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心の届く距離

知らない場所で
知らない誰かが
傷ついていると聞いても
胸の奥は静かなまま
風の音に紛れていくことがある

けれど
目の前の誰かの影が
ほんの少し揺れただけで
心のどこかがそっと震えて
言葉の灯りを探し始める

人の心理は
思っているよりずっと複雑で
遠い痛みには鈍く
近い温度には敏感に触れてしまう

それは冷たさじゃなく
触れられる距離にあるものを
守ろうとする
小さな優しさの形なのかもしれない

価値観も
優先順位も
積み重ねた日々も
その時々で
違う答えを差し出してくる

正しいと思った選択が
正しさを持たないこともあり
迷いながら伸ばした手が
誰かをそっと支えることもある

人はみな
揺れながら生きている
遠い痛みに無関心なわけじゃなく
近くの温もりに
より強く心が動くというだけで

その揺らぎの中で
私たちは今日も
誰かの影を見つめ
誰かの光に触れ
静かに歩いている


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