魅力「なし」の県|ショートショート
「全国都道府県の魅力を紹介!」の番組で、該当する魅力が「なし」と言われてしまったX県の知事は憤慨していた。
「なし、とはどういうことだ!」
副知事がそんな知事を宥める。
「まあまあ…魅力がなくたって住むのには困りませんから…」
しかし、宥められたところで知事の怒りはさらに増幅された。
「私は納得できん!なんとかしろ!」
副知事は、仕方なく調査を行い、ある伝説のマーケターと言われる有岡氏を顧問に据えることにした。有岡氏は、かつて破綻寸前のテーマパークや最果ての鉄道をV字回復させた有能なマーケターなのである。
有岡氏は、話を聞きながら、少し考えて言った。
「いっそのこと、"魅力なし"をPRするのは、どうです?」
「"なし"をPR…?」
「そう、ないことが、逆にいいんです」
知事と副知事は半信半疑だったが、有岡氏のいう通りに"なし”をPRすることにした。
「X県の魅力を見つけるのは、あなたが最初です」
こんなキャッチコピーをつけたポスターをネット配信した。
すると、驚くべきことが起こった。
全国から魅力を見つけようと観光客がやってきたのだ。
「特段魅力がないから安心できる」
「魅力をなんとか見つけようと躍起になって何度も来るがやっぱりない」
観光客からはこんな声が上がり、X県のリピータも増えた。
そして、X県は、観光収入で大いに潤った。
知事と副知事は特注の高いオーダースーツを着て、毎日料亭で食事をするので、ころころと肥えていった。
そう。
まさに、「なし」の甘い汁を吸っていたのである。
(了)
読んでいただきありがとうございました。
田原にかさんの「 #毎週ショートショートnote 」に参加しています。
お題は「 #該当作梨 」でした。
ちなみに伝説のマーケター有岡さんはこの話にもいます。
お仕事小説大好きです。長編を読んでみたい方はこちらもおすすめです。
改めましてありがとうございました!
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