Photo by
hirokikanayama
棒アイドル ある日の思い出 #毎週ショートショートnote
「パパ、この木、切られちゃうんでしょ」
娘は工事用のフェンスで囲まれた神社の古い楠の木を指して言った。
「ああ、この間の台風でもう、倒れる寸前だから危ないんだ。すごい年寄りの木だしな」
「ご神木とかいうんでしょ。切ってもタタリとかないの?」
娘は肩をすくめて言う。
「偶像拝礼も最近じゃ少ないし、神主さんがちゃんと拝むから大丈夫じゃないのかな」
私は知っていることだけを口にした。
「ぐうぞう はいれい?」
「日本は昔から木とか山とかそんなとこにも神様が宿ってると信じてたんだよ。外国の宗教ではそういうの禁止みたいだな」
「ぐうぞう・・」
娘はそばに落ちていたその木のものと思われる枝を拾い、透かし見るように掲げた。
「記念に神様持って帰ってもいいかな?」
私はなぜか「いいんじゃない」と言ってしまった。
五年後、大学に進学した娘はかつての神社の巫女のアルバイトを始め、ミス○○神社として1年間過ごした。
多分、あの枝を彼女はまだ持っているはずだ。
完 410文字
たらはかにさんの毎週ショートショートの企画#棒アイドルに参加させていただきました。今週は頑張って3つ書きました。
お読みいただきありがとうございました。
『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』
