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ある日のツアーガイド②

その日のフードツアーのゲストは、デンマーク、オーストラリア、アメリカから来た3グループ。国籍も性格もバラバラな組み合わせだったが、なかでもデンマークのゲスト3人が、とにかく「自由」な人たちだった。

自由、というのは決して悪い意味ではない。ただ、その自由さが私の予想のはるか斜め上を行っていた、というだけの話だ。

事件その1:充電スポット、料亭にて

最初のお店は、けっこう格式のある料亭だった。暖簾をくぐり、静かな空間に一同が案内された、その矢先。

「ねえ、スマホ充電したいからコンセント貸してもらえる?」

……いや、スタバじゃないんよ。
提携店のスタッフさんの顔が一瞬、明らかに「え?」となる。料亭でコンセントを借りる観光客というのは、おそらくそう多くない。

慌ててフォローに入り、結局は自分のモバイルバッテリーを貸すことで事なきを得た。ツアー終了までスマホのバッテリーがもってくれることを、心の中でひたすら祈っていた。


事件その2:寄り道、そして生存確認の不安

次のお店への移動中、事件は続く。

「あっちの道、ちょっと気になるから行ってみるね。あとで合流するから

いや、合流できるかどうかが一番の問題なんですが……。
食べ歩きツアーで別行動、しかも土地勘のない外国人ゲスト。頭の中で「はぐれたらどうしよう」「連絡手段は」といった不安がぐるぐる回る。なんとか説得を試みるも、意志は固く一歩も譲らない。

すると、オーストラリアとアメリカのゲストたちが「別に私たちは気にしないから、そっちの道に行ってみたら?」と、まさかの後押し。ガイドの気苦労をよそに、ゲスト同士はすっかり寛容モードだった。


事件その3:デザート店での、まさかの離脱

そして最後は、デザート店。ここまでくれば一安心……と思ったのもつかの間。
デンマークのゲストのうちの1人がメニューをじっと見つめたあと、こう言った。

「うーん、好みのものがないから、私たちはここで帰るね」

え、ここで!?ツアー終盤も終盤、デザートを目前にしての離脱である。引き止める間もなく、3人はにこやかに手を振って去っていった。

誤解のないように書いておくと、このデンマークのゲスト達は決して感じの悪い人ではなかった。リクエストに応えるたびに大げさなくらい感謝してくれたし、優しい言葉もたくさんかけてくれた。ただ、驚くほどマイペースで自由だった。それだけの話。

残されたゲストの優しさ。
一方で、残ったオーストラリアとアメリカのゲストは、私に同情してくれたのか(それとも単に会話が弾んだだけか)、そのあとの時間は一段と盛り上がった。

「デザートの量多いから、私の分も食べてよ」

そう言ってくれたアメリカ人ゲストの優しさに(これも同情からなのかな、と思いつつ)甘えて、抹茶白玉あんみつを分けてもらった。

抹茶白玉あんみつ、うまーー

いろいろあった一日の最後に、疲れた心にじんわり染みるその甘さ。

人の行動の意図や『普通』の感覚は、文化や育った環境でやっぱり違う——それがカルチャーの違いというやつなんだろう。

具のバラエティがやたら多い抹茶白玉あんみつを味わいながら、そんなことを考えていた。

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