麗子パニック! 「富江」と岸田劉生の”デロリ”ホラー【怖い絵】
美術の教科書をパラパラめくった人全員の脳裏に焼きついているであろう、「麗子微笑」。近代洋画家の岸田劉生が、実の娘である岸田麗子を描きまくった麗子像には、伊藤潤二の人気ホラー漫画、「富江」的な怖さがある!!
横須賀美術館で8月31日まで開催されていた「住友洋画コレクション ―フランスと日本近代絵画名品選」に行ってきた!内容としては、住友家が収集した泉屋博古館東京の所蔵品から西洋画・日本近代洋画の名品が集まったもので、そこで岸田劉生の作品が5点、そして麗子像も出ていました。
↑こちらが泉屋博古美術館東京が所蔵する「麗子像」。知らなかったのでびっくり!なんと「二人麗子」という恐ろしい絵。左側の正座をする我々に馴染み深い麗子の髪を、もう一人の麗子が整えている。同一人物が同空間に複数存在している、この増殖感。なすにきびは「富江」を思い出した。
娘が二人いる時点でまあ怖いのですが、左側の麗子のおかしな点に気づくでしょうか。
!!!!顔がデカすぎる!!!!
顔が特に横に大きいし、それ比べ腕と手が小さすぎる。確かに幼い子供というのは成人に比べて顔のバランスが大きいことはあるけれど、それにしてもでかい、だからグロい。本来ならば右の麗子が忠実な縮尺なので、それで言うと右の麗子が本物、オリジンに近い個体なのかもしれない。
そもそもこんな怖い設定じゃなくても、岸田劉生の「麗子像」シリーズは鑑賞者に不気味でホラーな雰囲気を感じさせる。そのホラーの正体は色々なところで解説されているので、参考のものを下に載せます。↓山田五郎さんのYoutubeはやっぱりわかりやすい。
寒山拾得のような、グロくて不気味な姿にこそ東洋の美の本質があるとする劉生の「デロリ」論。その研究として描かれる「麗子像」は「忠実な写実」の娘というより、大好きな娘の「理想の写実」。「二人麗子」に戻ってもやはり左が理想の麗子で、右が忠実な麗子ということ。ただ理想の麗子に忠実な麗子が仕えている感じなのが、尚更怖い。
理想の女性像を描き続けた画家の一種の執着も、富江に通じるものがあるなー。ここで調べて出てくる範囲で麗子の怖い個体をいくつか紹介。
◯麗子微笑 怖さ⭐︎⭐︎⭐︎
東京国立博物館
いちばん有名な重要文化財麗子。見た人の記憶に焼け付く時点で富江みたいな魔力があるけれど、見た目の怖さはあまりなくベーシックな麗子と言えるでしょう。絶妙な目が、何かよからぬ遊びを思いついているような不穏を感じさせる。
◯麗子坐像 怖さ⭐︎⭐︎
ポーラ美術館

座った全体像が描かれた麗子。デロリ的というよりも、結構忠実に描かれた麗子の顔、でもその顔に笑顔はなく硬めで張り詰めています。だいたいものを右手に持つ姿が描かれる麗子が、この絵では林檎を放って置いているのも印象的。眠くなっているあどけない子供とも取ったら可愛いけれど、ただ遊びに飽きて不機嫌な麗子だとしたら、、、富江のように男女は些細なことから喧嘩をし、最終的に殺害してしまう。悪夢の始まりを予感させるので少し怖め。
◯童女図(麗子立像)怖さ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
神奈川県立近代美術館
劉生自身が最高傑作という「デロリ麗子」の到達点。口角は上がっているけれど、微笑とは言えない謎の表情にぱっつん前髪。顔の骨格の影も写実がすぎて、仮面のようにも見える。そもそも少女性がほとんどないので怖い。おじさんかもしれない。
◯麗子像(紙)怖さ⭐︎⭐︎⭐︎
東京国立近代美術館
富江的にいうと、今から胴体を再生する麗子。顔だけで見ても、麗子シリーズでなかなか上位の怖さ。眉毛の薄さが怖い。劉生のデロリはうま過ぎる写実に支えられているところもあるけれど、このくらいラフに描いてもホラーはホラー。
◯童女像(麗子花持てる)怖さ⭐︎⭐︎⭐︎
豊田市美術館
和服の写実が凄まじい麗子シリーズに突然の洋服麗子。気品漂う恐ろしさを持つこの麗子は豪邸に住んで、老夫婦に大事に育てられている個体でしょう。いずれその家の人は不幸な運命を辿るけれど。
◯麗子像(正面麗子)怖さ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
天一美術館
急にこちらを向いた麗子。髪の毛もかなり乱れがあり、およそ8歳の姿とは思えない貫禄。人間の内面を追求するというデロリの美というけれど、この麗子の内面とは一体なんなのか。
◯童女舞姿 怖さ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
大原美術館
長女、麗子を描いた肖像画のうちの一つ。
— 大原美術館 (@OharaMuseum) May 1, 2017
岸田劉生《童女舞姿》1924年
麗子が10歳のときのもので、珍しい全身像である。 #麗子祭 pic.twitter.com/DrOkNahJng
舞う全身麗子。しかしこれは舞と言えるのか。眠いのか、虫のいどころが悪いのか、ここまでつまらなそうに舞うことなんてできるのか。顔もおじさんすぎる。扇子を放り投げる1秒前、怖さが際立っている。
◯野童女 怖さ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
神奈川県立近代美術館
ついに完全復活を果たし、男の前に再び現れた麗子。顔と髪の広がりが極まり、寒山拾得が乗り移ったよう。なぜ両手の拳を握りしめているのか、怒りなのか喜びなのか。麗子の怖さは日本人形の良いうな無機質恐怖というより、残酷さの一面も持つ童の無邪気さ、生気がよく現れているところにある。富江もファム・ファタール像にしては、大人らしさはあまりなく、無邪気な災難と言えるところが麗子の恐怖を継承した少女と言えるかもしれない。
◯寒山風麗子像 怖さ★ 閲覧注意!↓
バラバラにしたはずなのに、、、
多分これは劉生がふざけてると思います。
◯二人麗子像 怖さ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
もう一度、この錚々たる麗子ズの中でもやはり異質。この二人の麗子は、もともと一つの麗子が首を切断され、頭部から下の胴体再生したのが左の麗子、胴体から上の頭部が復活したのが右の麗子ということになる。左の麗子が「私の美しい顔は無事ね、、、!」と手鏡を持っているのも、じわじわ怖い。
さらに岸田麗子本人が父について書いた「父 岸田劉生」↑という本を今回読んでみたら、気になる文が。
ここで私は父の肉体のことについて触れなければならない。前に私は父の兄弟に双生児は一人もいなかったと書いた。しかし双生児の可能性はあったのだ。父がそうであった。片方が人並みより大きかった。
・・・
後年、鵠沼に住むようになった一九一九年(大正八年)九月、日赤に入院して手術し片一方を切除した。切除したものは今も日赤に保管されているときくが、その内容は双生児となるべきはずの可能性を持った物体であった。
p29 より抜粋
不完全な結合双生児のようなものなのでしょうか。
しっかりと分かる他の文献は見つけられなかったけれど、もしかしたら劉生の意識の深い部分に双子の存在があったのかも、そこから生まれたのがこの「二人麗子」かもしれません。
↑ちなみに泉屋博古館東京のホームページ、何回か1回にロード中にこの2人の麗子がひょこっと出てきてくれます。怖い。
とにかく劉生は麗子を愛し、麗子も画家としても父としても劉生を尊敬していた。
結果、麗子はこのほかにも水彩油彩色々で、その数50体以上!
まだまだ暑い夏に見たい、麗子と富江でした。
おわり
また新しい
麗子が
やってくるっ‼︎

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