◯日だなぁ。」
日にちの感覚は、まだあるらしい。
私は言った。
「今日ね、私の誕生日。」
父は一瞬、ポカンとした。
それから「あ……」という顔になって、手で目を隠し、うなだれた。
泣いているわけじゃない。
ただ、しまったという顔だった。
やっぱりね。
まぁ、うちの父が娘の誕生日なんて覚えてるわけないか。
そもそも、私の誕生日っていつか知ってた?
「大丈夫、大丈夫。
そうだと思ってたわー。
うちの家族にはちゃんとお祝いされてるから。」
そう言いながら、自分でもわかっていた。
これはちょっと意地悪だ。
心の奥から、むくむくむくっと黒いやつが出てくる。
まだ全部は許していない。
ちょっと困らせたい。
ちょっと傷つけたい。
だから、わざと言っている。
でも、あまりにも困った顔をするので、少しかわいそうになってその話はさらっと流した。
すると、父が「……おっ」と言った。
手を顔から外し、きちんと座り直す。
少し照れた顔なのに、変に改まって、
めちゃくちゃ丁寧に頭を下げて言った。
「…おめでとうございます。」
……めっちゃ面白い。
考えてみたら、父からこんなふうにきちんと
「おめでとう」と言われたのは、初めてだった気がする。
ちゃんとプレゼントをもらった気がした。
私もきちんと頭を下げた。
「…ありがとうございます。」
あれっ、私、ちょっと泣きそう。
黒い私が、皮一枚ふわっと消えて飛んでった。
顔を上げると、父は少し照れた顔で、そのまま黙っていた。
まぁ、今日は、許してやろう。
……私、ここに、生きているしね。
誕生日、ありがとう。
今日も、ジジとババと、みなさまと私の一日。
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