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ノンケに恋した話

 社会人になって初めてノンケに恋してしまった。僕より年上で仕事ができて憧れ、頭を撫でて可愛がってくれたことが嬉しくて、いつしか好きになっていった。背が高くて運動神経がとっても良くてカッコ良くて輝いて見えたのだ。まだその頃は、ゲイであることをひた隠しにして受け入れていなかったけど、溢れ出てくるゲイである自分をコントロールする毎日だった。

 Excelの入力に悪戦苦闘していた時、いきなり座っていた椅子の少し空いていた後ろの部分に座ってきて、真後ろから手取り足取り教えてくれたのだ。えっ、ちょっと待って、真後ろじゃないか、しかもあそこが当たってるし、なんだこれは?そんなことされたら、勘違いするじゃないか。ストレートの人がこんなことするはずがない、もしかしてこの人もゲイなのか?自分がゲイであることを隠しているから、あなたはゲイですかなんて確認できない。

 彼女がいると聞き、やっぱりゲイではないのか、その現場を見ようと休日なのに出掛けて探すこともした。何をしたかったのか、彼女がいることをこの目で確かめて、諦めたかったのだ。諦めさせるしか無かった。それがいつしか彼が地方に転勤になって、突然離れていってしまい、諦めに変わった。そして結婚したことも聞いたし、やっぱりノンケだったのかと思ったけど、確認できなかった。そして転職したことも聞いて、それ以来すっかり縁遠くなった。

 数年が経って大阪から東京に転勤になった時、フェイスブックからメッセージが来て会うことになった。もう、その頃の僕はゲイであることを受け入れて彼氏もいた。会ってみた、会って昔のことを話して懐かしさに花が咲いた。でも、それだけでそれ以上のことも無かったし、もう昔のように抱いた気持ちは全く無かった。気になっていた、あなたはゲイですかなんて確認する気持ちも無かった。って言うか、なんでこんな人を好きになってしまったのかってくらい、冷め切っていた。サラリーマンとして、夫して父として生きている彼を見て、小さくまとまっている感じがして何の魅力も無かった。これで僕のノンケへの恋は終わった。確認できないままだけど、これで良かったんだ。

 ノンケに恋したのは、これっきりで他に一度も無い。WEBサイト、マッチングアプリ、ゲイの交流の場は今やいくらでもある。何もノンケに恋しなくたって良い時代になり、ノンケに恋する苦しさも体験しなくて良いし傷つくことも無くなってきた。僕も、マッチングアプリで最愛のパートナーを見つけて今も一緒に生きている。

 僕のノンケへの恋の体験は、今も僕の人格を形成する上で何らかの影響を与えてくれたことは間違い無いだろうと思う。この体験だけが輝いていつまでも僕の中で活き続けてくれればそれでいい。

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