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■ 敗者の目覚め:タダより高い「家賃五年間:無料」-----【創作大賞2026】大地を慈しむ「小乖乖」:都会からの移住者が、農舎の修繕で学んだ土地の理(ことわり)

■ 敗者の目覚め:タダより高い「家賃五年間無料」


泥に埋もれた農舎を目にした当初、私はあまりに楽観的だった。柔らかい泥なら、鍬で掘り返せばすぐに片付くと信じ込んでいた。だが、農舎の背後に広がる山肌の土は、まるで岩盤のように硬く凍てついていた。
私が鍬を力任せに振り下ろすと、金属音と共に火花が散った。強烈な反動で柄を握り続けることすらままならず、手首には鉛をぶら下げたような痛みが走る。渾身の力を込めて五、六回打ち下ろしても、地面には浅い傷が刻まれるだけだった。十数回も繰り返せば息は上がり、二十分と持たずにその場へ膝をつく。力仕事に慣れた土虱を呼んで助太刀を頼んだが、彼でさえ数度鍬を入れただけで肩で息をつき、毒づく。「クソッ、何だこの土は! 岩かよ!」
二人で鍬を手に取れば、先端は無残に曲がり果てていた。何が起きたのか。私と土虱は呆然と顔を見合わせ、立ち尽くすしかなかった。
作業早々に行き詰まり、途方に暮れていると、背後から淡々とした声が降ってきた。「その土はな、水を含めれば泥のように柔らかいが、乾けば岩になる。三日は水を流し込んでふやかさなきゃ、人間に掘れるもんじゃない。どうしてもというなら、ユンボを呼んで掘り起こすことだ」
いつの間にか、道端に一人の農夫が立っていた。長靴に竹笠、日に焼けた黒い顔。彼は静かに私たちを見つめている。私は思った。なぜ彼は笑いもせずにいるのだろう。都会から迷い込んだ間抜けな二人が、ただ地面を叩いては鍬を眺め、立ち尽くしている。荒唐無稽で滑稽極まりない光景ではないか。だが、彼の眼差しに嘲笑はなかった。ただ、この土地の摂理を知る者特有の、静かな諦念が漂っていた。

阿泉(アチュアン)は落ち着いた足取りで近づくと、この山肌の土質について説いた。火山岩成分を多く含み、水を含めれば泥流のごとく流動し、乾けば岩のように硬化する。鍬を入れるなら、前日に水を引いて土を潤しておかねば不可能に近いという。百メートルほど先の丘に暮らす阿泉は、私にとって最も近い隣人であり、都蘭で初めて親しく交わした土地の人の一人となった。彼の義兄が重機のオペレーターをしているという縁から、話は整地へと進んだ。日当四千元。翌日、我が家の庭には「小乖乖(シャオグワイグワイ)」の愛称を持つ小型のユンボが姿を現した。
地元の人々は、三十トン以下の小型ユンボを親しみを込めてそう呼ぶ。建築現場で唸りを上げる二百トン、四百トン級の怪物たちと比べれば、三十トン級など、まるで手のかからない「いい子」に過ぎないからだ。小乖乖は果樹園や菜園、あるいは小さな農舎の整地にはうってつけだった。台東の田舎では、こうした重機を三トン半のトラックに載せ、果樹園の整備や竹林の開墾へと奔走する専業のオペレーターたちが少なくない。
ある日、おもちゃのような乗り物に跨る男を見かけた。前方に突き出た小さなアームが「ギギ、ググ」と音を立てて動く。大人が子供の玩具にまたがっているかのような滑稽な姿だったが、狭い路地裏に入り込み、壁際で器用に溝を掘るその動きに、私は合点がいった。この小さな機械こそが、過酷な農村の暮らしを支え、大地を慈しむ真の「小乖乖」なのだと。


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▼ 本作は「創作大賞2026(ノンフィクション部門)」応募作品です。 台湾・都蘭の荒野で、泥と格闘し、漂流木を拾い集めて手に入れた「世界を建て直す術」。

▼ はじめての方へ(著者プロフィール・書籍全貌はこちら) [都蘭山居手帖:泥と風、そして漂泊の記憶]  #https://note.com/lucid_tiger9665

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