オーレリオン 《詩》
女はどうしてもオーレリオンに行きたかった
真夏の夜 オーレリオンへの最終列車
黄色い灯りのもと ぎゅうぎゅう詰めの人
女の乗る場所はない
夜の青の中を列車の黄色い灯りが駆け抜けてゆく
女は列車の後ろ姿をじっと見つめた
それが小さな点になって見えなくなるまで
『今日も駄目だった』
女に疲れの色が滲む
帰りかけたその時
ホームに一台の車両がゆっくりと入ってくる
まるでほったて小屋のようなボロボロの車体
《臨時 オーレリオン行き》
女はためらうことなく列車に飛び乗った
ひょっとして黄金の立派な列車にでも
見えたのだろうか
人は誰も乗っていない
と 座席に一人の男の影
「私と遊ぼう オーレリオンへ行きたいのなら」
と影は言う
右の車窓から 三角の木々の連なるパノラマ
どんどんと流れてゆく
左の車窓から 三角屋根の家々並ぶパノラマ
どんどんと流れてゆく
女は夜じゅう 影と語らい はしゃぎ戯れた
影は次から次へと技巧をこらし
魔法をかけた
ハーブのような甘い香り
トロトロした液体
妖しげな手つきで
ギターのトレモロ奏法
アルハンブラの思い出
女は恍惚として影を見つめる
蒸し暑い夜の遊びに
女のからだは汗ばんで
発する匂い
不可思議の
けだるい吐息
夜も深まり深まる頃
ついに女は頭の奥が痺れ
ゆるやかに痙攣を起こして
床にどすんと倒れ込んだ
背を反らして 半分白目をむいて
意識が 朦朧と してくる
声もなき声
(列車の音にかき消され)
なまめかしく喉を鳴らし 宙を見つめ
小さな世界がキラキラと煌めいて……
キラキラと煌めいて……
影は女に覆いかぶさり耳元で囁く
「オーレリオンへようこそ」

