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koroinu
夢の味
声を上げる事もなく殻を打ち破る力もなく
種子の中で力尽きた赤ん坊たちは
猿たちにとっての重要な食料源になっていた
瓦礫の隙間に挟まったまま殻を打ち破れずに
息を引き取るもの
産み落とされた際に
遠くへと転がっていってしまい
例え殻を打ち破れたとしても
菩提樹からの保護が届かずに
鳥たちに襲われたりして
命を落としていくものもいる
無防備な赤ん坊に危険が迫ると
背中から伸びる蔦が保護本能に従い動くが
猿や鳥にとっては脅威ではない
産み落とされた赤ん坊たちが
生き残る為に用意された
世界はわずかな範囲でしかない
外れた先には冷たい影が広がり
容易く飲み込まれてしまう
見上げた先に輝く白い花びらと
甘い匂いの中で眠りにつける
赤ん坊は数えるほどだ
猿が一匹
瓦礫の隙間に手を入れて何かを探していた
爪の先が何かに触れた
猿はぐいぐいと腕を伸ばせるだけ
瓦礫の中に押し込んでいく
体を押し付けて力任せに引きずりだした
まだ産み落とされてから
まもない緑色の種子だった
猿は勢いよくそれを地面に叩きつけた
無数のひびが入りなかから粘膜に包まれた
緑色の皮膚が見えた
猿は嬉々として噛みつくと
貪るように食べ始めた
緑色の赤ん坊の夢の味を
堪能する余裕もなく
夢中になって噛み砕き
喉を鳴らしては飲み込んでいく
食べ尽くしても口の周りや
手についた肉片や体液を
丁寧に満遍なく舐め尽くしていった
綺麗になってもまだ名残惜しそうにして
手を舐めていたが
猿はしばらくすると立ち上がると
また新たな餌場を求めて
瓦礫の向こうへと姿を消していった
