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今日だけ、戻らない

戻らないと決めたのは、
間違いじゃなかったと思う。

あのまま続けても、
満たされきることはなかった。


それくらいは、
ちゃんと分かっていた。


連絡先を消した夜、
少しだけ手が震えた。

これで終わるのかと思うと、
寂しさは、ちゃんとあった。


でも同時に、
どこかでほっとしている自分もいた。

もう、待たなくていい。
もう、振り回されなくていい。


そう思えたはずだった。

次の日の夜、
いつも連絡をしていた時間になると、
指が勝手にスマホを探した。


開いて、閉じて、
また開いて。

もう連絡先はないのに、
それでも、そこにある気がしてしまう。

何度も手放そうとして、
何度も戻ってきた。

今回こそ、と思っても、
同じことを繰り返してしまう自分がいた。


これでいいんだと、
言い聞かせるたびに、
少しだけ苦しくなる。


本当は、
戻りたいのかもしれない。

でも、戻った先に、
答えがないことも分かっている。


その間で、
ずっと揺れている。

思い出は消えない。

楽しかった時間も、
救われた気持ちも、
なかったことにはできない。

だから余計に、
手放すことが難しい。


「連絡しない」

ただそれだけのことが、
こんなにも重いなんて思わなかった。

今日もまた、
同じ時間がやってくる。

何も変わっていないのに、
自分の中だけが騒がしい。


それでも、
今日は戻らない。

そう決めて、
スマホを伏せた。


明日のことは、分からない。

でも、
少なくとも今日だけは、
戻らなかった。


※この物語はフィクションです。

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