なぜ「天日干しのお米は美味しい」のか?
私が仲間とやっている田んぼは、
農薬・除草剤不使用
化学肥料不使用
天日干し
なのですが、割と一般的に、
「天日干しのお米は美味しい」
と言われていると思います。
でも実は、「なぜ美味しいか?」については、販売店やお米のパッケージを見ても、あまり明確に謳われてはいません。
天日干しをしているある生産者に伺うと、
「天日干しすることにより、稲の茎に残った栄養が穂(籾)に行き渡るのでより美味しくなる」
とのこと。
今回はそんな天日干し米について、なぜ「天日干しのお米は美味しいのか?」について、少し深掘りして整理してみました。
栄養面での違い
まず栄養面での違いについて。整理すると下表の通りです。

機械乾燥の場合、高温(40~60℃前後)で短時間に乾かすため、熱に弱い成分(ビタミンB群など)は一部失われ、酵素反応が途中で止まってしまうのだそうです。
その点、天日干しは機械乾燥に比べて、ゆっくりと水分が抜けるため、酵素が働く時間が長く、デンプンやたんぱく質が分解されてアミノ酸や糖類が増加します。
また乾燥時に高温になりすぎないため、ビタミンの熱分解が起こりにくいそうです。
食味の違い
続いて食味の違いについて。

官能検査では、総合、味および硬さの3項目において、天日干しは熱風乾燥と比べ、有意に優れることが評価された。炊飯品質では、天日干しは熱風乾燥より、食味スコア等の項目において品質指標が向上する傾向を示した。糊化特性は、天日干しは熱風乾燥と比べて、糊化開始温度が低く,最高粘度は高かった。
天日干しでは、稲穂ごと乾燥させるため、籾の中でゆっくりと追熟が進みます。この過程で、デンプンが糖に分解され、旨みと甘みが増します。
また、籾のまま太陽光にあたる間に光合成・呼吸活動が続き、米に独特の香ばしさや深みが生まれます。
機械乾燥では、短時間で乾く反面、こうした自然熟成のプロセスが省略されるため、風味はやや淡白になります。
天日干し米の流通量
天日干し米の方が栄養面でも優位性があり、食味で機械乾燥米よりも相対的に「美味しい」であろうことがなんとなく伝わりましたか?
天日干し米、食べたくなりますよね?(笑)
さて、天日干しのお米は日本の市場にどの程度流通しているのでしょうか?
実は正確な統計は存在しません。なぜかと言うと、
農水省や自治体が公表している主要な米関連統計には、乾燥方式(
機械乾燥/天日干しの区分)は調査項目に含まれていないこと。
また、お米の流通は籾・玄米・白米の状態で行われるため、籾摺り前の籾の乾燥方式によって流通が区分されていません。
でも、みなさんがお米を購入する時の店頭に、「天日干し」と明記されたお米が売られていることがありますよね。
これはどういうことかというと、一般的に産地やブランドで区分けされるお米とは別に、特定生産者・生産地域のこだわりで「天日干し」を銘打っている生産者・販売事業者がいるということです。
ということで、正確な統計がないのでなんとも言えませんが、日本の流通に占める天日干し米は、想定でなんと、
0.1%程度
のようです。これは貴重ですね・・・
壮観な風景に実りの秋を感じる
余談ですが私の妻は、佐久に来て「はぜかけ」(この地域での天日干しの呼び方。はざかけ、おざがけと呼ぶ地域も)の風景を見て、
人が手がけた造形の壮観さ
実りの秋の実感
お米をつくる人々の苦労
を、(お米づくりはしないけど)食べる専門の自分でも感じる、と言います。
ちなみに私が佐久を初めて訪れたのが2020年10月後半。
初めて佐久平駅で降りて、駅からすぐの場所で印象に残ったのもこの風景でした。

私が佐久に魅せられた理由は、こんなところにもある気がしています。
でも、この地域でもお米の天日干しをする田んぼが年々減りつつあるのではと感じています。
なぜって、この天日干し、人手と時間がダブルで掛かるのです。
天日干しは、稲刈りした後に稲を干すための土台を組み、そこに稲を干すという工程が加わるため、人手がないとできません。
もちろん1人でもできますが、途方もない時間が掛かります。
そして天日干しそのものは、天気次第ですが約2週間干す必要があります。
2週間干して、脱穀できるレベルまで籾の水分量が減ったら、晴れて脱穀です。
この稲刈り後の天日干しから脱穀までの工程を、コンバインでやれば、1反あたり1時間もあれば済んでしまいます。
農業の生産性向上や、担い手不足が課題の日本において、お米を天日干しするという行為は、もはや前近代的で非効率極まりないことかもしれません。
でも、秋のある期間、周りに広がる天日干しの風景を観て、色々感じる人は、私や妻だけではないはず。
今年はおおよそ田んぼ仕事は一区切りつきましたが、また来年もこの風景を生み出しますので、ご興味のある方は是非、佐久にお越しください。
