【掌編小説】サイゼはミラノに限る
【緊急募集】簡単作業で高収入!履歴書不要/1件最大50,000円可!
Xの募集要項に書かれた、いかにも怪しげなアルバイトだったが、背に腹は変えられない。いざとなったら逃げればいい。俺はテレグラムで「リョウ」と名乗る男とやり取りをして、集合場所へ向かった。
卒アル持参
なぜかそんな指定があったので、俺は中学卒業後一度も開いていない埃を被った卒アルを、穴の空いたボロボロになったカバンに押し込んで持ってきた。
集合場所に着いて暇を潰していると、
「レン君だよね?」と背後から声をかけられた。
見るとヒョロリと背の高い、よれてくすんだ黒ジャケットにジーンズの男が立っていた。年のころは20代前半だろう。あまり清潔感があるとはいえず、顎の周りには無精髭が生えていた。
「は…はい、レンです。…リョウさんで…」
俺がそう言いかけると、
「シッ!声が大きい。」と睨まれる。
「いいか、到着するまで一言も声を発するな。一言でも周りにとっちゃ情報なんだ。俺らは情報を商売としている。」
リョウは顔を近づけた。低い声は、周りにかき消されて、俺だけにしか聞こえないようだ。
「5mぐらい後ろからついてこい」
リョウの指示に従い、なるべく近づかないように、かつリョウの姿が見えなくならないぐらいの距離で追いかけた。
到着したのは、集合場所から20分ぐらいの、古いアパートの一室だった。ギイイと音を立ててドアが開かれると、男子更衣室のような匂いが広がった。中には俺と同じか年下ぐらいの少年が数人、ヘッドセットで電話をかけていたところだった。
玄関を上がるなり、リョウはまたこちらを睨みつけてきた。
「わかってると思うけどな。この場所は他言無用だ。」
「わ…わかりました。」
そう言うと、急にリョウは目尻を下げて別人のような笑顔になった。
「ごめんごめん、レン君。怖がらせちゃったね。あははは。普通にお仕事してくれればいいから。普通に。」
「は…はい。」
「レン君はイケメンだね。なになにお仕事探してたの?」
「はい…Xで……。」
「そっかそっかー。うち、稼げるからね。バンバン働いてくれると助かるなー。あ、そうそう、卒アル持ってきてくれたー?」
俺は急いで鞄から卒アルを取り出し、リョウに差し出した。
「さっすが。できる男だねー。ちょっと借りるねー。」
リョウは卒アルをパラパラとめくり出した。
「あ、これレン君?3年2組だったんだあ…うわあ変わってないねーあははは。」
「は…はい。」
リョウの表情をよく見ると、目が笑っていない。
先程の睨みつける表情とはまた別の、真顔だった。
「ねえ。この中でさ。」
「はい」
「片っ端から、電話かけれる?」
募集要項を見た時から、この部屋に足を踏み入れた時から、察していたはずだった。そしてそれが何を意味するかぐらい、俺にはわかっていた。
闇バイト。
古くはオレオレ詐欺と言われる、特殊詐欺への加担。
特殊詐欺は大規模なグループで行っており、掛け子と呼ばれる末端が捕まるが、そのトップはいまだに姿を表さない。
俺は金がどうしても必要だった。
数年前、親父と離婚した母親は、濃い化粧をして新しい男と遊び呆けていた。男は俺が邪魔だったのだろう、たびたび俺を殴ってきた。
彼氏にぞっこんの母親は、俺の味方をしてくれなかった。
すぐに家を出たい、のに、家の貯金は底を尽きていた。
手っ取り早く稼がなければ。
「…わかりました。」
俺はリョウから卒アルを再び受け取った。
そして、卒アルをパラパラめくり、彼らの住所や電話番号が書いてあるリストを探した。
しかし、そのリストはどこにもなかった。
「ない…?」
そう呟くと、リョウが鋭く目を光らせた。
その表情を見て、再び必死で卒アルをめくる。
先ほどまでヘッドホンで電話をかけていた一人の少年が、掠れた声で言った。
「あ、今ないんじゃないですかー?個人情報かなんかで。」
「ああ?お前は黙っとけ。さっさと次かけろ!」
リョウが苛立った様子で少年をどやした。そして卒アルを俺からひったくり、全体のページを見渡すと、
「ったく、せっかく中学卒業した奴いたから卒アル持って来させたのに、使えねえな。」
そう言って、卒アルを床に叩きつけた。バン、と冷たく硬い音を立てた。
「誰か、いねーのか?連絡取れるやつ!」
俺は中学卒業後、誰とも連絡を取っていなかった。LINEの友達リストもほぼ広告ばかりで、友達の名前はない。
いや、一人。いた。
ハルト。
友達ではない。俺の、目の上のたんこぶだった、アイツ。
なぜかハルトだけが、連絡先に残っていた。
震える手で、メッセージを送る。
久しぶり!元気?
すぐに既読になったが、なかなか返事が来なかった。
15分ぐらい経った後、ようやく通知が来た。
そのメッセージの内容から、俺は目が離せなくなった。
こんにちは。春翔の姉の沙耶と申します。
春翔は、先月、残念ながら永眠いたしました。
ご用がありましたら私が承ります。
衝撃だった。俺と同い年、この若さで?事故とも病気とも書いていない。
俺が呆然としていると、リョウが怪訝な顔をしていた。
「唯一連絡取れる…友達が、亡くなってました。」
リョウは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに下卑た笑みを浮かべた。
「死んだ人間ってのはな、使えるんだ。線香でもあげに行くふりして、そいつの情報を取ってきたらいい。なりすましに使える。」
俺は胸が引き攣りそうになりながら、姉のサヤへの返信を打った。
サイゼリアの明るい店内で待っていると、茶色い巻き毛が肩まである女性が近づいてきた。
「レン君ですか?」
「あ…はい。ハルトの…お姉さん?」
「うん、サヤでいいわ。」
そうして、サヤは俺の向かい側に座った。大学の講義の合間に来てくれたらしい。俺は思わず俯いた。ハルトとそっくりで居た堪れなくなった、というのもあるし…それに、驚くほどの美人だったからだ。
「ごめんね、家にあげられなくて。うちお母さんがさ、ハルトのことでまだショックを受けててさ、伏せってるの。」
サヤはわざと明るい声で言っているようだった。
「いえ…すみません、こんな大変な時に…。」
俺が言うと、サヤは首を横に振った。
「いいの。私も急なことで、中学の友達には伝えられてなかったから…レン君から連絡もらって、嬉しかったよ…ところでレン君、何頼む?お姉さんが奢ってあげる。好きなものを頼みな…まあ、サイゼでしか言えないことだけど。」
いたずらっぽく微笑む表情があまりにも愛らしく、俺はドキッとした。
「うわ…ありがとうございます、すみません…」
正直、遠慮する余裕もなかった。ここしばらくまともな食事ができていない。ましてや外食なんて、何年ぶりだろう。それでもメニュー表を見て、少しでも低価格なものを、と探した。
「あ…じゃあ、この、ミラノ風ドリアで…すみません」
「それでいいの?…そう、じゃあ、私も、同じものを。正直金欠だから助かったー!ってのは秘密ね。」
注文してから数分もせずに、店員がミラノ風ドリアを二人分持ってきた。
湯気がゆらゆらと揺れている。
「いただきます。」
置かれて即座にスプーンで掬う。ホワイトソースの部分とミートソースの部分、そして黄色いサフランライスが均等になるように掬い上げるのが重要だ。口に入れるとあまりにも熱々で思わず「はー」と言って口の中で冷ました。あったかい食べものは久しぶりだということに気づいた。最近は、菓子パンを少しずつかじって過ごしていた。
「レン君ってさ、猫舌?」
「ですけど…ちょっとあまりにもお腹すいちゃってて」
「…そう、いっぱい食べな。」
サヤは俺とは違い、ゆっくりとスプーンを持ち上げた。ホワイトソースから少しずつ、ふうふうと息を吹きかけながら食べている。
「サヤさんも猫舌ですか?」
「そう、あんまり食欲なくて。」
サヤは少し寂しそうに微笑んだ。やはりハルトのことを気にしているのだろうか。それでも俺は食欲には勝てず、ミラノ風ドリアを一気に平らげてしまった。
「あー旨かった、ごちそうさまでした。やっぱり、サイゼはミラノに限る!」
突然、サヤの表情が変わった。
はっとしたような、驚いた表情だった。
「レン君、今なんて言った…?」
「え…サイゼはミラノに限るって…。」
「さんまは目黒に限る、みたいに言うな!」
サヤが突然、セリフのように言葉を発した。
それを聞いて、俺もハッとしてしまった。きっとサヤと同じ表情をしていただろう。
「さんまは目黒に限る、みたいに言うな!」は、俺が中学時代、ハルトに向けて突っ込んだ言葉だったからだ。
「どうして、それを…」
ハルトは俺なんかとつるむような奴じゃない。イケメンで、運動もできて、彼の周りにはいつも人がいた。女子にもモテた。いわゆる一軍ってやつだ。
もちろん、ハルトは勉強もできて、学年トップの成績だった。俺は勉強だけはハルトに負けるまいと必死だったが、良くて2位。ハルトの上だったことは一度もなかった。そういう意味で、目の上のたんこぶだった。
ハルトと初めて話したのは、中学の運動会の打ち上げの時だった。クラスの半分以上が集まって、サイゼリアで何席かに分かれて「ソフトドリンクの飲み会」をした。いつもとは違う、男子も女子もどこか浮かれた雰囲気だった。
そんな時、ハルトと隣の席になった。それぞれの親もこの打ち上げを黙認しているらしく、いつもより多めの小遣いを渡しているようだったが、俺とハルトは違った。
「ハルト君とレン君、ミラノ風ドリアだけでいいの?」
各々、多めのお小遣いでハンバーグやパスタ、ピザを組み合わせて頼む中、俺たちがミラノ風ドリアを注文すると聞いた時、取りまとめる女子が怪訝そうに聞いた。
そんな時、ハルトが言ったのだ。
「うん。サイゼはミラノに限る!」
その時、俺は初めて話すハルトに反射的に突っ込んでしまった。
「さんまは目黒に限る、みたいに言うな!」
しまった。完全に滑ってしまった。このテーブルがしんとなっている。誰もわからないようだ。
しかし、一瞬ののち、ハルトが笑い転げた。
「あっははは、何それ!何かわからないけど、めっちゃ面白い!」
ハルトの完全にツボに入ってしまったようだ。
「ねえ…さんまの目黒って何?教えてよ!」
彼があまりにも興味津々なので、俺はかいつまんで説明した。
落語で「目黒のさんま」という演目がある。ある偉いお殿様が当時農地だった目黒に鷹狩りに出かけたところ、百姓にサンマを焼いてもらう。そのサンマの味が忘れられず、大名屋敷でもサンマを焼いてもらうが、殿様向けに丁寧に骨抜きをして調理されるため全く美味しいと感じられず、殿様が「さんまは目黒に限る」という…という話だ。
「へえ…落語って聞いたことないけど、面白いんだね。」
「親父がよく小さい頃から連れてってくれてさ、詳しいんだ。」
離婚前の親父は、落語鑑賞が趣味で、よく寄席に俺を連れて行った。幼い頃はなぜ周りが笑っているのかわからなかったが、次第に意味がわかるようになると面白く、自分でもCDや動画を聴くようになったのだった。
「サイゼはミラノに限る」事件(?)があってから、ハルトと俺はよく話すようになった。しかし、二人セットだからって、ハルトの人気が俺に流れてくるわけでもない。何かにつけて、ハルトばかり褒められる。
そのことに嫌気が差していたのだろう。
自分の家庭の事情もあって、卒業後、ハルトへの連絡を絶ったのであった。
「レン君、だったんだね…。」
サヤは美しい顔をゆがませて、涙を流していた。
「ど…どうしたんですか…どういうことですか…」
「あの子は、笑ってた。」
「えっ?」
「あの子の病状は、悪くなるばかりだった。きっとつらいことも、痛いこともたくさんあっただろうと思う。それなのに、お見舞いに行くと、いつも笑っていた。すごく笑い転げてる時もあったり…フフフって笑ってる時もあったり…何をしてるのかと思ったら、イヤホンで、いつも、落語を聞いていたの。」
俺は息を呑んだ。
「落語なんて、いい趣味ね、って言ったらさ。教えてくれたやつがいるんだって、サイゼリアの…目黒のサンマの話をしてくれた。でもね、誰のことなのか聞く前に…あの子は息を引き取ったの。」
「それで…その話を…」
彼女は、晴れやかな表情で向き直った。長い睫毛に涙が雨粒のように光っていた。
「だからね、今日、会ってくれて、本当にありがとう。お母さんにも伝えるね。今度、落ち着いたらまたうちに遊びにおいで。」
その表情を見たら、俺は何も言えなくなった。
あんなところからは、もう、逃げよう。
あのバイトは、もう、やめよう。
テレグラムから何度か連絡が入っていたが、ここ数日ずっと無視している。
しばらくは、家に引き篭もることにした。
そんな時、家のチャイムが鳴って、珍しく家にいた母親が応答した。
「レンー、なんか、職場の人が来たわよー。」
俺はギョッとした。インターホンを覗くと、リョウがあの時とは異なる、ピシッとしたスーツ姿で立っているではないか。
「ダメだ…!出ちゃダメだ!」
「えー?でもアンタ、いるって言っちゃったわよ。ダメじゃない、職場の人なんだから出なくちゃ」
母親が事もなげに言ったので、背筋が凍りついた。
母が玄関を開けると、今までになくにこやかな表情でリョウが挨拶した。
「申し訳ございませんお母様、レン君がここ最近職場に来られないので、体調を崩しているのではないかと心配で…」
「あら、そうですか…それは、ご迷惑をおかけしました。レン、レン、ダメじゃない。就職したんだったらちゃんと仕事しなくちゃ…」
俺はよそゆきの表情をした母親から押し出される形となった。
扉が閉じられた途端。
後頭部を打たれ、あまりの痛みに俺は気を失った。
遠のく意識の中で、こんな声がした。
「場所を、変えよう」
どのぐらい気を失っていたのだろう。
後頭部の激しい痛みで吐き気がした。目を開けると、薄暗い倉庫の中のようだ。見たこともない木やドラム缶などが積まれていた。
変なところに連れてこられてしまった。
逃れようとして、俺は手足を縄で拘束されていることに気がついた。
起き上がることができない。
リョウが起きあがろうとする俺をせせら笑った。
「ごめんねー手荒な真似して。うちのルールでさ、逃げようとしたらこうしないといけないんだよねーー。」
そう言って俺の下腹部を思いっきり蹴った。
「う”っ…!」
激しい痛みに、呻き声が出てしまう。
「まぁ…君はねー使えそうだから。これくらいにしとくよ…あの子、サヤちゃんだっけ?」
血の気が引くのがわかった。
「なんで…その名を…」
リョウが拘束されている俺に顔を近づけてくる。
「美人さんだよねーーあの子とやらせてくれたら…」
その言葉に俺は激昂した。
「サヤさんには手を出すな!!」
近づいたリョウの顔に思いっきり頭突きした。
「イテっ!」
思ったよりヒットしたらしい。リョウはよろけて俺から離れた。
そしてしばらく手で顔を押さえていたが、すぐに不敵な笑みを見せた。
「そっかー、残念。じゃ、遠慮なく。」
リョウは、鉄の棒を拾い、思いっきり俺に向かって振り上げた。
見上げた先から棒が降りてくる。
その瞬間だった。何かものすごく鈍い音がした。
「うわあああああああ!!!」
大声を上げたのは、リョウだった。
気がつくと、リョウが床に、鉄棒と共にうずくまっていた。
何が起こったんだ?
倉庫に積んであった木材が倒れてきて、リョウの背中を打ったようだ。
「今だ!」
掠れた声がして、少年2人がリョウを取り押さえた。
そして、1人が俺の拘束をはさみで切った。
「もう警察は呼んだ。俺らも色々聞かれると思うけど…もう、大丈夫。」
程なくして、パトカーのサイレンが聞こえて、何人かの警察が入ってきた。
リョウに手錠をかけ、俺たちも署に連行されて事情を聞かれた。
俺は罪を犯す前の段階だったので、厳重注意を受けたが、同時にリョウ逮捕への協力に感謝された。
後日、リョウは顔写真付きで逮捕のニュースが報道された。実名は全く異なる名前だったが、顔写真は画面越しにこちらを睨みつけていた。
パトカーが来る前に、少年からこんなことを聞いた。
「頭の中で、あいつを助けてやってくれ、って声がしたんだよ。」
「え?」
「気のせいかと思ったけど、他の2人も同じことを聞いた…って、だから、助けることにした。」
顔が熱くなった。
…ハルト、お前なのか…?
(そうだよ)
─え?
(サヤ姉を、気にかけてくれてありがとう)
─お前…
(僕は、君と話してる時が一番楽しかった。)
涙が込み上げてきた。
─ハルト、実は、俺もだ。
(生きてたら一緒にしたかったことが、たくさんある。)
─例えば?
(例えば…を、これから一緒にしてくれる?)
数年後、俺はなぜかR-1の決勝戦を控えていた。
俺、というより、俺たちは。
俺の目の上のたんこぶだったハルトは、本当に目の上のたんこぶのようにいつも頭の中で話しかけてくる存在になった。
そんなハルトが(君と漫才を組みたい)と言った。
最初は無茶言うなよ、と思った。幽霊だぞと。しかし彼は本気らしい。
(絶対ウケるから)
半信半疑だったが、ハルトと普通に会話のような漫才をしていたら周りの人が笑っている。ハルトの突飛なボケは周りには見えないが、俺のツッコミだけでどんなボケだったのか、わからないが想像の余地があって面白い、それが斬新だと評価されていた。
しかし、漫才のようで見えているのは俺一人だ。そのためM-1ではなく、R-1を目指すことになった。そして、初出場でどこの事務所にも所属していないのに、なぜか決勝まで来てしまった。
ーまさか審査員に賄賂とか渡した?
(僕らの時だけ魔法の粉振りかけた)
ーハッピーターンのティンカーベルか!
サヤは社会人として都内の通信会社で事務をしていた。ハルトとの漫才を見てくれていて、その度に目の端に涙を浮かべて笑っていた。サヤはこの頃、以前にも増して美しくなっており、たびたび見とれた。
ハルトはこんなことを言っていた。
(サヤ姉が幸せになれるか僕は心配なんだ)
─いや美人だし普通になれるだろ。
(わかってないな、だから心配なんだよ。)
─俺が…って言ったら、どうする?
(…それは、本人に聞いてくれ)
─わかった。
このR-1で優勝したら、俺と付き合ってくれませんか、と言った時、サヤは
「優勝しないと、付き合っちゃダメなの?」と聞いてきた。
「…そういうことにしてください!絶対、優勝しますから!」
俺は強く押し切った。
そんな、今までのことを思い出していたら、もう次の出順だ。今出ているのは、数年前、コンビでM-1優勝も果たしている、有名な人だ。
その人は、控室で声をかけてくれた。
「初めてなんだ?まあ、僕もR-1決勝は初なんでね、変わんないっすよ。」
TVで見る舌鋒の鋭さの口調そのままなのに、優しい人だった。
その彼は、決勝で全観客を自分のものにしているように笑いを取っていた。
これがプロか…今までも、何度思ったことだろう。
(大丈夫、僕はドーピングしてるんだ)
ーいやなんの薬だよ
彼は審査員からも最高得点をつけられて、出順を終えた。
いよいよだ。
俺…とハルトは、中央に置かれたピンマイクに駆け寄っていった。
「どうも〜〜!サイゼはミラノに限る、で〜〜す!ん…?ん…?言うとしたら僕〜〜〜ってそれは真空ジェシカさんのネタだろっ!」
(了)7749文字
読んでいただきありがとうございました!
ヤスさんの「 #木曜日は3ースデイ 」の三題噺企画に参加させていただきました。素敵な企画をありがとうございました。
『幽霊』『卒業アルバム』『サイゼリヤのミラノ風ドリア』が、お題でした。一応、全部入っているかと思います!落語が好きなので、「落語」もキーワードにしてみました。
また、「闇バイト」を一つのテーマにしているため、調査の過程で闇バイトの危険性を知りましたのでシェアします。気をつけてください!
<私のサイトマップはこちら>
最後の方に出てくる優しくて面白い芸人さんは下記のお方をモデルにしています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
いいなと思ったら応援しよう!
チップのご検討、ありがとうございます。
3歳児を育てつつ、スキマ時間に創作を続けています。
いただいたチップは、家事の時短や創作時間の確保に使わせていただき、より楽しい文章をお届けする力に変えていきます。応援が本当に励みになります。