マドンナの消しゴムに書いてあるのは俺の名だろう
ガラガラと立て付けの悪いドア特有の音を出しながら教室に入った。
席につけば、俺の気分は最高に上がる。
なぜなら、隣の席にはこの学校を代表するマドンナ「佐々木さん」がいるからだ。俺は、席替えを通してこの人生の中で最も幸福な時期を過ごしているのかもしれない。
ガラガラと再び立て付けの悪いドアが開いたので、そちらを見れば佐々木さんがいた。
爽やかに挨拶を交わす姿は、僕らに幸せをばら撒いていると言ってもいい。
「おはよう。佐々木さん」
「おはよう」
挨拶を交わした後に、授業の準備をする佐々木さん。
机の上に出されたペンケースを見ると、びっくりすることに俺と同じ黒色のものを使っていた。
これはこれはお揃いじゃないか。ひょっとして、俺に気があるのかと少々気持ち悪い考えをしたが、続いて佐々木さんはペンケースから俺と同じ青色のシャーペンを出し、続いて白色の消しゴムを出した。
ここまで、来るとさすがに本当に俺のことを意識しているのではないかと疑いたくなる。
だから、聞いた。
「佐々木さん、俺と同じ文房具使ってるね」
「え、あ、うん」
佐々木さんは、どこか顔を赤くして俯いた。
ーーーーー
授業が始まり、先生の言葉に耳を傾けていたが、時折佐々木さんの方を見た。
すると、消しゴムに何やら文字が書いてあるのが分かった。
俺はピンときた。消しゴムに人の名前が書いてあるとしたらそれは好きな人と付き合うためのおまじないだと。
そして、さきの会話での佐々木さんのあの表情。
自分の中で納得がいった。ならば、後は確認をしなければと思い、授業なんてそっちのけでずっと佐々木さんの消しゴムに意識を割いていた。
すると、佐々木さんは俺の視線に気が付いたのか消しゴムをペンケースに入れた。
これは、確信していいのではと思い、俺は心の中でワールドカップ優勝を飾ったメッシの如く喜んだ。
ーーーーー
真相は闇の中だったが、もしもあそこに書いてある名前が俺でなかったならば、さぞ落ち込むことになるだろう。だから、期待をするだけでいい。
学校のマドンナ佐々木さんの好きな人は俺である。
そう自己完結して、ウキウキで家路に着いた。
完
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