迫ってくる命の期限【滅ぼされたユダヤの民の歌】
「いつ自分たちは滅ぼされるか」
刻々と追い詰められている様子が思い浮かびます。
新聞記事で書評を見かけて、気になって読んでみました。
戦後、2人の女性が収容所に埋められていたのを発掘して、出版されました。
日本語版が出たのは1999年。
※イディッシュ語で書かれています。よく日本語に翻訳したものだと感心しました。
しかも、詩として味わえる文体でです。
機械翻訳ではこうはならないでしょう。
※イディッシュ語…東ヨーロッパ出身のユダヤ人の言語。現在、話者の多数派は、超正統派ユダヤ人ですが、ホロコーストを生き延びた世代やその家族で話せる人がいます。
訳者あとがきで触れてましたが、習得に苦労した様子が伺えました。専門はドイツ思想なので、イディッシュ語は専門ではなかったようです。
・仲間や自分が滅ぼされていく中で
若いのは年月を経た枝にぶら下がった一房の葡萄、
年老いたユダヤ人はたっぷり寝かせた濃いワイン
俺たちはもっともっとユダヤ人が欲しい…
冷酷非道な強盗たちのような貨車だ
ユダヤ人を年齢によって葡萄やワインに、
強制収容所へ運ぶ貨車を貪り食う人間と例えています。
葡萄とワインで、幅広い年齢の人たちを表現していることに気がつきました。
無駄がなく、表現されていると感じました。
最初に殺される者たち、それは子供たちだった、
見捨てられた幼いみなし児たち、すなわち世界で一番素晴らしいもの、地上が、この暗い地上が所有している、最も美しいものだ!
著者の子どもたちへの想いを感じました。
かつてヘブライ語の私立学校を設立しました。
子どもたちの未来や教育に人一倍関心があったことでしょう。
更に我が子3人のうち2人は妻とともに強制収容所へ連れて行かれました。
生き残った1人の子どもと共に行動しました。
・外国へ行くはずが
ワルシャワ・ゲットー蜂起でゲットーから脱出した著者と息子。
著者が戦士として年を取っていってたのもありますが、仲間たちから生き証人としての役割を求められました。
ホンジュラス行きのパスポートを入手するチャンスに恵まれました。
しかし、入手予定だったユダヤ人の多くは殺されていました。
このパスポートが、秘密警察ゲシュタポに利用されました。
隠れているユダヤ人をおびきよせる手段として。
隠れていた著者と息子はその罠に引っかかり、収容所に送られてしまいました。
人生に「もしも」がないのは承知の上で。
「もしこの人たちが隠れ続けていたら戦後生き延びていたかもしれない」
「生き証人としてその後の人生を送っていたかもしれない」
そう思わずにはいられません。
・感想
「そもそも著者は生き残れなかったの?」
書評を読んだときの率直な感想です。
ほとんどの作品は生き残った人が書いてます。
例外は『アンネの日記』くらいで、それでも匿ってくれたミープ・ヒースが預かっていました。
収容に埋められていた草稿がよくドイツ軍に見つからず、かつ出版に尽力した人が見つけ出せたものだと驚きました。
命の期限が刻々と迫っている人の気持ちが伺い知れる作品でした。
以上、ちえでした。
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