15年ぶりの再会。続!この世で一番重い「久しぶり」
長い人生の中で、
後になって振り返ると
「あそこが起点だった」
と思う瞬間がある。
私にとって、その一つがこの日だった。
無我夢中で駆け抜けていた当時の私を、
今だからこその第三者視点で振り返ってみる。
そのままお届けするのは面白く無いので
私の大好きな『情熱大陸』風に。
(読むときは、情熱大陸のナレーションを想像して、お楽しみください)
再会当日。彼女の朝は早かった。
取材を始めてはじめて、こんなに早く
しかもシャッキリ起きている姿を見た。
待ち合わせは午後のはずだが、
少しでも身体を絞りたいのか
朝から風呂に入っている。
我々取材班も、
計量前のボクサー並みの姿を見て
並々なる意気込みと、
今日という日の重要性を意識した。
後日、本人に話を聞いた。
「15年ぶりなんでね」
「がっかりされたくないじゃないですか」
その言葉に、我々も思わず頷いた。
我々は、
元婚約者インドとの再会を決めた日から、
彼女を追い続けている。
この2週間の変化は実に興味深かった。
・ジョギング開始
・美容院へ駆け込み
・新しい服を購入
・パックを連日投入
・鏡を見る回数の増加
・体重計との頻繁な交渉
「恋をすると綺麗になる」
とはよく言ったものである。
その変化を、我々も目の当たりにした。
我々が密着を始めた頃、
彼女はどこにでもいる40代女性だった。
コンビニよりスーパーを好み、
「今日のお買い得は?」と定期的に
しまむらをパトロール(しまパト)する。
「定価で買うのは負け」
なぜそこまで通うのか?と聞いた時に
彼女からこう、答えが返ってきた。
この返答に我々の一人も、
大きく頷いていた。
ただ
しまらー二人の着ている服が
被っていた事は、言わずにおいた。
この2週間、
彼女は何かに取り憑かれたように動き続けた。
我々もその勢いに若干置いていかれるほど。
数時間おきに体重計へ乗り、
グラム単位の変化に一喜一憂する。
その一喜一憂の振れ幅が実に人間らしい。
もっとも、
最後まで葛藤はあったようだ。
最近練習していたツケマは、
直前になって却下された。
「気合い入れすぎてると思われるのも
恥ずかしいから」
とのことである。
なお、ここまでの行動を見る限り、
ツケマの有無で
「気合い入ってる認定」が覆るとは、
我々には思えなかった。
むしろ既に十分伝わっている。
普段の彼女は、
どちらかというとギリギリで生きている。
待ち合わせ時間に間に合えば上出来、
5分遅れは間に合っている
本人は本気でそう思っているそうだ。
我々も何度か
「このままだと間に合わないんじゃ」と
ハラハラさせられたが、
この日だけは違った。
彼女は予定より一本早い電車に乗ったのだ。
この異変に我々もざわついた。
いつもの調子で構えていた我々も、
乗り遅れないよう慌てて飛び乗ったのである。
取材班としてのプライドが試された瞬間だった。
某日午後13時
新宿駅。一人の女性が、
どこか落ち着かない様子で構内を歩いていた。
その様子は遠目にも明らかだった。
改札へ向かう
途中で立ち止まる
引き返す
トイレへ入る
鏡を見る
髪を整える
再び改札へ向かう
また立ち止まる。
そして再びトイレへ戻る。
我々は、この日だけで
4回目となるその行動を見守っていた。
数分後
彼女は出て来たかと思うと、
再びトイレへ引き返す。
我々は、
ここまでの往復回数と表情の険しさから、
体調不良の可能性も視野に入れ始めていた。
まさかお腹を壊したのではないか、
そう心配したのである。
しかし後日、
本人に話を聞く機会があった。
すると返ってきた答えは、
実にシンプルだった。
「いや、ただ緊張してただけです」
どうやら腹痛ではなく、
15年分の感情が胃のあたりを占拠していただけらしい。
我々もその表現に納得した。
この日、
彼女はある人物と再会する。
かつて結婚を約束し、
そして別れた男だ。
この時点で既にドラマ性は十分である。
別れたあと、
彼女は自分を立て直すためにインドへ渡った。
神秘の川ガンジスに、
手紙を流し、
指輪を流し、
未練を流した。
失恋の立ち直り方としては異例な
スケールの大きさに我々も少し圧倒される。
もう終わった話だと、
そう思えるところまで来たはずだった。
それでも、
15年という歳月を経て、
再び会うとなれば話は別らしい。
我々はその再会を静かに見守った。
改札の前に立った彼女。
しばらく動かない。
人の流れが左右から押し寄せ、
背中を軽く押される。
それでも一歩が出ない。
その様子を見守りながら
我々も思わず息を呑む。
彼女は小さく息を吐いた。
もう一度、吸う
ゆっくりと吐く。
落ち着こうとしている姿に
心が震える。
それだけの日なのだと
我々も再確認をした。
やがて
バッグの持ち手を握り直す彼女。
視線を上げる。
改札の向こう側を見据える。
深呼吸をひとつし
意を決したように改札へ向かう。
ピッ。
改札が開く。
その音がやけに大きく響いて
我々の耳にもはっきり届いた。
数歩進む。
時間の流れが遅くなったような
錯覚を起こすほど
一つ一つの動作が目に焼き付く。
そして
スローモーションのように流れる
彼女の姿を追う
進行方向の先から、
笑顔で手を振る一人の男の姿が見えた。
その瞬間、
彼女の顔が少し揺れる。
このとき、歴史は動いた。
少なくとも、
彼女の中の歴史は動き始めていた。
我々もその瞬間をしっかりと記録した。
後日、
あの瞬間の心境を聞く機会があった。
我々は、
15年ぶりの再会だったのだから、
さぞかし感動しただろう彼女の言葉を
興奮を隠しつつ、待った。
しかし、
彼女の口から飛び出したのは、
我々の予想を大きく裏切る、
たった一言だった。
最後まで読んでいただき、
本当にありがとうございました。
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次回は──
15年ぶりの再会で、彼女の口から飛び出した「まさかの一言」。
我々取材班も、思わず耳を疑いました。
また次回、お会いしましょう。
