【掌編小説】Bar はたらくくるま(#AIとつくってみた)
文:亜麻布みゆ
挿絵:Gemini
人の喧騒に危うくかき消されるほどの声だったが、私は頷いた。人のかたまりから二人で連れ立って離れたところで、吉村は糸目をさらに細めた。
「ちょっと、行ってみたいところがあってん」
手を引かれるかのように路地から一本入ると、大通りの喧騒からは考えられないほど静まりかえっていた。道路は先ほど降った雨で少し湿っている。その中に、ぼんやりと灯りがともっていた。

その外観に、思わず声をあげた。
「わあ! 絶対好きなやつ! よく見つけたねこんなとこ」
「せやろ? 好きそうやろなあと思って」
中に入ると、さらに胸が高鳴った。

「すごーい! どこもかしこもくるまだらけ!」
店内をゆっくり回りたい気分だったが、まずはカウンターに二人で座った。
バーテンダーが微笑んでメニューを手渡した。

はたらくくるまをイメージしたカクテルが作られるようだ。
「じゃあ、消防車で」
「俺はショベルカーで」
「かしこまりました、まずは消防車からお作りいたしますね」
バーテンダーは、シェイカーをシャカシャカと楽しげに振っていた。
「はたらくくるま」のジャズアレンジの音楽に身を任せていると、吉村が話しかけてくる。
「自分……いつから好きなん?」
「えっ……あ、はたらくくるま? 主語言わんかい!」
「目的語やろ」
「どっちでもいいから! あのねー、実は大人になってからね」
「へー……」
「友達の子どもの相手してたら、色々な色がかわいいなあと思って」
「単純やなあ……」
「やかましわい!」
「お待たせしました。消防車のカクテルでございます」

「わわ!すごい、かわいい!」
燃えるようにパチパチとするスパークリングカクテルを口にすると、クランベリーの甘酸っぱさとピリッとした辛味が口の中に広がった。
「おいしい……癖になりそう……」
「へー……それはなによりやわ」
「お待たせしました、ショベルカーのカクテルでございます」

「こちら、マンゴーをベースにしています。ただ甘いだけじゃなくて、ショベルカーのどっしり感を出したくて、ヘーゼルナッツを少し合わせてます」
吉村が細目を見開く。
「この上に乗ってるショベルカーは……」
「もちろん、お持ち帰りいただけます」
吉村はショベルカーのカクテルに口をつける。
「おいしい?」
「黙っといて。味おうてんねんから」
時々、彼は目をつぶってるのか開けてるのかわからない時がある。
「吉村くん?……口の周りについてんで?」
「え? うわ! ほんま?」
「……うそやで」
「なんやねん! うっとうしいわほんまに!」
そう言いながらも、指で口を拭う仕草をする。
「……引き継ぎはもう終わった?」
「ああ……さすがにな。3日前やし」
吉村はうつむいて、カクテルの入ったグラスを揺らしていた。
「どうして……連れてきてくれたの?」
「悪かったなあ思って。ハードな案件ばっかり引き継いで」
「いいよ。仕事だし」
「そういうてくれるとは思ったけど……」
「炎上案件見ると、燃えるから、こっちも」
「消防士やな」
「そう、燃える消防士」
「消防士は燃えたらあかん、って飲むの早いな、何飲む?」
私はバーテンダーに向き直った。
「じゃあ、救急車お願いします」
「かしこまりました。お作りします」
私はあることに気づいた。
「その、シェイカーって……ミキサー車ですか?」
バーテンダーが口の端を緩める。
「よく気づかれましたね」
「そりゃ気づきますよ……使いづらくないんですか?」
「慣れてますから」

やがて、救急車のカクテルが運ばれてきた。

ヨーグルトがベースになっており、すっきりと甘くて飲みやすい。ほてった頬がひんやりとした。
「次は、どんな仕事するの?」
「聞く? ベンチャー。友達がやってるところでな、一緒に役員やんねん」
「へー! すごい、どんな会社?」
「簡単に言うとスーパーのカーナビみたいな」
「え、何それ?」
「カートにタブレットがついてて、必要な材料の場所教えてくれんねん」
「すごい便利そう! 確かに迷うよね」
「足悪かったりこどもおる人やとさらに大変やろ」
「その利用した人のデータって捕捉できる?」
「できる。この行動経路とか迷い方とか、いいデータになると思うねん」
そう言いながらショベルカーのカクテルを口にする。いつになく、彼は饒舌だった。
「……忙しくなるね」
「まあ、今が頑張り時やから」
「そうやな、私も頑張らなあかんわ」
「エセ関西弁が」
吉村は笑い、そして少し黙った。私も喋ろうとしたけれど、口の中の甘さが溶けていってしまいそうで、何も言えなかった。
(了)
読んでいただきありがとうございました!
「 #AIとつくってみた 」コンテストへの応募作品です。
飲み物の画像を下記のように出して作ってもらっています。

外観は、ちょっと苦戦しました。

はたらくくるあ、になっているのを直しました。

無人にしてもらいました。

画像のイメージから、私が物語を考えて作りました。
AIの画像から物語を考えるのはとても楽しい経験でした。
引き続きよろしくお願いします。
いいなと思ったら応援しよう!
チップのご検討、ありがとうございます。
3歳児を育てつつ、スキマ時間に創作を続けています。
いただいたチップは、家事の時短や創作時間の確保に使わせていただき、より楽しい文章をお届けする力に変えていきます。応援が本当に励みになります。