見出し画像

母の手料理

皆さんは「母の手料理、母の味」で思い出すものがありますか?

私には、それがありません。

…いえ、手料理がまったくなかったわけではありません。

カレーや肉じゃが、母は苦手ながらも作ってくれていたと思います。


でも、大人になった今、「実家に帰ってこれが食べたい」と思える料理がありません。

懐かしさで胃が鳴るような、“実家の味”が、私には残っていないのです。


小学校2年生のときに父が他界し、

それから母は、朝も夕方も働きながら、私たちを育ててくれました。


母の勤め先の近くには、モスバーガーがありました。

仕事から帰る前、夕食としてそのバーガーを買って帰って、

夕方からの仕事に出かける。

その時にテーブルの上に置いてあったのが

「ホットチキンバーガー」という商品でした。


熱々のチキンに、冷蔵庫で冷やされたピリ辛のソース。

本来は、熱と冷のバランスが絶妙なバーガーだったのかもしれません。

でもテイクアウトされたそれは、

家に着くころにはソースとチキンがじんわりと馴染んでいて、

温度も混ざり合い、くたっとした仕上がりになっていました。


だけど、私はその味が好きでした。


手作りではないけれど、

確かに母が「夕飯」として用意してくれたもの。


なぜ、数あるメニューの中からホットチキンバーガーだったのか。

それは、実は母に聞いていないだけなのかもしれません。

でも――

それはそれでいいかな、と思います。


母は、「料理は好きじゃないから、良かった」とよく笑っていました。

そして今も、料理はあまりしていません。


少し形は違えど、ホットチキンバーガーが

私にとって、母の味なのかもしれません。


今はもう、販売されていないその味。

もう一度食べることはできなくても、

私の中では、今も残っています。

おぼろげな記憶ですが、懐かしい記憶です。


#エッセイ #お袋の味 #母の手料理 #ハンバーガー #思い出の味


いいなと思ったら応援しよう!