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生き方を考える30歳

 「あった!ちょっと動かないで!」

 妻が嬉々とした声をあげる。どうやら、私の頭にある白髪を見つけたようだ。じっとして待つ間に、妻が毛抜きを持ってくる。最近は白髪が見つかる頻度が増している気がする。

 「ぶちっ」。慣れていて痛くもかゆくもない。死ぬまでに何度これを繰り返すのだろうか。あと10年もすれば、いちいち抜いていられないくらい白髪が増えるかもしれない。

 先日、30歳の誕生日を迎えた。想像していたよりも、あっという間である。10年前は大学生、20年前は小学生だった。10歳のときも、20歳のときも10年後を想像したと思うが、10年後は想像した通りのものではなかった。10年前の大学生だった私に、「10年後は結婚して、妻の転勤に合わせて仕事を退職してアメリカにいる」と言っても信じられないだろう。

 私は基本的にその瞬間を生きているタイプの人間で、「何年後にどうなっていたい」などと考えるタイプではない。しかし高校3年時の2013年に東京五輪の開催が決まった際、開催される2020年には自分はどんな風になっているんだろうかという不安9割期待1割の気持ちになったことを思い出す。

 結果的に新型コロナウイルスの影響で2020年には五輪は開催されず、翌年に延期された。高校3年時の気持ちを思い出しながら、「物事は考え通りにはいかないものだな」と超個人的な感想を抱いた。

 思ってもいなかったアメリカでの生活を通して、知らないことや今まで考えもしなかったことについても知ろうとしたり考えたりするようになった。

 地方紙の記者だったこともあり、今まではローカルの話題やその地域の課題について考えることが多かった。日本の外に出ると、強制的に視点を広げられる。今まであまり気にしてこなかった国際的な話題についても気になるようになり、知らないことばかりだなと感じる日々である。それと同時に、自分が狭い視野で物事を見ていたことを痛感し少し怖くなった。

 一方で、自分の持っている地域に根差したミクロ的な視点も大切だと感じている。それを失わずに、アメリカ生活を通じてマクロ的な視点や知識などを吸収し、日本に帰ってからの生活と人生に役立てられたらいいと今は考えている。

 いずれにしても光陰矢のごとし、少年老いやすく学成り難しである。今できることを今やっていかなければと気を引き締める。「あー学生時代からもっと英語を勉強しておけばなー」。こんなことを思ってしまうが、仕方がない。頑張ろう、30代。


伸びた建物の影=2025年12月、一時帰国時に撮影



きょうの1曲

My Generation - YUI
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