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yasuu_kusayan
育む【雪和尚】
あの人のところへもう一度戻りたいのです。
そう言った女の表情はただ美しかった。
その身体に触れたとて温かみなど感じることはない。
白磁器よりも白くつるりとした肌には一滴の血も流れていないような生気のなさもその美を際立たせる。外に振り続ける雪の結晶も敵わない、想いの強さゆえの凛とした美しさであった。
戻ってどうなさるおつもりか。
あの人はわたくしがいなくなったことに悲しんでばかりおられます。楽しかったことやわたくしがどれだけあの人を想っていたかということは忘れて、ただただ悲しんでばかりおられる。だからもう一度だけ戻りいつもあなたと一緒にいると伝えたい、気付いてほしいのです。
拙僧にできることはかぎられておりますぞ。
どうかお力をお貸しください。
僧は積もる雪のなか堂の外に出て禅を組みひたすら念仏を唱えた。僧衣はみるみるうちに雪に白く染められ笠の上にも積もりだす。それでも僧は念じ続けた。
女の姿はぼんやりとしだし一瞬の風に吹雪となって舞い上げられた。
これであなたは雪となった。その整ったお心でその方の元へお行きなさい。
冬の間は辺りをその穢れのない白さで包みなさい。
そして春にはその姿を水に変え、その方の命の源となるのです。
それを繰り返しその方がいずれ土に返っても、あなたは常にその方と命をはぐくむ。これで良かったですかな。
僧の頬の雪が少し温かみを持ち、落涙するようにあご先まで伝う。
いつのまにか雪はやんでいた。
僧はそのまま姿を崩すことなくいつまでも禅を組み続けた。
今も深い雪の頃にその寺の僧侶は外にでて禅を組む修行が行われる。
そして春が訪れる頃から白い花を持つ植物が境内のあちらこちらで見られるという。
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