子どもが「パパがいい」「ママがいい」と言うとき
「ママじゃなきゃ、いや!」
「今日は、パパとお風呂に入る!」
——子どもは、ときどき、はっきりと親を「指名」します。
指名された側は、嬉しい反面、少し大変。指名されなかった側は、平気なふりをしつつ、内心ちょっと傷ついていたりします。「せっかくやろうとしたのに」「自分は必要とされていないのかな」——。
この「パパがいい」「ママがいい」問題は、子育て中の多くの家庭で起きる、あるあるです。今回は、この子どもの指名との向き合い方を、指名される側・されない側、両方の目線で考えてみます。
なぜ子どもは、親を「指名」するのか
まず、なぜ子どもがこうした指名をするのか。理由を知ると、受け止め方が変わります。
① 発達の、自然なプロセス
子どもが特定の親を求めるのは、発達の自然な一部です。
とくに小さいうちは、いちばん長く一緒にいる人、お世話をしてくれることが多い人に、愛着が強く向かいます。これは、子どもの心が健全に育っている証拠でもあります。
② そのときの「気分」や「役割」で選んでいる
子どもの指名は、そのときの気分や、場面ごとの役割で変わります。
「甘えたいときはママ」「遊びたいときはパパ」——子どもなりに、親を使い分けていることも多い。指名は「どちらが好きか」の順位ではなく、「今、この場面では、この人」という選択であることがほとんどです。
③ 「イヤ」の対象は、深い意味がないことも
イヤイヤ期などでは、「パパいや!」に深い意味がないことも多々あります。
そのときたまたま目に入った選択肢に「イヤ」と言っているだけで、本気の拒絶ではない。翌日にはケロッと「パパがいい」に変わることも、よくあります。
指名され「なかった」側の、心のケア
まず、指名されなかった側の気持ちから考えます。ここが、意外と大切です。
傷ついていい。でも、真に受けすぎない
「ママがいい」と言われて、パパが傷つく。「パパじゃなきゃいや」と言われて、ママが寂しくなる——この気持ちは、自然なものです。傷ついていいのです。
ただ、子どもの指名を、真に受けすぎないことも大切です。前述の通り、指名は順位ではなく、気分や場面の選択。「自分は愛されていない」という結論に飛びつく必要は、まったくありません。
「拒否された」ではなく「今はそういう時期」
子どもの指名には、波があります。ママ一辺倒の時期、パパブームの時期——時期によって、行ったり来たりするのが普通です。
「今は、そういう時期なんだな」と、少し引いて見られると、心が楽になります。
引き続き、関わり続けることが大事
指名されないからといって、関わりをやめてしまうと、本当に距離ができてしまいます。
「どうせママがいいんでしょ」と引いてしまわず、拒否されても、淡々と、穏やかに関わり続ける。子どもの気分の波が変わったとき、ちゃんとそこにいる——これが、長い目で見て、いちばん大切です。
指名され「た」側の、負担も見る
一方で、指名される側にも、見過ごせない負担があります。
「指名される側」は、休めない
「ママじゃなきゃダメ」が続くと、ママは交代できず、休めません。寝かしつけも、ぐずり対応も、全部自分。指名は嬉しくても、体力と心は削られていきます。
夫婦で「指名の負担」を共有する
だからこそ、指名の偏りは、夫婦の問題として共有してほしいのです。
指名されない側は、「じゃあ任せた」と引くのではなく、指名される側の負担を減らす動きを。家事を多めに引き受ける、子どもの気分が向いたときにすかさず関わる、指名される側を休ませる時間を作る——できることは、たくさんあります。
「パパがいい/ママがいい」への、上手な対応
具体的な場面での対応のコツも、整理しておきます。
① 指名を、無理にひっくり返さない
「今日はパパの番でしょ!」と無理強いすると、子どもはかえって頑なになります。可能な範囲では、子どもの指名を尊重しつつ、少しずつ慣らしていくほうが、結局スムーズです。
② 「じゃあ、途中まで一緒にやろう」と橋渡しする
いきなり交代ではなく、段階的な橋渡しが有効です。
「最初はママも一緒にいるね。途中からパパとやってみようか」——指名されない側が加わる場面を、少しずつ作っていく。慣れれば、子どもの選択肢が広がります。
③ 指名されない側の「得意分野」を作る
「この遊びは、パパが最高に面白い」「これはママにしかできない」——その人ならではの関わりがあると、子どもは自然と両方を求めるようになります。
肩車、ダイナミックな遊び、絵本の読み方、おやつ作り——なんでもいい。「この場面なら指名される」という得意分野を育てておくと、指名の偏りが和らぎます。
④ 夫婦で、お互いをフォローする言葉を
子どもの前で、お互いを立てる言葉を使うのも効果的です。
「パパ、すごいんだよ」「ママに聞いたら、きっと喜ぶよ」——親同士がお互いを肯定的に語ると、子どもの中で、両方の親の存在が、温かく育っていきます。
「選ばれる・選ばれない」を超えて
最後に、いちばん大切なことを。
子どもの「パパがいい」「ママがいい」は、その瞬間の選択にすぎません。長い子育ての中では、指名の波は何度も入れ替わります。そして、子どもが本当に感じ取っているのは、「どちらの親も、自分を大切にしてくれている」という、全体の安心感です。
今日指名されなくても、あなたの関わりは、ちゃんと子どもの中に積み重なっています。指名の一言に一喜一憂しすぎず、夫婦で支え合いながら、それぞれのやり方で、関わり続けてください。
「パパがいい」も「ママがいい」も、いつか懐かしくなる、子育ての一場面です。ふたりで笑い合いながら、乗り切っていきましょう。
今日、ひとつだけ
もし最近、子どもの指名で、どちらかが寂しい思いや、大変な思いをしているなら——今日、ひとつだけ。
「最近、指名が偏ってて大変だよね(寂しいよね)。ふたりでうまくやっていこうね」と、夫婦で声をかけ合ってみてください。
指名の偏りは、子どもの問題ではなく、夫婦で分かち合うテーマ。その一言が、指名される側の負担も、されない側の寂しさも、そっと軽くしてくれます。
参考:愛着理論(Bowlby, J.)、乳幼児期の愛着形成に関する発達心理学研究
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