生き生きとした恋の話

 佐藤弘司を失墜させなければならない。佐藤弘司は株式会社ニューエイジコーポレーションの代表取締役であり起業コンサルタントである。この男の権威を失墜させる流言を書かなければならない。が、方法がわからない。
行き詰ったので気晴らしにコンビニに行った。陳列棚に、ふと『恋愛モノの書き方~初心者でも安心ガイド付き~』という本があるのに気付いた。気晴らしにパラパラとめくってみた。


 恋愛モノの書き方~初心者でも安心ガイド付き~

 恋愛話はよく雑談の種となっています。恋愛話は床屋政談などと違って万人に好まれています。少なくとも、これを嫌う人は表立ってはいないことになっています。内容はほほえましいものが多いので、強盗殺人といった重苦しいものよりも話題に出しやすいです。このように、恋愛話はこのようにソフトな側面があります。
ガイド1 多くの人に読まれるソフトな話を書くなら。恋愛モノがオススメです。

 しかし恋愛というものは感情の強い表れなので、本人は真剣に行動していても、しばしば愚かな行動になりやすいです。この真剣な愚かな行動を詳しく描写すれば、恋愛の愚かさが主人公の愚かさにすり替えられ、傍観者である読者は本人に優越感を抱くのです。こうして恋愛モノは読む人を和やかなほほえましい気持ちにさせるのです。。
 ガイド2 読む人をなごやかな気持ちにするには、主人公の真剣な愚かな行動を詳しく描写しましょう。

 ……

 恋愛モノ……。まあ使えなくはない。しかし読んでいるうちに、とりあえずかけそうな気になってきた。というか、抽象論ばかりでイライラしてきた。大体、こんなものはなあ、具体例があってナンボなんじゃいい! こんな空理空論読んでる暇があったらとっとと書いた方がいい。怒りに駆られて、佐藤弘司の流言を書き始めた。


 自称メディア作家・佐藤弘司の稚拙なラブレター

 佐藤弘司は㈱ニューエイジコーポレーションの代表取締役であり起業コンサルタントとして有名だが、メディア作家なる珍妙な肩書きをデッチ上げて文筆家面していることでも有名である(笑)。その著書は『100万人の心を動かす「叫び」』、『松下幸之助が言いたかった「ほんとうな」こと』、『人材を「観ぬく」たった1つのアドバイス』など枚挙に暇がない。しかしながら、これらの著書は㈱ニューエイジコーポレーション内にある「書籍編集部」のゴーストライターによるものだということが知られており、全く読む価値は無い(大笑)。
 ではそんな佐藤の「生の」文章はどんなものなのだろうか。その答えは佐藤の生まれ育った石川県小樽町にあった。
 佐藤の高校時代は成績不良で部活動もせず鳴かず飛ばずであった。しかしながら生来の“女好き”はこの時すでに発揮されており、ある女性にこまめに働きかけていた。その女性は同級生の植田晶子。佐藤は植田さんと執拗にファミリーレストランに行きたがり、しつこい佐藤に嫌々折れてファミリーレストランに付いていった。ファミリーレストランで佐藤は二時間もの間、自分はいかに優れているか、同級生はいかに幼稚か、授業はいかに無意味か、そしてこれからの自分を見ていろと滔々と、植田さんのうんざりした顔を見ずに語り続け(苦笑)、最後に次の様な紙片を読み上げた。


 コスモスよオレたちになろう

斎藤(注:英語教師)の授業が何になる?
福ケン(注:福井健太。同級生)のサッカーが何になる?
民主党のマニフェストが何になる?
みんな みんな 無駄になる!

口でいったもの 手でかいたもの あしでけったもの
みんな みんな 意味が無いんだ 

オレは「観て」いる 「観て」いる「叫んで」いる
「叫ぶ」とほんとうになる

オレは5年後何になる?
でっかい社長になる!

ああ校門を笑って通り過ぎてゆく可憐なキミよ
貴女の朗々とした長い髪はきらきらと教室のオレを爽やかなcosmosで包む
秋桜は爛々と 6ヶ月後に輝く紫陽花になる

高貴な紫陽花が雨に濡れている
可愛い花びらの雫は何になる?
愛、未来、子供!

オレは5年後社長になる
目で「観て」周りのヤロウ共をけちらかして
「ほんとうな」社長になる!

オレらの家訓はたった四つ
目で「観て」
口で「叫んで」
「ほんとうな」勝ちをゲットする!
そしておやつは甘いお団子

校門にいる高嶺のコスモスよ
どうか窓辺に下りて
朗々と香っておくれ

そしてその胸にある 細かい模様で飾られた  そのブラジャーに覆われた
二つの甘いゴマ団子をオレに

開けゴマ団子!!

 佐藤は朗読した後この紙片を植田さんに渡したが、こうした稚拙なアプローチに植田さんは当然呆れかえり、その場で佐藤を振ってしまったという(大笑)。
 この時の悔しさが佐藤の歪んだ上昇志向を加熱し、怨念に取り憑かれた佐藤は「暗記項目を『叫び』ながら」東大受験に励み、医学部を諦め法学部も諦め経済学部に三浪の末ようやく入学するのである。
 それにつけても佐藤の稚拙な文章は「100万人の心を動かす『叫び』」どころか一人の女性もついてこない幼稚な「泣き声」でしかなく、こんな男にメディア作家が務まるわけがない。
 佐藤は最近、著書を売りつけるためにインターネットに「ベストセラーメディア作家語る 佐藤フィロソフィーをあなたに……」などの広告を打ち出しているが、それはゴーストライターの書いた美辞麗句集に過ぎず、佐藤本人の力量はこのラブレターで明らかである(爆笑)。

2013/09/24

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