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国立博物館に”kawaii “展示室を作っちゃえばいい:日本のモナリザ

国立博物館の二重価格、収入ノルマの設定など、何かと賛否両論の話題が多い美術ニュースですが、今回はそれらにも少し関連して、「インバウンド需要に対してどの文化財を打ち出せばいいのか!?日本のモナリザとは?」という話。


◯日本の名品といえば?

確かに、外国から来る人はおろか日本人でさえも、日本の美術品といえばこれでしょ!と一つ挙げられる人、さらにそれが今どこの美術館にあって、いつ見ることができるのかということを完全に把握している人など、一握りかもしれない。

そもそも先ほどの記事に描かれているように、浮世絵を含めた日本美術、屏風、絵巻まで全て保存が難しく、年中置いておくということは不可能。企画展により全国を巡回する名品もよくあるので、西欧の人は常設展にはいくが、日本人は企画展にはよく足を運び、常設展にはあまりいかないという構造になっている。

◯日本のモナリザなんていらない!

そもそも、今回の話題は「日本の名品がわからない/どこにあるかわからない」という話と「日本と西欧の美術館の差違い」という、大きく二つの争点がある。とりあえず後者を整理すると

・日本美術は湿度、重力、光、CO2など保存状態が環境に左右されるところが大きく、油彩作品のような長期展示は不可能

・文化財は保存、研究・調査を第一に行うべきであり、それを大きく担う美術館は観光地ではなく、展示によるお金稼ぎが目的になってはいけない

・上記の点は文化庁による文化財の取り扱いの方向性でも固まっており、(国宝は年間60日以内など)展示期間も短いものに決まっている。その他仏像なども含めて、文化財の希少性を保つ目的もある。

・西欧、特にフランス・ルーヴルは国家の象徴としてモナリザなどの美術品を常時鑑賞できることが優先されており、そもそも日本の文化財保全体系と根本的に異なる。

主にそんなことが言える。本当にそう。2個目の点は直近の収益ノルマ設定よってさらに脅かされ、企画展が主にお金儲けの手段となってしまうのではないかという懸念がされている。なので今回の問題は結局、日本の美術館、博物館がインバウンド需要に頼るのではなく、日本に住むもっと多くの人が文化を大切に、美術館・博物館の素晴らしさを理解し、積極的に足を運ぶこと、そういうことでしかないのです。もっとみんな行こう。

◯日本のモナリザを考える

本題はここからで、それでもやっぱり日本のモナリザってなんだろう、考えたい!ということ。いくつか基準を設けつつ、候補を挙げてみる。

・仏像

Xでこの話題が出る前、昨年11月には会田誠がこんなこと言ってプチ炎上していた。確かにモナリザではなく、ニケやヴィーナス枠を考えた時、阿修羅や弥勒菩薩がバーンと東京にいてほしい!という気持ちはある。しかし、関西の方からしたら無論ふざけるなということだし、仏像の類は希少性もとい、その寺のその空間込みで、唯一無二の美空間になっているのだから、単体がやってきてもということはある。

さらに寺社仏閣は、もうすでに京都、奈良を中心に外国人が体験したい日本の文化として確立しているでしょう。それを西洋に当てはめるとするならば、宮殿や教会、城とその中の彫刻や壁画になる。それは、「国立美術館にある絶対に見たい作品」とはまた違う話になるので、今回は除外します。

・葛飾北斎 《冨嶽三十六景神奈川沖浪裏》

https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/246760

世界的に知られる日本のビックネームといえばの北斎。今回もXでは一番あがっていた作品。これもまあ浮世絵の保存が大変ということはありつつ、それでも浮世絵なんだから新しいものを刷って置いておけばいいのにという意見には、なすにきびは賛成です。せめて東博の浮世絵展示室には、富嶽三十六景の作品の一つが常時あって、「北斎!」と思えた方が良いのでは。

こんな意見もあるように、浮世絵は大量生産というその性質も含めて、面白がってもらうべきでしょう。最近はものづくりの裏側を解明する展示も多いので、(東博にも浮世絵体験コーナーはあるものの)もっと浮世絵に関する展示を充実させる、というのが現実的に海外の人を喜ばせる手段である感じがする。

・原田直次郎《騎龍観音》

日本画の通期展示が難しいなら、油絵で代表選手を決めようという発想。原田直次郎の《騎龍観音》は確かにかっこいい。大好きだけれど、なんかモナリザになると言われると面白い感じがする。

実際、東京国立近代美術館にはハイライトの部屋にずっといるので、美術館がすでに「騎龍観音モナリザ計画」を秘密裏に進めているのではないかと思っちゃう。龍に観音様が乗っているというトリッキーさとキャッチーさ、「騎龍観音」というモチーフは刺青でも人気らしいので、海外ウケもいいかもしれない。

・岸田劉生《麗子像》

https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/430284

このなすにきびnoteでも度々登場する「麗子像」これをもっと「日本版モナリザだよ!」と言ってもいいのではないだろうか。海外の人もモナリザっぽいと思うだろうし、理想美の観点でも西洋の模倣から、日本独自の表現の追求がなされている意味でも価値がある。

・岡本太郎

海外に向いた万博のための《太陽の塔》、渋谷駅の《明日の神話》で知られる岡本太郎も日本といえばという点では候補に挙げられる。しかし、世界的な知名度では江戸時代までのスターたちほどではなく、現代美術という点でもモナリザの位置は難しい。さらに、日本人からしても《太陽の塔》《明日の神話》以外だとどの作品を代表作と言って良いのか、、、平面作品限定だと尚更でしょう。

・若冲、狩野派、琳派

通期展示ができない、私立美術館が所蔵しているなどの点は置いておいて、《動植綵絵》《鳥獣花木図屏風》《唐獅子図屏風》《風神雷神図屏風》《燕子花図屏風》あたりは日本の宝としての格はもちろんあるものの、モナリザほどのインパクトがあるのかと言われると絶妙なところだろうか。

若冲は初めてみる時のインパクトやポップさも申し分無しなので《動植綵絵》《像と鯨図屏風》らへんはずっと見ていたい!!自分が特に好きなだけだけれど。唐獅子は海外の人も喜びそうだけど。やはりいつでも見たなる名品というと、植物画や風景画では少し弱い気がする。それを日本の美として印象付けることが必要なのだろうけれど、やっぱり西欧基準で考えてしまうところがどこかある。

ところで《動植綵絵》は2016年の若冲展以来、まとまってみたことがないけれど、今後チャンスはあるのか!皇居三の丸尚蔵館のリニュアールオープンに期待!

・曜変天目

東洋の美の頂点が日本にもあるよ、という意味で全然モナリザになる準備はできそうな曜変天目。これに関して、日本で作られたものではないからな、、、という意見もみたけれど、そんなこと言ったらモナリザもそうでしょう。ただ一般的な知名度が平面作品と比べると無さすぎるのが欠点でしょうか。

・モネ、ゴッホ

海外のもので日本にある名品と考えても良いとすると、やっぱり印象派あたりは強いわけで。モネの睡蓮やゴッホのひまわりは、日本の人も海外の人も見れたらうれししいくらいの感覚はあるんじゃないだろうか。

大原美術館も含め、結局世界的にも美術好きな人が日本にいいものがあることを知っているくらいの域を出ないんだろか。落札から40年ほど経った今で、SOMPO美術館がひまわりを持っていることはどれくらい世界の人に知られているんだろう?

やっぱりこう考えていくと日本のモナリザ選手権では、北斎が一つ頭抜けている感じがある。

◯打ち出すのは単体名品じゃなくてもいい

近代以前の作品で考えていくとそんな感じだけれど、今、日本が世界に打ち出せる文化といえば、やはり漫画・アニメ。漫画アニメなどを美術品として国立の博物館で置くことは果たして良いのかという論争も度々起こるけれど、なすにきびは全然肯定派。浮世絵がまさにそうであるように、国家の保護を受けない大衆の文化が「芸術」という域まで発展するのが「日本文化」の大きな特徴であり、それを象徴するものは積極的に展示するべきだと思う。

そう、海外向けに日本といえばこれですよというのなら、やはり何もモナリザを探す必要はなく、その日本独特の文化の形をそのまま紹介する展示室を作ればいい。浮世絵から漫画・アニメの原画をつなげて展示してもいいし、ジャポニズムだってもっと特集する展示室が常設で存在していても全くおかしくない。海外の人より先に、日本人がもっと誇れる意識を普及させる意味としても必要なんじゃないだろうか。

大英博物館で開催されていたManga展↓

そこでなすにきびが特に強く推したい日本は「かわいい文化」、この概念自体を特集して常設にしちゃうのはどうだろうか。すでに英語としても知られている「kawaii」。この感覚こそ、日本の精神、美学が反映された表現として、自国も海外もどちらも知るべきなのではないか。かわいいをテーマにした展覧会は東京では府中市美術館や山種美術館などで年々増えていて、もちろん小さい会場での良さもあるけれど、一度大々的な開催を見たい気持ちもある。

応挙、蘆雪の犬から近代日本画まで。白隠、仙厓の禅画に行ってもいいし、もっと遡って、鳥獣戯画や埴輪までも。日本の「かわいい」とため息が出るような造形、そして東洋独特の感覚である動植物をありのままに愛でるという姿勢、そこからポケモンやキティちゃんが生まれているという特集を博物館で紹介する。最近のゲームやイラスト文化の展示は固定させ、あとの展示は柔軟に変えていけばいい。日本独特の「KAWAII」文化、2010年代あたりから美術界にも普及し、もはや当たり前となった今だからこそ公式に国をあげて盛り上げるべきなのではなかろうか!!海外との差別化にもピッタリ。

「侘び寂び」だったりもそうだけれど、何か一つの象徴的作品ではなく、美意識の概念自体を国の象徴として、博物館に行くことでそれに順ずる作品に触れられる、そんなスタイルが日本の美術館にはあっていると思う。

◯kawaiiの総本山が東京・府中に!

京王井の頭線の駅に設置されている

そんな「kawaii」日本美術の産みの親とも言える、府中市美術館の金子学芸員。なんと今回で最後「春の江戸の絵画まつりシリーズ」、しかも満を持しての「長沢蘆雪展」がついに3月14日からスタート!!!明日!前期後期ほとんど展示替え、それぞれ絶対に見逃せない!!

1年間ずっと楽しみだった。嬉しい!プロモーションも凄いのでかなりの混雑が予想されますが、金子さんのYoutubeや関連図書を読みつつ、期待が高まるばかり。どれほどのかわいいが府中に溢れるのか、今季一番おすすめの展覧会です。みんなで行こう!明日から

おわり!

西洋の絵画、ミロ・クレーらもかわいいで考えてみる記事もあるのでぜひ↓↓↓




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なすにきび...勝手美術 偏った美術愛ですが、面白いなと思っていただけたら、いいねフォローなどよろしくお願いします。大変はしゃぎます。