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沖縄の戦後八十年を読む

 沖縄の現代史というと、誰もがまず思い浮かべるのは沖縄戦のことでしょう。

 事実、沖縄戦に関する著書は、それこそ汗牛充棟というほどあり、いまも少なからぬ人々によって読まれ続けています。

 しかし、それと比べると、沖縄戦が終結してから今日までの沖縄の戦後史について、わたしたちはどれほど知っているといえるでしょうか。

 ほとんど知らないといってもいいのではないか。

 たとえば、米軍統治時代の沖縄で起きた出来事として、〈キャラウェイ旋風〉という言葉をしばしば耳にします。かつて、沖縄にはキャラウェイという高等弁務官がいたこと、その人物が「沖縄における自治は神話である」と言い放ち、多くの沖縄県民の怒りを買ったということが、時折、沖縄県内のニュース番組や新聞記事で紹介されることがあります。

 ところが、たいていの場合、キャラウェイ旋風について地元メディアが伝える内容は、いま書いた程度の記述以上に筆が及ぶことはありません。これではあまりにも大雑把すぎて、何のことやらさっぱり分かりません。

 キャラウェイ旋風とは何だったのか。それは、復帰前の時代を生きてきた世代の方々にとっては、改めて説明の要がないほどに自明のことなのでしょう。しかし、同じ沖縄県民でも、復帰後の時代しか知らない世代にとっては、そうはいきません。

 そもそも、キャラウェイとは何者なのか。高等弁務官とは何か。「自治は神話である」という発言が飛び出した背景には何があったのか。キャラウェイ発言の何が沖縄県民の怒りに火をつけたのか。復帰後に生まれた世代にとっては、全く分からないことばかりです。知らないことばかりです。

 しかし、沖縄の日本復帰からすでに50年以上が経ったいま、復帰後世代も、そういつまでも、それは自分が生まれる前のことなので知りません、授業で習っていないので分かりませんという逃げ口上を並べて、やり過ごす訳にはいかなくなっています。

 わたしは、復帰の年に生まれた、いわゆる〈復帰っ子〉とほぼ同世代に当たりますが、数年前、もしも自分に高校生や大学生ぐらいの子供がいて、キャラウェイ旋風って何? 島ぐるみ闘争って何だったの? 反復帰論って何なの? などと尋ねられたら、どれだけ満足に答えられるだろうか、と考えたことがありました。そして、知ったかぶりさえもできないほどに、自分が沖縄の戦後史について無知であることに気がつき、愕然とさせられました。さすがにこれではまずいと思いました。

 それから、自らの無知を恥じる思いに急きたてられて、目につく限りの沖縄の戦後史に関する本を、片っ端から手に取るようになりました。次回から紹介する沖縄本は、そのような経緯で読み通してきたものです。いまも読み続けています。

 これらの本を読み進めながら、わたしは圧倒されてしまいました。いささか時代がかった物言いを許してもらえば、自分の足下にこれほどまでに豊饒な歴史があったのかと、脳天をはたかれたかのような衝撃を受けたからです。

 そして、それらの本のページごとに刻み込まれた沖縄の戦後史は、いまや沖縄社会の中軸になっている──そして、私自身もその一員である──復帰後世代にとって、知っておかなければならないことばかりだと、強く感じるようになりました。

 わたしは携帯電話も持っていないシーラカンスの如き人間ですが、それが柄にもなく書評ブログを書こうなどと思い立ったのも、復帰後世代の人々に、これらの本について知ってもらいたい、できれば手に取って読んでもらいたい、という思いが抑えられなくなったからです。読者の範囲をことさらに狭くするつもりはありませんが、わたしとしては、まずは第一に、同世代の沖縄県民に向かって書いていきたいと思っています。

 紹介する本のラインナップはほぼ固まっていますが、かなりの長丁場になると思います。末永くおつきあいいただけたら幸いです。

              (戦後八十年目の「沖縄慰霊の日」に記す)
 
 

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