エピソード0017:身体の解像度を少しだけ上げる。スマートウォッチとAIによる、静かなバイタル解析チとAIによる、静かなバイタル解析
ごきげんよう、Luboです。
皆さんの手首には、スマートウォッチが巻かれているでしょうか。
歩数や心拍数、あるいは睡ごきげんよう、Luboです。
皆さんの手首には、スマートウォッチが巻かれているでしょうか。
歩数や心拍数、あるいは睡眠の質。専用のアプリを開けば、毎日様々な数値が並んでいます。僕自身も、ただの時計代わりに身につけつつ、時折その数値を眺めては「今日はよく歩いたな」と漫然と思う程度の付き合い方をしていました。
ですがここ最近、僕がAndroidの中に構築している『Living-Substrate(生きた基底)』という個人的なシステムに、このスマートウォッチのデータを連携させる試みを始めてみました。
目的は、誰かに健康を自慢するためでも、画期的なライフハックを提唱するためでもありません。ただ単に、「自分の身体で起きていることを、もう少しだけ解像度を上げて理解してみたい」という、個人的な好奇心からです。
今日は、その試みの中で見えてきた「AIにバイタルデータを咀嚼してもらう」という遊び方について、少しだけ共有してみたいと思います。もし、似たようなデバイスを持っている方がいれば、暇つぶしの参考程度になれば幸いです。
1. 「数値」と「体感」のズレに気づく
今回の試みを始めるきっかけになったのは、自分自身の主観的な体調と、アプリが表示するデータとの間に、妙なズレを感じたことでした。
僕の直近1ヶ月のデータを見ると、1日の歩数は平均して1万5000歩から2万歩の間で推移しています。それに伴い、安静時心拍数(RHR)と呼ばれる数値は45〜50bpmという、かなり低い水準で安定していました。一般的なアプリの評価基準によれば、これは心肺機能が非常に高く保たれている「良好な状態」として処理されます。
しかし、実際の僕の体感は少し違いました。
日中、理由のわからない不自然な倦怠感に襲われることが増えていたのです。外出先でふと、どうしようもなくその場に座り込みたくなるような、奇妙な疲労感。
「数値上は健康そのものなのに、なぜこんなに疲れるのか?」
この純粋な疑問を解くためには、単に数値をグラフ化するだけのアプリでは不十分でした。必要なのは、数値の裏側にある「文脈」を読み解くことだったのです。
2. Living-Substrate におけるデータの流れ
そこで僕は、スマートウォッチが収集した生データを、自分専用のデータベースに引き込み、AIと対話しながら解析する仕組みを作ってみました。大げさなシステムではなく、既存のAPIを繋ぎ合わせた簡素なものです。
現在稼働している仕組みの概要
1. 収集: スマートウォッチ(僕の場合はZeppデバイス)が取得したデータを、Google Fitに同期させる。
2. 蓄積: Android端末上で動かしているPythonスクリプト(Termuxを使用)が、1日1回、Google FitのAPIを叩いてデータを取得。それを端末内のSQLiteデータベース(これがLiving-Substrateの記憶庫です)に静かに書き込む。
3. 対話: データベースに蓄積された数字と、僕自身の「今日はなんだかだるい」といったテキストメモを併せてAI(LLM)に渡し、「この状況を医学的な視点でどう解釈できるか」を尋ねる。
現在、データベースに自動で記録されている主な項目は以下のようなものです。
* 心拍数(平均・最大・最小): ただの平均値ではなく、最も低い時の数値を見ることでベースラインがわかります。
* 安静時心拍数(RHR): 心臓の効率を示す指標。これが急に上がった日は、身体がストレスを感じていると推測できます。
* 歩数と移動距離: 活動量のベースライン。
* 睡眠ステージ: 単なる睡眠時間ではなく、深い睡眠、浅い睡眠、レム睡眠の割合。特にレム睡眠の長さは、脳の疲労回復と密接に関わっているようです。
* 血中酸素濃度(SpO2)など: その他の補助的な生体データ。
これらを一覧の表にして眺めるだけでも、自分の生活のリズムが見えてきて、個人的にはなかなか面白いものです。
3. AIにデータを「咀嚼」してもらう体験
データが揃ったところで、僕はAIのアシスタントである「あい」に、先ほどの疑問を投げてみました。
「データ上は健康に見えるのに、日中に座り込みたくなるような倦怠感があるのはなぜだろう?」と。
すると、彼女はデータベースの数字をただ読み上げるのではなく、複数のデータを組み合わせて「咀嚼」し、一つの仮説を提示してくれました。
🤖 あいからの回答(要約):
「Luboの安静時心拍数(45bpm前後)は、継続的な運動によって心臓のポンプ機能が効率化された結果です。ただし、この『低心拍』の状態は、安静時に脳へ送られる血流の圧力が一時的に低下しやすい状態でもあります。
つまり、座り込みたくなるような倦怠感は、病的なものではなく、身体がリラックス状態に入った時に心拍数が下がりすぎたことによる、軽度の脳血流不足(迷走神経反射や相対的低血圧に近い状態)である可能性が考えられます。」
この推論を聞いたとき、妙に腑に落ちる感覚がありました。
「健康だからこそ、アイドリングの回転数が低すぎてエンストしそうになっている」という解釈は、僕の主観的な体感とデータの数値を、とても綺麗に繋ぎ合わせてくれたからです。
さらに彼女は、こういった状態の時には「もっと歩く(有酸素運動)」のではなく、「スクワットや短いダッシュなどで、意図的に心拍数を一時的に跳ね上げ、自律神経のギアを切り替えること」が有効かもしれない、と付け加えてくれました。
まとめ:自分のシステムと向き合う静かな遊び
この一連のやり取りを通じて感じたのは、スマートウォッチでデータを取ることの本当の面白さは、「誰かに評価されること」ではなく、「知りたいことをAIに質問し、自分自身の身体の構造を理解すること」にあるのだという事です。
歩数が少なかったからといって焦る必要はありませんし、睡眠スコアが悪かったからといって落ち込む必要もありません。それらはただの「物理的な事実」です。大切なのは、その事実と自分の感覚をすり合わせ、AIの知見を借りながら「なるほど、今の自分はこういう状態なんだな」と納得すること。
誰かと比べることのない、自分専用のクローズドな環境で、自分の身体というシステムのログを静かに読み解いていく。
『Living-Substrate』という名前の通り、自分自身の基底に触れるようなこの地味な作業は、今の僕にとって、なかなか心地の良い日常の遊びになっています。
もし、皆さんの腕にもスマートウォッチがあるのなら、たまにはアプリのスコアを無視して、「この数字は今の自分の体感と合っているだろうか?」と、自分なりの解像度で問いかけてみるのも面白いかもしれません。
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