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第3部 最後の貸し手

$1.25兆の外側 —BNPLというファントムデット—
※このシリーズは、公開資料を一つずつ読み解きながら市場の構造を追う
全5部構成です。

  • ☑ 第1部 ファントムデットという幽霊債務(公開済)

  • ☑ 第2部 AAAという洗浄装置(公開済)

  • ▶ 第3部 最後の貸し手(この記事)

  • □ 第4部 貸し手だけが知っている景色

  • □ 第5部 前科は繰り返されるのか


第2部では、AAAという格付けが
何を根拠に付けられているのかを見てきた。

格付け機関が見ているのは、
借り手一人ひとりの全体像ではない。
過去のローンプールが、
どれだけ損失を出したのか。
その統計モデルだ。

では、そのAAAを誰が買っているのか。

今回は、その話だ。


「最後の貸し手」は誰なのか

BNPLの利用者が、商品・サービスにお金を使う。

Affirmが、その代金を店舗に立て替える。

Affirmは、そのローンを証券化して
機関投資家へ売却する。

では、その機関投資家とは誰なのか。

保険会社・年金基金・資産運用会社。
彼らこそが、この市場の「最後の貸し手」だ。

消費者は、自分がお金を借りている相手を
Affirmだと思っている。

だが、少しだけ視点を引いてみると、
そのお金の出どころは別の場所にある。

私たちの保険料かもしれない。
将来受け取る年金かもしれない。
最終的な資金の出し手は、私たち自身である可能性もある。


なぜ、買うのか

保険会社や年金基金は、
年6〜7%程度の利回りを必要としている。
だが、国債だけでは、その目標を達成することは難しい。

そこで、より高い利回りを持つ証券化商品に目を向ける。

BNPLのABS(資産担保証券)も、その一つだ。

もちろん、彼らは無謀な賭けをしているわけではない。

そこには「AAA」というお墨付きがある。

「AAAなら大丈夫だろう。」
「AAAなら規制上の資本負担も軽い。」
「同じAAAなら、少しでも利回りが高い方が合理的だ。」

こうして、BNPLのローンは、
機関投資家のポートフォリオへと組み込まれていく。


誰も間違ったことは言っていない

ここまで読んで、
「誰かが騙している」という話に見えたなら、
それは少し違う。

Affirmは、「成長」を見ている。
DBRSは、「格付け条件」を見ている。
機関投資家は、「AAA格付け」を見ている。

そのどれもが、本当だ。

問題は、
それぞれが自分の持ち分だけを見ていることにある。

Affirmは、自社のローンを見る。
DBRSは、過去の損失データを見る。
機関投資家は、AAA格付けが生む利回りを見る。

だが、
この借り手が他社でいくら借りているのかという
「全体像」を、誰も見ていない。

第1部で見たファントムデットは、今もそこにある。

それでも、お金は流れ続ける。

なぜなら、最後にお金を出してくれる人がいるからだ。


「最後の貸し手」は、いつも遠くにいる

BNPLの利用者から見ると、
借りている相手はAffirmだ。

Affirmから見ると、
資金を出してくれるのは機関投資家だ。

機関投資家から見ると、
それはAAAの付いた一つの金融商品に過ぎない。

一人ひとりは、ほんの一部しか見ていない。
だからこそ、市場は驚くほど長い間、回り続ける。

2008年のサブプライムローンも、そうだった。

誰か一人が嘘をついていたから壊れたわけではない。

全員が、自分の見えている景色だけを信じていた。

今回も、同じ構図に見える。


だが、この構造の中で、
一人だけ他の誰にも見えない景色を見ている存在がいる。

BNPLにお金を貸している、そのさらに上流側だ。

第4部では、その「貸し手だけが知っている景色」を見ていく。

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