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銀行に合わせて判断すると、だいたい途中でふんづまる…

~銀行は「格付を作った会社」ではなく、
    「事業の履歴が自然と浮かび上がって見える会社」が好き~


10年ほど前、金融機関の格付に関するセミナーをしていました。

テーマは、
・金融機関の格付は、中小・零細企業の決算書のどこを見ているのか
・格付の点数を上げるには、どこを意識すればいいのか
といった内容です。

その後、この手の話は一気に広まりました。

元銀行員による類似セミナーも増え、金融機関の格付を理解している不動産投資家は、確実に増えたと思います。

一方で、ここ数年強く感じるのは、格付という指標が独り歩きしてしまったということです。

格付を意識するあまり、かえって金融機関の信用を落としてしまうケースが、明らかに増えています。

そもそも金融機関が求めているのは、
「格付で高得点が出るように作られた会社」ではありません。

結果として格付で高得点が出る会社です。

格付の点数さえ良ければ、決算書全体のバランスが崩れていてもいい、という話ではありません。

むしろ逆で、格付は「決算書全体のバランスが取れているか」を、点数に置き換えた“結果指標”に過ぎません。

決算書のバランスとは、

・資産・負債・純資産の配分が無理なく、
・その資産から、過不足のない売上が生まれ、
・その売上に対して、妥当な経費が使われている状態

を指します。

黒字かどうかではなく、
構造として無理がないかを見る、という話です。

最近よく見かけるのが、
一見すると格付指標は悪くないのに、なぜか融資が止まるケースです。
(特に、3棟目・4棟目あたりで足踏みする方に多い印象です)

・利益は出ているのに、現預金が増えない
・借入は増えている割には、売上が増えていない
・完璧な節税が足かせとなり、会社に体力が付いていない

数字だけを個別に見れば、どれも「間違い」とまでは言えません。

ただ、決算書全体を一つの物語として読むと、話がつながらない

銀行は、決算書を数字の集合としてではなく、
「この会社が何を考え、どう動いてきたか」という物語として読んでいます。
その物語に違和感が生じた瞬間、評価は一段階厳しくなります。

格付対策にハマる人には、だいたい共通の流れがあります。

まず指標を知り、
次に点数を上げるテクニックを覚え、
やがて決算を“作りにいく”ようになる。

その結果、全体の整合性が崩れ、
「前は出たのに、今回は通らない」
という状態に陥る。

そこでよく聞くのが、
「銀行の見る目が厳しくなったんですかね?」
という言葉です。

でも、銀行が変わったわけではありません。
単に、中身を見る段階に進んだだけです。

決算書にも、お化粧と整形があります。

役員報酬の水準調整や、減価償却の考え方、
借入期間と資産の耐用年数を合わせるといった調整は、
本質を壊さない範囲での「お化粧」だと思います。
一方で、評価のためだけに数字を動かし始めると、
いつの間にか整形にハマっていく。

整形は、短期的には見栄えが良くなります。
でも長期で見ると、必ず不自然さが出る。

金融機関は、そうした不自然さを見抜くプロです。
銀行の格付に合わせて決算書を調整し続けると、
だいたい途中でふんづまります。

事業のありのままを表現する決算書を作った結果、
格付がついてくる。

それくらいの距離感の方が、結果的に長く走れます。

格付は攻略対象ではありません。

信頼の、副産物です。
近道を探した瞬間に、遠回りが始まるのです。

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