見出し画像

Netflixの本当の価値は、オリジナルドラマではなくドキュメンタリーにある

こんにちは、neonです。

noteで「#Netflix感想文」という企画が始まりました。

アニメやドラマ、映画、ドキュメンタリーなど、Netflixで配信されている作品なら何でもよく、好きな作品について感想を書いて投稿する企画です。

ランキングを眺めていると、『ガス人間』や『地面師たち』など、Netflixのオリジナルドラマが強いようです。

映画をおすすめする人もいれば、韓国ドラマについて書いている人もいます。

ただ、私はNetflixの価値は、そこにあるとはあまり思っていません。

私は普段、アニメやドラマを見るためにU-NEXTを契約しています。

アニメはNetflixよりも作品数が多いですし、日本のテレビ局が制作したドラマも見られます。

海外ドラマなら、『NCIS』のように何シーズンあるのか分からない作品もあります。最近なら『FBI』シリーズもあります。

HBOの作品なら、少し古いですが『バンド・オブ・ブラザース』も見られます。

アニメやドラマを継続的に見るためのサービスとして考えると、私にとってはU-NEXTのほうが使いやすい。

Netflixは、見たいオリジナル作品がたまったら契約して、ひと通り見たら解約する。

しばらくして、また見たい作品が増えたら再契約する。

私にとっては、そういうプラットフォームです。

ここまで書くと、Netflixをディスっているように見えるかもしれません。

しかし、Netflixには、ほかの動画配信サービスではなかなか代替できない強みがあります。

それが、Netflixオリジナルのドキュメンタリーです。


Netflixのドキュメンタリーは異様に強い

Netflixには、アメリカを題材にしたドキュメンタリーが大量にあります。

犯罪、司法制度、宗教、企業、政治、スポーツ、インターネット文化。

題材の幅が広いだけではありません。

一つの事件を数話かけて追い、当事者、家族、捜査関係者、記者、元構成員など、さまざまな立場の証言を積み重ねていきます。

私は昔、NHKの『BS世界のドキュメンタリー』をよく見ていました。

Netflixに加入したとき、あの水準のドキュメンタリーが、何話にもわたるシリーズとして大量に並んでいることに驚きました。

ドラマを一つ見るのとは違います。

自分が知らなかった国の歴史や制度や事件を、一つの巨大な物語として体験できます。

これこそが、私が考えるNetflixの本当の強さです。

まず見てほしい『TIME/タイム:カリーフ・ブラウダーのストーリー』

最初におすすめしたいのは、『TIME/タイム:カリーフ・ブラウダーのストーリー』です。

ニューヨークに住む黒人少年、カリーフ・ブラウダーが、窃盗の疑いで逮捕されます。

しかし、裁判はなかなか始まりません。

有罪判決を受けたわけでもない少年が、裁判を待つという理由だけで、約3年間も拘留され続けます。

そのうち長期間を独房で過ごし、暴力を受け、青春を奪われていく。

この作品が恐ろしいのは、分かりやすい悪人が一人いるわけではないことです。

警察、検察、裁判所、拘置施設。

それぞれの制度が少しずつ正常に動かなかった結果、一人の少年の人生が壊れていきます。

見ていて楽しい作品ではありません。

むしろ、かなりつらいです。

それでも、Netflixオリジナルのドキュメンタリーを一本だけ挙げろと言われたら、私はまずこの作品を挙げます。

『憲法修正第13条』もあわせて見てほしい

『TIME』とあわせて見てほしいのが、アヴァ・デュヴァーネイ監督の『憲法修正第13条』です。

アメリカ合衆国憲法修正第13条によって、奴隷制は原則として廃止されました。

しかし、「犯罪への処罰」という例外が残されました。

この作品は、その例外が黒人の大量投獄とどのようにつながっていったのかを、アメリカの歴史、政治、メディア表現を通して追っていきます。

『TIME』が一人の少年に起きた出来事を描く作品なら、『憲法修正第13条』は、その少年を追い詰めた巨大な制度の歴史を描く作品です。

二つを見ると、カリーフ・ブラウダーの事件が単なる不運や特殊な冤罪事件ではなく、長い歴史の先に起きたものだと分かります。

私が一番おすすめしたい『ワイルド・ワイルド・カントリー』

そして、私が一番おすすめしたいNetflixのドキュメンタリーは、『ワイルド・ワイルド・カントリー』です。

日本では、それほど知られていない作品かもしれません。

インドの宗教指導者バグワン・シュリ・ラジニーシと、その信奉者たちがアメリカへ渡り、オレゴン州の荒野に巨大な共同体を建設する話です。

簡単に説明すると、オウム真理教のような組織が、アメリカでさらに大規模な理想郷をつくろうとした話です。

もちろん、教義も、成立した背景も、起きた事件もオウムとは異なります。

ただ、組織が急激に拡大していく熱狂、外部社会との対立、指導者への絶対的な信頼、そして内部崩壊へ向かっていく過程には、似た恐ろしさがあります。

最初は、荒野に理想の共同体をつくろうとしていただけでした。

土地を買い、建物をつくり、農地を整備し、道路を引き、人が集まってくる。

やがて、そこには町ができます。

選挙に介入し、武装した警備組織を持ち、周囲の住民や行政と激しく衝突する。

一つの宗教団体が、次第に一つの国家のようになっていきます。

『ワイルド・ワイルド・カントリー』のすごさは、それを単純な「恐ろしいカルト事件」として描かないことです。

当時の映像と、元信者や地元住民などの証言を重ねることで、共同体の内部にあった熱狂まで映し出します。

なぜ、これほど多くの人が集まったのか。

なぜ、自分たちは新しい社会をつくれると信じたのか。

なぜ、外部の人間を敵だと考えるようになったのか。

そして、すべてが終わったあと、彼らには何が残ったのか。

この作品を見ていると、まるで一つの国が誕生し、拡大し、戦争を始め、最後にはバラバラになっていく過程を見ているような気分になります。

革命の記録に近い。

しかも、成功した革命ではありません。

理想郷をつくろうとした人々が現実と衝突し、革命に失敗したあとに残る、奇妙な無気力感までパッケージされています。

組織が瓦解したあとの元信者たちは、必ずしも自分たちの過去を全面的に否定していません。

あの共同体には確かに問題があった。

多くの事件も起きた。

それでも、あの時代は自分の人生で最も輝いていた。

そう語る人もいます。

その感情が、私は怖くもあり、同時に少しだけ分かるような気もします。

Netflixで何を見るか迷ったら、ドキュメンタリーを見てほしい

Netflixといえば、オリジナルドラマや話題の映画を思い浮かべる人が多いでしょう。

もちろん、それらもNetflixの魅力です。

ただ、話題作をひと通り見終わり、見るものがなくなったと感じたときこそ、ドキュメンタリーの一覧を開いてほしいと思います。

そこには、自分がまったく知らなかった事件や人物や社会があります。

Netflixは、ドラマや映画を消費するだけのサービスではありません。

世界のどこかで実際に起きた出来事を、何時間もかけて目撃するための巨大なドキュメンタリー・アーカイブでもあります。

私はNetflixを長期間契約し続けようとは、あまり思いません。

それでも、数か月おきに戻ってきます。

見たいドラマがあるからではありません。

また、あの異様に濃いドキュメンタリー群を見たくなるからです。

そしてNetflixで何か一本見るなら、『ワイルド・ワイルド・カントリー』を。

できれば時間のある日に、第1話を再生してみてください。

お一人で。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集