夢のマイホームを建てて、半年後にシングルファザーになった。
夜のリビングに、娘の笑い声が響く。
「パパ見て!」
積み上げたブロックを嬉しそうに見せてくれる。
床にはおもちゃが散らばっていて、ソファには脱ぎっぱなしのパジャマが置いてある。
寝かしつけまで、あと少し。
そんな何気ない夜が、今日もこの家には流れている。
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この家は、注文住宅だ。
間取りを何度も考えて、壁紙を選んで、コンセントの位置まで悩んだ。
休日のたびに住宅展示場へ足を運び、「ここはこうしたい」「あれもいいね」と話しながら、少しずつ形になっていった。
完成した日。
玄関を開けた瞬間の新しい木の香りは、今でも覚えている。
まだ何も置かれていないリビングに立って、家族三人でここに暮らす毎日を思い描いていた。
そんな未来を疑ったことは、一度もなかった。
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でも、その半年後。
私の暮らしは、大きく変わった。
詳しいことは、まだここでは書かない。
ただ一つ言えるのは、思い描いていた未来とは違う毎日が始まった、ということだけだ。
家は変わらない。
住所も変わらない。
ダイニングテーブルも、ソファも、そのまま。
変わったのは、暮らしだった。
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最初の頃は、この家を見るたびに、完成した日のことを思い出していた。
玄関を開けたときの新しい木の香り。
何も置かれていなかったリビング。
あの頃思い描いていた景色は、もうここにはない。
それでも毎日は続いていく。
新品だった床には、娘のおもちゃがぶつかった小さな傷が増えていった。
ダイニングチェアには、いつの間にか娘が貼ったシールが一枚。
家を建てたばかりの頃なら、「貼っちゃだめだよ」と言っていたかもしれない。
でも今は、そのシールを剥がせずにいる。
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友達に今後のことを話したとき、こんな言葉をかけてもらった。
「家は売った方がいいんじゃない?」
「北海道に帰った方が、子育ては楽なんじゃない?」
どちらも、私のことを思ってくれている言葉だった。
だから否定はできなかった。
実際、その方が現実的だったのかもしれない。
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でも、毎朝娘が楽しそうに保育園へ向かう姿を見ていると、この場所にはもう娘の日常があるんだと思う。
休日になれば、リビングいっぱいにおもちゃを広げる。
「できたー!」
そう言って笑う娘の声が、この家に響く。
その姿を見ていると、この家で暮らし続ける理由を、娘が少しずつ教えてくれているような気がした。
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北海道に住む両親は、すぐに頼れる距離にはいない。
だから毎日の送り迎えも、ご飯も、お風呂も、寝かしつけも、基本は娘と二人。
慌ただしくて、余裕なんてない日も多い。
それでも、その毎日が少しずつ、この家の景色を変えてくれた。
ソファで一緒に絵本を読む時間。
休日にお菓子を食べながら笑う時間。
リビングを走り回る小さな足音。
気づけば、この家には、あの日思い描いていた未来とは違う思い出が、少しずつ増えていた。
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娘が寝静まったあと、一人でリビングに座る夜がある。
照明だけが静かについていて、おもちゃは床に転がったまま。
ふと、この家を建てた頃の自分を思い出す。
あの頃の私は、こんな未来を想像していなかった。
きっと驚くだろう。
この家を残したことが、本当に正しかったのか。
その答えは、まだ分からない。
でも今日も娘は、
「パパ見て!」
と笑っていた。
その声は、今日もこの家に響いている。
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これまでの記事では、娘との何気ない会話や、仕事と育児の間で揺れる気持ちを書いてきました。
もし初めて読んでくださった方がいたら、そんな日常の記事も読んでいただけたら嬉しいです。
