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【小説】最終章 カッコウの子を巣に還す時 1【遠い銃声】

01 それぞれの嵐の前の静けさ

 (とうとうこの手できやがったか)

 青竜は心の中でつぶやいた。

 昼下がりの大学病院、青竜とマックスは診察室にいた。
 
 若い医師が重々し気に病名を話した。
 
 事件や事故で負った怪我で、今まで、何度も何度も死神が彼を迎えに来た。だが彼はその度にその手を振りほどき、逃げ出し、生きる者の世界に戻ってきていた。

 だが、今回は勝手が違った。業を煮やした死神は青竜にガンという病で彼を死の世界に引き込もうとしていた。

 早期発見。その言葉が青竜を微笑ませた。

(今回も逃げ切ってやる)

「手術が必要です」

「よろしくお願いします」

 青竜は頭を下げた。


 病院の駐車場から出た車の中で、青竜はマックスに言った。

「入院になってしまった、また迷惑をかけるが、すまないな、マックス」

 助手席にいる金髪のドイツ人は心配そうに見た。

「おい、大丈夫なのか」

 青竜は微笑んだ。

「早期発見だったのがよかった。やはり会社の定期健診は必ず受けておいた方がいいんだな、もっと重たいことを言われると思っていた。………奥さんが出産間近だったのに、すまなかったな、マックス」

 マックスは少し前に日本人の女性と再婚していた。

「わかった、手術と入院の際の保証人になればいいんだな、ああ、妻のことは気にすんな……」

 マックスは小さく言った。

「お腹の子は男の子だってさ…。ノアと21歳差になるのかな…笑えてくるよ、息子を失った俺がまた、息子を迎えることになるかもしれない……初めてではないのに、ドキドキするよ」

「そうだな、今度こそ、その手を離すなよ」

 マックスの初めての子であったノアは、ドイツのクリスマスマーケットでマックスの妻と一緒に自爆テロにあい犠牲になっていた。

「ああ、今度こそその手を離さない」

 マックスは少し微笑んで、拳を握った。
 


白夜は目を閉じ、自分の守護霊を呼ぶ。

「結城……」

 目の前に室町時代の武者の姿をした霊があらわれた。

「呼んだか…」

 いつもは鎧を着て現れる結城が、この日だけは、鎧を脱いだ着物姿で現れた。

「今日は鎧を着ていないんだな」

(もう…鎧は必要ない……お前のために刀を抜くということがなくなったから)

 彼は上(神)から、白夜を守るように命令された守護霊だという。そして、その彼が白夜の元を離れる時間が迫ってきていた。

「今日が俺の20歳の誕生日だよ。本当に20歳までの約束なの?もっと居てほしいよ」

(残念だが、約束は変更できない…それにお前は十分に育った。自分を守ることができる)

「いや、結城がいたから………」

 あまり笑うことのない結城がふっと笑った。

(何百年も悪霊をしていた俺を折伏して、守護霊にしたんだろう。元から力があった。だが使い方を知らないだけだ、お前は強い。これからは霊などという目に見えないものに頼らなくても生きていける。現世にも眷属がいるのだし)

「でも……」

(………そうだ、もうすぐお前から離れるから……ついでに少しだけ……、これからお前に訪れる危機について少しだけ教えておこう)

「……それはやはり、回避できないのか」

(ああ、お前のまわりに一時、味方がいなくなる…俺を含めてな、孤独…そこがお前の最大の試練となるのかもしれない)

 結城の笑顔が消える。

(その時の判断を誤るな。誤れば他の者が犠牲になるかもしれぬ)

「………孤独か……そして、他の者の犠牲…」

 その時、すっと結城の右脚が消えた。

(おっと、上が気が付いて消したな)

「結城……」


 白夜が驚いて、消えてしまった結城の右脚の付け根を見た。

(孤独に耐え、孤高に生きれば、お前はもっと強くなれるかもしれぬ)

「孤高に生きれなければ?」

(死ぬことはないが、上がもっと過酷な課題を持ってくるかもしれないな)
 その瞬間、結城の左脚も消えた。

「結城!」

(俺は業が残っているらしく、成仏はせず、また他の人間の元で修行をすることになっている。お前のいる世界にはいるが、もう二度とお前とは会えない。元気でな)

 まばゆい光が結城を包んだ。見ると結城は再び甲冑を着て、光の中に消えていった。

 「結城が消えた…」


白夜は後ろを振り向く。いつもいる結城以外の守護霊がきれいに消えていた。いつも必ず背後に誰かいたはずの者が一人もいなかった。

「あ……」

 白夜は胸を押さえた。

「いつも騒がしいと思っていた霊たちが消えた……少し…寂しいな……」
 結城以外で、背後にいた者たちの名前を呼んだが反応はなかった。

「……」

 白夜は震えた。

「え…、霊感のない普通の人間たちは。普段からこんなに寂しい思いをしているのか!」

 叫んだ。
              
                    
カッコウの子を巣に還す時 02につづきます。 


ぺこり

皆さま、いつも私の拙い小説を読んでいただきありがとうございます。
物語が最終に近づいてきました。
連載終了後に短編小説スピンオフを一作公開する予定です。
もしスピンオフを書くとしたら、どのキャラクターの物語を読みたいでしょうか?
よろしければアンケートにご参加ください。(回答は20秒くらいです。)


フォームが面倒な方はコメント欄でも大丈夫です。
皆さまの投票でスピンオフの主人公が決まるかも。
 
回答期限(最終章 最終話が公開されてから1日後予定)

ちょ、おま………彼は別世界では主人公でした……。

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