4時44分を乗り切る方法
明け方、4時44分の時計の表示を見た人は、死んでしまう。
その人は朝を迎えることができず、教室の席には花が飾られる。
そんな噂が小学校1年生のクラスでまことしやかに流れていた。
当時は、4時44分なんて起きている時間ではないというのと、4=死に結びつける発想もあり(ホテルや病院で4が使われていないのも不気味だった)、これは本当のことだと思っていた。
「ぜったい、4時44分を見ないようにしようね!」
そう、友達と言い合ってたものだった。
そんなある日。
ふと、目が覚めてしまった。
まだ、あたりは真っ暗だった。
うちは畳で父・母・弟と私の4人、並んで布団を敷いて寝ているが、3人ともぼんやりとしか見えない。
畳からはテレビの下のデジタル時計が小さくオレンジの光を放っていた。
何時だろう…
目を細めてみる。
…途端に身震いした。
時計に、「4」のデジタル文字が、ぼうっと灯っているのが見えたからだ。
しかし、もっと目を凝らして、私は安心した。
オレンジの光は4:24と灯っていた。
なんだ。24分か。私は並んで寝ている家族の隣で横になり、布団を頭からかぶって、ぎゅっと目を閉じた。
しかし、先ほどの一瞬の恐怖からなかなか抜け出せず、目が冴えてしまう。
とりあえず、そのまま目を閉じることにした。
早く、4時44分になる前に、早く眠くなってくれ…!
焦れば焦るほど、眠りは遠ざかってしまう。
とりあえず、頭の中に羊を召喚して、数えることにした。
1匹、2匹、3匹….羊はどんどん柵を乗り越えていく。
だんだん、先ほどの恐怖心も鎮まってきた。
このまま、眠くなりそうだ…まぶたが少しずつ重くなっていく。
そう、思っていたとき。
「ポッポ!」がちゃん
この音で、私は跳び上がってしまった。
なんの音かはわかってる。
鳩時計だ。
ちょうどの時と、半の時に扉から出てきて、今の時間を教えてくれる。そして、今、4時半になったのだろう。
私は、このポッポの後の「がちゃん」と、扉が閉められる苦手だった。昼であっても「がちゃん」を聞きたくなくて、ポッポが鳴いてる時にあらかじめ耳を塞いでいた。
しかし、油断してた。
深夜も変わらずポッポは「がちゃん」と扉を閉めるのである。
「がちゃん」が耳に残ってしまう。
いよいよ、目が冴えてしまい、眠れなくなった。
このままでは、4時44分に…
そうなったら私は死んでしまう。おしまいだ。
でも…小学1年生の私は、その小さい頭で考えた。
4時44分を、見なければいいのである。
4時45分になれば、大丈夫なはずだ…。
4時半から4時45分。
小学1年生の15分。それは永遠だ。
2時間目と3時間目の間、15分休みがあった。
1回中庭で遊べるほどの時間がある。
そして、14分だとダメなのだ。死なのだ。15分経ったことを確認してから寝なくてはならない。
目を瞑っては、少し起きてリビングのオレンジの光に目を凝らした。
4:34
4:37
4:39
4:42
4:43…
(今だ!)
私は、布団をかぶってこの1分間をやり過ごした。
そろりそろり…と起き上がり、またオレンジの光に目を凝らす。
4:45
(やった!)
助かった…。
本気で胸を撫で下ろした。
こうして、私は、4時44分との戦いに勝利することができた。
この勝利のおかげで、私は今、35歳まで生きながらえてここにいることができる。
しかし…実は。
今でも4時44分をみるのが、ちょっとこわい。
死んでしまう、と本気では思ってない。
でも、この4時44分をみると、いろいろな怖い不吉な考えが浮かんで、眠れなくなってしまう。
大人になると、怖いものは減らない。
むしろ、守るべきもがあると、怖いものがもっと増える。
不吉で、不安になってしまうのだ。
しかし、私は大人だ。
こういう、なんとなくの不安、恐怖に対処する方法を持っている。
それは…とてもエッチなことを考えることだ。
私が考えるエッチなことなんて、たかが知れている。(多分)
でも、不安、死の恐怖というのを忘れることができる。
なんでだろう?
エロスは、死の対極にある。
りっしんべんに生きると書く。生きることだ。
過剰に生きることに、自分を強く持っていく。
引っ張っていくことで、きっと、死のことを忘れることができるのだ。
私は創作ができるから、官能小説を書いてみることにした。
自分が考える、最大のエロい小説だ。しかも然るべき時が来たら公開しようとしている。(かどうかは迷ってる。)
でも、自分で書いた官能小説はすごく気に入っている。
読み返したら、いつでも死の恐怖から一時的に逃れられるのだ。
4時44分がこわい。
どうにか乗り切りたい。
そんな大人の方がいたら…ぜひ試してみてほしい。
私が本気でおすすめする、ライフハックである。
(了)
読んでいただきありがとうございました。
そして、4時44分に打ち勝ちたいけど、自分で官能小説を書くのは難しいというお方は、路地裏出版の「#なんのはなしですか」シリーズ「私がいないとダメね編」をお勧めします。
ユーモアや愛おしさあふれる、18禁エッセイで満載です。思わず「 #なんのはなしですか 」と呟いてしまいました。
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