【大規模危険地区】
これは作り話です。こんなことが、あるはずがありません。登場する人物も仮名であり、場所も架空の場所で、時間も適当です。
私は店を建てようとした時に近所の方から嫌がらせを受けました。それは建設予定の裏の高台が田んぼの水路になっており、「店を建てることで、この水路に悪影響が出るのではないか」という懸念が、反対の声となって私に向けられました。勿論私もそれを承知しており、その為に多くの費用をかけて整備を行いました。店は無事に出来て、水も難なく田んぼに流れるようになりました。
数年が経過したある休日のことです。外出していた私は、強まる雨脚に急かされるようにして帰路につきました。
店の玄関に立ち、ガラス越しに中の様子を見た時、私は自分の目を疑いました。店内に、あるはずのない靴が浮いていたのです。
「おかしい」と、
扉を開けた瞬間、店の中から大量の水が溢れ出してきました。高台にある田んぼの水路が溢れ、その濁流が私の店を直撃していたのです。
この浸水被害により、店は2週間の休業を余儀なくされました。しかし、田んぼの持ち主たちは「自分たちは知らない」と、一点張りでした。
「雨の日くらいは、せめて水路のせき止めを外して、水の量を調整してもらわないと困ります」
しかし、返ってきた言葉は 「そんなに心配なら、あんたが自分でやりなさい」
その後、同じような被害が再び繰り返されました。2回にわたる浸水、そして合計1ヶ月近い休業。修繕費も含め、私は甚大な損害を被りました。それでもなお、彼らから謝罪の言葉を聞くことは一度もありませんでした。
それからしばらくして、大きな転機が訪れました。私の店の周辺が大規模危険地区に指定されたのです。
それに伴い、店の裏手には大がかりな砂防ダムが建設されることになりました。かつて私を苦しめた水害の脅威は、この巨大な構造物によって完全に遮断され、私の店と生活は守られることとなりました。
しかし、山の水の流れが以前とは根本から変わりました。ダムに集まった水が想定以上の勢いで溢れ出し、毎年、大量の土砂がふもとの田んぼへと流れ込むようになりました。
かつて「心配ならあんたがやりなさい」と言った方々の田んぼは、土砂に埋まり、稲刈り機も泥に足を取られて使い物にならず、機械を諦め、手作業で稲を狩っています。さらに土砂の混じった田んぼでは収穫量も激減しました。
嫌いな人に「ありがとう」
心のバランス
追記 止めときます。
