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「聞くだけなら違法ではない」は英国でも通用するか

日本・電波法59条と英国 Wireless Telegraphy Act 2006 section 48 の比較

ラジオスキャナ、放送、アマチュア無線、CB、PMR446、特定小電力無線、そして「おもしろ無線」

ラジオスキャナをめぐる議論で、よく出てくる言い方がある。

「聞くだけなら違法ではない」

日本の受信趣味の文脈では、かなり見慣れたフレーズである。たしかに日本の電波法59条だけを見ると、この言い方には一定の根拠がある。ところが、これをそのまま英国に持ち込むと、かなり危ない。

日本の電波法59条は、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受したうえで、その存在や内容を「漏らす」こと、または「窃用する」ことに重心がある。これに対し、英国の Wireless Telegraphy Act 2006 section 48(英国2006年無線電信法48条)は、自分が予定された受信者ではない通信について、その内容・送信者・宛先を知る意図で無線装置を使うこと自体を問題にする。[1][2][3]

ここが、ラジオスキャナ趣味にとって決定的に重要な差である。

日本法――電波法59条は「傍受+漏示・窃用」型

日本の電波法59条は、法律に別段の定めがある場合を除き、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受して、その存在もしくは内容を漏らし、または窃用してはならない、と定めている。[1]

ここで重要なのは、条文が「傍受して」で止まっていないことである。禁止されているのは、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受したうえで、その存在や内容を漏らすこと、または窃用することである。

つまり、日本法の基本構造は、

「傍受」
だけではなく、
「傍受」+「漏示」
または
「傍受」+「窃用」

という形である。

罰則は電波法109条にある。無線局の取扱中に係る無線通信の秘密を漏らし、または窃用した者は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処される。さらに、無線通信の業務に従事する者が、業務に関して知り得た秘密を漏らし、または窃用した場合は、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金となる。[1]

ここでいう加重類型の主体は、「無線従事者」という資格保有者そのものではなく、「無線通信の業務に従事する者」である。したがって、109条2項は身分による加重規定ではあるが、単純に「無線従事者だけの犯罪」と読むのは正確ではない。

また、日本の電波法2条では、「無線設備」は電波を送り、または受けるための電気的設備を含むが、「無線局」は受信のみを目的とするものを含まない。したがって、受信専用のラジオスキャナは、通常「無線設備」ではあっても「無線局」ではない。[1]

このため、日本法では、受信専用スキャナを持っていること、あるいは受信すること自体を、ただちに無線局の無免許開設・運用として処罰する構成はとりにくい。

日本法の中心は、あくまで「傍受した秘密を漏らすな、窃用するな」である。

英国法の出発点――スキャナ自体は違法ではない

次に英国法を見る。

まず確認しておきたいのは、英国でラジオスキャナという機械そのものが全面的に違法なわけではない、という点である。

Ofcom(英国通信庁)は、一般にラジオ受信機は送信機能を持たない限り免許不要であり、適合した受信機を英国市場に置くこと自体は合法だと説明している。さらに、ラジオスキャナとは、二つ以上の離散的な周波数を自動的に同調・走査できる受信機である、と説明している。[2]

つまり、受信機やスキャナの所持・販売・一般的な使用そのものが、ただちに違法という話ではない。

ただし、Ofcom は同じ説明の中で、受信機やスキャナは通常 general reception(一般受信)のために使われるものだとしている。その例として挙げられているのは、licensed broadcasting stations(免許を受けた放送局)、そして hobby radio(趣味無線)である。[2]

ここでいう general reception が、英国におけるラジオスキャナ利用の安全圏を考えるうえでのキーワードになる。

WTA 2006 section 48――英国では「聞くだけ」も問題になり得る

英国の Wireless Telegraphy Act 2006 section 48 は、無線通信の interception and disclosure of messages(メッセージの傍受および開示)を規定している。[3]

Ofcom の説明によれば、section 48 の下では、無許可受信に関する犯罪は大きく二つに分かれる。第一が interception(傍受)、第二が disclosure(開示)である。[2]

Interception は、無権限者が、自分または代理する者が intended recipient(予定受信者)ではないメッセージについて、その内容・送信者・宛先に関する情報を得る意図で無線電信装置を使用する場合に問題となる。[2]

この規定の怖いところは、「聞いたあとに他人へ話したか」だけを問題にしているのではない点である。予定受信者ではない通信について、その内容などを得る意図で装置を使うこと自体が、interception として問題になり得る。

さらに disclosure、つまり開示の問題もある。Ofcom は、無許可で聞いた送信内容を第三者に開示することは違法であり、最高刑は2年の拘禁または無制限罰金であると説明している。[2]

要するに、英国では「聞いただけならセーフ」とは言いにくい。聞く対象が general reception なのか。それとも、自分が予定受信者ではない通信なのか。ここが大きな分水嶺になる。

放送――日本でも英国でも安全圏。ただし英国では海賊放送に注意

放送は、もっともわかりやすい合法側の受信対象である。

日本でも、ラジオ放送を受信することは、通常の意味での一般受信である。受信専用のラジオやスキャナは、受信のみを目的とする限り電波法上の「無線局」ではない。[1]

英国でも、Ofcom は general reception の例として licensed broadcasting stations を挙げている。つまり、BBC(英国放送協会)、商業ラジオ、DAB(デジタル音声放送)、正規のコミュニティ放送など、免許を受けた放送局による送信は、一般公衆による受信を予定したものと考えられる。[2]

ここで注意したいのは、「自分個人に宛てられているか」ではない、という点である。

たとえば日本向け短波放送を英国で受信した場合、それは自分個人に名宛てされた通信ではない。しかし、放送はそもそも不特定多数による受信を予定している。したがって、放送については「自分宛てではないから違法」という話にはならない。

ただし、英国では「放送なら何でもよい」とは書かないほうがよい。Ofcom が例示しているのは licensed broadcasting stations、つまり免許を受けた放送局である。pirate radio(海賊放送)、すなわち無免許放送はここに入らない。

Ofcom は、無免許のラジオ局、いわゆる pirate radio の運用は違法であり、関与者は2年以下の拘禁、無制限罰金、またはその両方に直面し得ると説明している。また、Ofcom は無免許放送局を調査し、関係機器を押収し、関係者を訴追する権限を持つと説明している。[2]

したがって、研究ノートとしては、「放送は合法側」と書く場合でも、それは正規に免許された放送局の放送を指す、と限定しておくのがよい。

海賊放送は、形式的には不特定多数へ向けた送信であっても、少なくとも英国法上の安全圏には置かないほうがよい。送信・運用する側は明確に違法であり、受信者側についても、Ofcom が安全な一般受信例として挙げる licensed broadcasting stations には含まれないからである。

アマチュア無線――hobby radio として整理しやすい

アマチュア無線は、日本でも英国でも比較的合法側に整理しやすい。

日本では、受信専用でアマチュア無線を聞くこと自体は、通常、無線局開設の問題にはならない。ただし、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受して、その存在や内容を漏らしたり、窃用したりすれば、電波法59条の問題になる。[1]

英国では、Ofcom がスキャナ等の一般受信の例として hobby radio を挙げている。アマチュア無線はまさに hobby radio の典型である。Ofcom も、アマチュア無線を、自己訓練、レクリエーション、公共サービスを目的として他のアマチュア無線家と通信する趣味かつサービスであると説明している。[2][4]

もちろん、送信するには免許が必要である。しかし受信だけであれば、放送と同じく比較的安全な受信対象として位置づけやすい。

ただし、アマチュア無線であっても、通信内容を勝手に商業利用したり、特定個人の情報を晒したりすれば別問題である。日本では電波法59条の漏示・窃用が問題になり得るし、英国では disclosure が問題になり得る。

つまり、アマチュア無線は「聞いてよい側」に置きやすいが、「聞いた内容を何に使ってもよい」わけではない。

CB無線――公開チャンネル的な性格が強い

CB(Citizens’ Band、市民バンド)無線も、日本と英国を比較するうえで興味深い対象である。

日本法では、CB無線に近い領域として、電波法4条が26.9MHzから27.2MHzまでの周波数を使用し、空中線電力0.5W以下で、総務省令で定める条件を満たす無線局について、一定の場合に免許不要とする枠組みを置いている。[1]

英国では、Ofcom がCB無線を27MHz帯で運用される短距離無線サービスであり、趣味および業務利用のためのものと説明している。また、技術資格なしで使うことを想定したサービスであり、一定の条件を満たすCB機器は免許不要で使える。[5]

CB無線は、同じチャンネルを複数の利用者が共有し、呼び出し・応答する文化を持っている。アマチュア無線ほど制度化された資格無線ではないが、不特定の利用者が共用チャンネルで交信するという意味では、公開チャンネル的・趣味無線的な性格が強い。

そのため、英国でもCBは Ofcom のいう hobby radio、または general reception に近いものとして整理しやすい。

ただし、CBだから何をしてもよいわけではない。特定の会話を執拗に追跡し、内容を第三者に開示するような行為は、やはり問題を生じ得る。

CBについては、「比較的安全な受信対象。ただし内容の開示や利用は別」と書くのが穏当である。

特定小電力無線とPMR446――似ているが、第三者受信の評価は異なる

ここで、日本の特定小電力無線と、英国・欧州圏のPMR446(Private Mobile Radio 446、446MHz帯簡易業務無線)を比較する。

日本の特定小電力無線は、店舗、イベント会場、工事現場、学校、レジャー、警備、施設管理などで使われる近距離連絡用の無線として知られている。制度上は、電波法4条が、無線局を開設するには原則として総務大臣の免許が必要だとしつつ、一定の小電力・特定用途の無線局について例外を置いている。その一つとして、空中線電力が1W以下で、総務省令で定める条件を満たし、適合表示無線設備のみを使用するものなどが免許不要の枠組みに入る。[1]

英国のPMR446は、日本の特定小電力トランシーバーにかなり近い。Ofcom のIR 2030(英国インターフェース要件2030)では、PMR446機器は手持ち型であり、基地局やレピーターとしての使用は認められず、短距離の peer-to-peer(端末間直接通信)モードで運用されるものと説明されている。また、446.0MHzから446.2MHzの範囲で、最大500mW ERP(実効輻射電力)の条件が示されている。[6]

したがって、特定小電力無線とPMR446は、どちらも「誰でも勝手にどんな無線機でも使える」という制度ではない。正確には、一定の技術条件を満たした機器を、定められた範囲で使う限り、個別免許なしで運用できる無線である。

ここで重要なのは、免許不要という言葉の意味である。

日本の特定小電力無線が免許不要であるというのは、適合した機器を使って、利用者自身が近距離通信を行う場合に、個別の無線局免許が不要だという意味である。第三者がスキャナで他人の特定小電力無線の会話を聞いて、それを漏らしたり利用したりしてよい、という意味ではない。

同じことはPMR446にもいえる。

PMR446が免許不要であるというのは、適合したPMR446機を使って、利用者自身が近距離通信を行う場合に、個別の無線免許が不要だという意味である。第三者がスキャナで他人のPMR446通信を聞いてよい、という意味ではない。

特定小電力無線もPMR446も、実態としては、特定のグループ内の連絡に使われやすい。通信の性格としては、外部の第三者に向けて公開するものではなく、特定の相手方またはグループ内に向けた通信である。

ここで日英の違いが出る。

日本では、特定小電力無線を第三者が偶然または意図的に受信した場合でも、電波法59条の構造上、ただちに「聞いたこと」だけで処罰されるというより、傍受した通信の存在・内容を漏らすこと、または窃用することが問題になる。[1]

英国では、PMR446を第三者がスキャナで聞く場合、自分が予定受信者ではない通信について、その内容・送信者・宛先を知る意図で無線設備を使っている、と評価される危険がある。[2]

つまり、特定小電力無線とPMR446は、無線制度としてはよく似ている。しかし、ラジオスキャナで第三者が聞く場合の法的評価は同じではない。

日本では、特定小電力無線は「免許不要で使える無線」であり、第三者受信については、受信それ自体よりも、受信内容の漏示・窃用が中心問題となる。

英国では、PMR446は「免許不要で使える無線」ではあるが、「第三者が聞いてよい無線」とは限らない。

この点は、「免許不要」と「傍受自由」を混同してはならない、という形で整理できる。

いわゆる「おもしろ無線」――法令用語ではなく受信趣味上の言葉

日本の受信趣味には、「おもしろ無線」という言葉がある。これは法令上の分類ではなく、三才ブックスの『ラジオライフ』や『おもしろ無線受信ガイド』シリーズなどで定着してきた、受信趣味上の呼称と見るのがよい。

三才ブックスは『おもしろ無線受信ガイド』について、1987年から続くシリーズと説明している。同社の商品説明では、掲載ジャンルとして、警察無線、消防無線、航空無線、鉄道無線、タクシー無線、防災無線、軍用無線、放送中継波、マスコミ無線、自動車無線、コードレスホン、携帯電話、レジャーランド無線、コンサートワッチ、盗聴波などが挙げられている。[7]

このラインナップを見ると、「おもしろ無線」は、放送やアマチュア無線以外の、現場性のある業務無線・公共無線・移動体通信を趣味的に受信する文化を指していることがわかる。

しかし、ここでも日本法と英国法の差が出る。

日本では、受信だけでただちに電波法59条違反とは言いにくい。問題の中心は、傍受した通信の存在・内容を漏らすこと、または窃用することである。[1]

これに対し英国では、そもそも予定受信者ではない通信の内容・送信者・宛先を知る意図でスキャナを使うこと自体が、WTA 2006 section 48 の interception offence(傍受犯罪)になり得る。[2][3]

航空無線、鉄道無線、警備、タクシー、消防、救急、警察、軍関係などは、一般公衆向けの放送ではない。これらは通常、特定の業務目的のために、特定の相手方または関係者に向けて行われる通信である。

したがって、日本の受信趣味でいう「おもしろ無線」を、そのまま英国で楽しむのは危ない。英国では、「技術的に聞こえる」ことと「法的に聞いてよい」ことを、かなり厳しく分けて考える必要がある。

英国では、基本的に「SWLのユーティリティDX」は成立しにくい

日本の受信趣味では、短波放送を聞く SWL(Short Wave Listener、短波受信趣味家)、アマチュア無線を聞く SWL、そして航空・船舶・軍用・業務・気象FAX(気象ファクシミリ)・各種データ通信などを聞く utility DX(ユーティリティDX)が、ひとつながりの受信趣味として語られることがある。

しかし英国法のもとでは、このうち放送受信やアマチュア無線受信と、ユーティリティDXを同列には扱いにくい。

Ofcom は、受信機やスキャナの通常の用途を general reception とし、その例として licensed broadcasting stations と hobby radio を挙げている。一方で、予定受信者でない通信について、その内容・送信者・宛先を知る意図で無線装置を使うことは、Wireless Telegraphy Act 2006 section 48 の interception offence になり得ると説明している。[2][3]

このため、英国で安全側に置ける SWL は、基本的には放送を聞くこと、アマチュア無線やCB無線など hobby radio と説明しやすいものを聞くこと、自分が通信参加者または正当な受信者である通信を聞くことに限られる。

これに対し、航空、船舶、業務無線、軍用通信、公共安全通信、鉄道、警備、タクシー、PMR446の他人のグループ通信などは、一般公衆に向けた放送ではない。これらは通常、特定の業務目的または特定の相手方・関係者に向けた通信である。

したがって、英国では日本の受信趣味でいう「ユーティリティDX」を、単なる SWL の一分野として安全に位置づけることは難しい。

もちろん、「技術的に受信できる」ことはある。短波帯の航空、船舶、VOLMET(航空気象放送)、NAVTEX(航行警報テレックス)、気象FAX、軍用系の通信などは、受信機の性能と伝搬条件が合えば聞こえたり復調できたりする。

しかし、英国法で問題になるのは、聞こえるかどうかではなく、その通信が general reception を予定しているか、自分が intended recipient かである。

この意味で、英国では broadcast DX(放送DX)や amateur radio SWL(アマチュア無線受信)は成立するが、日本的な意味での utility DX は、少なくとも法的にはかなり成立しにくい、と整理できる。

したがって、英国では、放送DXやアマチュア無線SWLは成立する。しかし、航空・船舶・業務・軍用・公共安全通信などを対象とする日本的な「ユーティリティDX」は、予定受信者性と general reception の要件に照らし、法的にはかなり危険な領域に入る。

航空無線はどうか

航空無線は、日本の受信趣味では代表的な「おもしろ無線」の一つである。市販の受信機で聞けることも多く、航空機と管制機関の交信は受信趣味として人気がある。

日本法では、航空無線を受信したこと自体より、聞いた内容を漏らす、使う、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に投稿する、といった行為が電波法59条の中心問題になる。

しかし英国法では、航空無線を単純に「聞いてよい側」に入れるのは避けたほうがよい。

航空無線は、放送ではない。航空機、管制機関、航空業務関係者の間で行われる業務通信である。したがって、第三者の趣味受信を当然に general reception とみるのは難しい。

もちろん、航空業務に関係する者が業務上必要な範囲で受信する場合は別である。しかし、一般人がスキャナで航空管制通信を聞く場合、英国では「予定受信者ではない通信を内容取得目的で受信している」と評価されるリスクがある。[2][3]

日本では、受信後の漏示・窃用が中心問題になる。英国では、受信行為そのものの段階で問題になり得る。

この違いは、航空無線のような「おもしろ無線」領域で特に大きく表れる。

結論――日本の「聞くだけならOK」は英国では危ない

ラジオスキャナの使用は違法か。

答えは、国によってかなり違う。

日本法では、受信専用スキャナは通常「無線局」ではない。そして電波法59条は、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受したうえで、その存在・内容を漏らすこと、または窃用することを禁じている。したがって、日本法の基本構造は、「受信それ自体」よりも「傍受後の漏示・窃用」に重心がある。[1]

これに対し英国法では、スキャナの所持や一般受信そのものは違法ではない。しかし、予定受信者ではない通信について、その内容・送信者・宛先を知る意図で無線装置を使うこと自体が、Wireless Telegraphy Act 2006 section 48 の interception offence になり得る。さらに、聞いた内容を第三者へ開示すれば disclosure offence(開示犯罪)になり得る。[2][3]

したがって、日本で比較的成り立ちやすい「聞くだけなら違法ではない」という言い方を、英国にそのまま持ち込むのは危険である。

英国で比較的安全に受信対象とできるのは、正規に免許された放送、アマチュア無線、CB無線のように、general reception や hobby radio と説明しやすいものに限られる。

PMR446は、免許不要の無線ではあるが、第三者が他人のグループ通信を聞く対象としては慎重に扱うべきである。これは日本の特定小電力無線と比較するとわかりやすい。どちらも近距離・低出力・グループ内連絡のための免許不要型トランシーバー制度だが、「免許不要」は第三者の傍受自由を意味しない。

また、英国では、放送DXやアマチュア無線SWLは成立する。しかし、航空・船舶・業務・軍用・公共安全通信などを対象とする日本的な「ユーティリティDX」は、予定受信者性と general reception の要件に照らし、法的にはかなり危険な領域に入る。

航空無線、鉄道無線、業務無線、警備、消防、救急、警察、軍関係など、いわゆる「おもしろ無線」に含まれる多くの通信は、英国ではかなりリスクが高い。

結局のところ、日英の違いは次の一文に尽きる。

日本法は、傍受した通信を「漏らすな、使うな」という構造である。

英国法は、それに加えて、「そもそも自分が予定受信者でない通信を、内容取得目的で聞きに行くな」という構造を持っている。

ラジオスキャナ趣味を英国法で考えるなら、「聞こえるか」ではなく、「それは一般受信を予定した通信か」を先に問うべきである。ここを取り違えると、日本の感覚では単なる受信趣味でも、英国では違法な interception に近づいてしまう。


[1] 電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)
e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000131
日本法令外国語訳データベースシステム
https://www.japaneselawtranslation.go.jp/en/laws/view/4818
電波法2条は「無線局」から受信のみを目的とするものを除外し、59条は特定相手方あて無線通信の傍受後の漏示・窃用を禁じ、109条はその罰則を定める。

[2] Ofcom, “Rules on using radio equipment”
https://www.ofcom.org.uk/spectrum/radio-equipment/radio-spectrum-and-the-law
Ofcomは、受信機・スキャナの免許不要性、general reception、licensed broadcasting stations、hobby radio、unauthorised reception、interception、disclosure、海賊放送の違法性について説明している。

[3] Wireless Telegraphy Act 2006, section 48, “Interception and disclosure of messages”, legislation.gov.uk
https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2006/36/section/48
section 48は、interception and disclosure of messages を定める英国法上の中心規定である。

[4] Ofcom, “Amateur radio”
https://www.ofcom.org.uk/spectrum/radio-equipment/amateur-radio
Ofcomは、アマチュア無線を自己訓練、レクリエーション、公共サービスを目的とする hobby and service と説明している。

[5] Ofcom, “Citizens’ Band radio spectrum use”
https://www.ofcom.org.uk/siteassets/resources/documents/spectrum/spectrum-enforcement/citizens-band.pdf?lang=en
Ofcomは、CB無線を27MHz帯の短距離無線サービスで、hobby and business use のためのものと説明し、一定の条件下で免許不要化された経緯も説明している。

[6] Ofcom, “UK Interface Requirement IR 2030: Licence exempt Short Range Devices”
https://www.ofcom.org.uk/siteassets/resources/documents/spectrum/interface-requirements/ir-2030.pdf?v=335258
IR 2030は、PMR446について、手持ち型、基地局・レピーター不可、短距離 peer-to-peer、446.0–446.2MHz、最大500mW ERPなどの条件を示している。

[7] 三才ブックス『おもしろ無線受信ガイド バックナンバーDVD 1987-2021』商品説明
https://www.sansaibooks.co.jp/item/dvd/4857/
三才ブックスは『おもしろ無線受信ガイド』を1987年から続くシリーズと説明し、警察無線、消防無線、航空無線、鉄道無線などの受信ジャンルを挙げている。


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