見出し画像

ダミアンに値札が貼られた。公平を信奉する「かの汚泥」の不存在

公式がXに投稿した一文を読んだ。

「照は『ダミっちに任務を振った』」

値札を貼られた、と思った。


照というキャラクターには、実装前と実装後で価値観の変化がある。

実装前の照は「等価交換」の人間だった。人は価値を示せるかどうかで全てが決まる。それが彼女の軸だった。

実装後、その軸は動いた。「心はプライスレス」。「貴いものに値段は付けられない」。

変調画面より

この変化自体を否定するつもりはない。なんなら当時、私は心から喜んだ。
(後になって、これが自分で自分を欺いていたことに気づく。)

問題はその運用だ。



心象映画6段階目より


照の「プライスレス」は、全員に適用されていない。

彼女が気に入った対象はプライスレス扱いされる。それ以外は評価され、序列に置かれ、支配の対象になる。プライスレスかどうかを決めるのは照自身だ。恣意的に。

恣意的な裁量で権能を振るう組織にいれば、そうなるのも妥当ではある。しかし筋は一本しかない。気に入った相手にだけ適用される「プライスレス」は、原則ではなく特権だ。

ダミアンは後者に分類された。「価値を否定された」わけではない。「使っていい側の人間」として分類された。値踏みされ、値札を貼られ、リソースとして運用される側に置かれた。


照がダミアンに任務を振るという行為には、三つのものが同時に踏み越えられている。

合意していない上下関係。契約していない義務。そして、ダミアンの意思決定権。

これは命令ではない。「お前は使っていいリソースだ」という前提の、一方的な押し付けだ。権限構造を捏造された、と言い換えてもいい。

そしてここが重要だが、仮にダミアンがこれを自ら受け入れたとしても、結論は変わらない。抵抗しても従っても、値札は貼られたままだ。


さらに、この任務には層がある。

シーズン2第五章より・実装直前の照の予測不能な不確定要素に対する評

ゲームのロア上、照はかつてポーセルメックスの一社員に対して、なんらかの加害を匂わせる一線を越える行為をしている。その事実をダミアンは知らない。知りえない立場にいる。彼は自分の会社の社員がすでに一線を越えられていることを、表の情報として持っていない。

「照はダミっちに任務を振った」——これは、その裏の一線がとうとう表に出た瞬間だ。水面下で越えられていたものが、今回初めて可視化された。


ここまで、ダミアンが一方的に値札を貼られる過程を書いてきた。ただ一つ、手放せない記憶がある。

照のキャラクターEP「Tiny Giant」でのダミアンだ。

彼は動画の中で、下っ端として、秘書として、カメラマンとして、バックダンサーとして動いていた。そのどれも、楽しそうに見えた。あのロールを心から演じている男に見えた。

同時に、こう読むこともできた。これは戦術的な従属だ。いつか噛みつく機会を伺いながら、今は下っ端を演じている。そういう解釈が、十分に成立した。

そして彼は、照の手帳のアイコンに色を塗っていた。カラフルな照のアイコンの隣で、自分のネクタイだけを黒く塗りつぶして。

楽しい深読みができた。あの頃は。




ダミアン・ブラックウッドというキャラクターを、ゲームを知らない人のために軽く説明する。

野心を持ち、自分の頭で動き、誰の駒にもならないために立ち回ってきた男だ。ポーセルメックスCEOの座に最も近い位置にいた人間。主体として生きてきた。

だから値札は、単なる侮辱ではない。存在の否定に近い。


「照はダミっちに任務を振った」。

公式の描写はそれだけだ。ダミアンを疎外する意思があったとしても、そこに悪意があったとは思わない。おそらく無自覚だ。

それが、より深刻だと思っている。

いいなと思ったら応援しよう!