もういくつ寝ると【オジンと一緒に】
(本文1266文字)
「よう、ごきげんさん!」
『おう、買い物か?』
「そうや、年末のな。どこも店、休みになるからな。食べるもんとかな」
『おせちはどないすんの? あんたとこ』
「うちか? うちはほれ、あそこのコンビニで予約してるねん。もうなあ、そないになあ、三段とかいらんしな。それやったら鍋とかな、そんなんのほうがええし」
『そやな、あんたとこも奥さん生きてたらまだな……』
「おい、また勝手に他人の嫁さんあの世へ逝かせたな」
『だって、男やもめが一人でコンビニのおせちって……』
「あほ! 嫁さんピンピンしとるがな、まだ」
『うわ、まだ生きてんの?』
「あんたそれ、うちの嫁さん聞いたらあんたが先にあの世行きやで」
『そやけど生きてるんやったらおせち作らへんのかいな』
「いや、だからな、二人分だけ作るの手間やし材料代かかるだけやろ? 娘や孫は正月、家族で旅行やから帰ってこうへんしなあ」
『あんたなあ、そんな事やったらもっと早う、わしに言わんかいな』
「何をよ?」
『そんな寂しいこと言うくらいやったら、なんでわしに言わんの! あんたと奥さんで正月、うちに来てやで? みんなで仲良うおせち食べて、酒飲んで、陽気に賑やかにしたらええのんちゃうの!』
「いや、あんたとこかって色々お客さんとかもあるやろし迷惑やろ?」
『みずくさいわ~ あんたわしのツレとちゃうの? 同じような歳でやで? 年寄どうし仲良く、寂しないようにしたらええんとちゃうの?』
「あんた…… えらい優しい事…… おおきに…… わし、嬉しいわ……」
『泣くなよ、ええ歳してからに。な、寂しいのはわしとこも一緒。大勢のほうが楽しいやろ? うちも嬉しい』
「そうか、おおきに。ほな嫁さんに言うて、正月お邪魔しよかな。それで初詣も一緒にいこか」
『お~ええな、行こ、行こ! なんや俄然楽しみになってきたんとちゃう?正月がくるの』
「ほんまやなあ、娘らが毎年帰ってきてた時みたいにソワソワするなあ」
『ほんまにうちも一緒や。そやからな、楽しく仲良くいこうな』
「おおきに。ほんまありがとうやで。嬉しいわ……」
『だから泣くなって、ほんまに』
「歳とるとな、ゆるなってな」
『え、下も漏らしたん?』
「ちゃうがな、上だけやわ、もう、ほんまにあんたは、アハハ」
『そうか、まあ、泣かんとな、ほな行こか』
「え、今から? それは正月なってからでええで」
『いや、何言うとんの、準備がいるがな、準備が、六人やで?あんたとことウチとこと』
「え、うちは二人だけやで」
「ウチは四人やがな。ワシ、嫁さん、息子と娘」
「ええ! あんた、子供さんいてはるんやったら、わしらが行ったら家族団らんにならんやろ」
『何言うとんや、大勢のほうがにぎやかでええやろ。さっき言うたとこやで』
「わし、また泣きそうや……」
『ほんま、上も下も緩いなあ』
「ほっといて!…… よっしゃわかった。買い物しなおそ。あんたとこ持っていく酒やおつまみとか、そうやな鍋の材料も買わなあかんかな」
『あ、そうや、ひとつ頼んでもええか?』
「なんや? なんでも言うて!」
『四人分のおせちも買うてくれる? 三段で』
「……はなからそれが目当てかい……」
続くかも
