白檀
向かいから歩いてくる工事作業員の抱えた脚立が、朝の光のために真っ白に光って目が死ぬかと思った。おはようございますなんつって挨拶する作業員の声がはきはきしてて元気だなと思う。
信号待ちで隣り合わせた女のコートから白檀の線香の匂いがして友達のことを思い出した。いつもめがねをなくす彼女に首掛けのストラップを渡したことがあったけれど、彼女はそれさえなくしてしまった。風が吹き、開け放したコートを風がめくってさむく、横断歩道を渡った先にいたカンカン鳥が、ゴミ捨ての青いネットから引き摺り出したカップ焼きそばの皿に目がいく。目を逸らすと、怪獣みたいなビルのてっぺんを飛行機雲が線を引いていた。僕の目にはまださっきの脚立の痕が残ってちかちかする。
