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転生したら掃除用具入れだった件



〜スイス・オーストリア・ネパールを巡る、自販機の話〜

私は高校生の頃、スイスのマイエンフェルトという町を歩いたことがある。
ハイジの舞台として知られるその土地で、駅の自販機と出会った。

17歳の私はお腹が空いてお菓子が欲しかった。
そして「スイスの自販機ってかっこいい」そんな単純な気持ちでお金を入れて、商品をくるっと回して、

落ちてこなかった。

お菓子が。

仕方なくもう一度お金を入れて、同じ商品を買った。
2個分の料金で、ひとつのお菓子。
誰もいない駅。誰にも言えない。
「まあ、スイスの自販機だし、こういうもんかな」
自分にそう言い聞かせて、チョコをポケットにしまった。



それから何十年か経って、息子が18歳でウイーンへ留学した。
クラシック音楽の勉強をしながら、ヨーロッパ各地を旅していた。

ある日、ふと息子と自販機の話になった。

「ねえ、あのヨーロッパのガシャコンって落ちてくるやつ、使えなくない?」
「そうそう!落ちないときあるよね?」
親子で、時を超えてまったく同じことを言って笑った。
国は違ったかもしれないけれど、きっと、同じタイプの自販機だった。



そして私はネパールの大地に降り立った。
乾いた山道を歩き、暑さに疲れ、「水が飲みたい、ジュースが飲みたい」と思っていたとき

自販機が
あった。

あのヨーロッパで見かけた、例のタイプ。
少し興奮して駆け寄った。
けれど近づいてみると、中にあったのはモップとホウキだった。


!?


扉は開きっぱなし。配線はむき出し。
缶ジュースは一つもない。
でもその機械は、掃除道具入れとして、きちんと使われていた。



スイスでは、ルールどおり仕事を果たせなかった自販機。
オーストリアでも、同じく“落とせない”存在として話題になった自販機。
でもネパールでは、全く用途が変わって人の生活に溶け込んでいた。

よかったね。
生まれ変わって、みんなの生活の一部になれたんだ。

もう、誰も君を使えない奴だなんて思わなくなったんだ。 

転生したら掃除用具だった。
それはいっけん笑えるようでも、心温まる話でもある。
壊れても、目的が変わっても、場所を変えて生きていける。
あのとき落ちなかったお菓子は、
別の場所で、別のかたちで、ちゃんと人の役に立っていたよ!

息子に報告だ!

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