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泣き虫ハッチと面接で「ダサい」といわれたあの日

「ダサい」と言われたことはありますか?


わたしはある。30年ほど前のことだ。面と向かってその日の服装について関西弁ではっきりと「ダサいねん」と言われたのだ。毒舌ファッションチェックの植松晃士でも「おブス〜」だ。そこには「お」が付いているだけ気遣いがある気がする。肉親や親しい友人に言われた経験ならある人もいるかもしれないが、赤の他人、初対面の相手に「ダサい」と言われた経験がある人は少ないと思う。しかも面接に行った先で言われたのだ。


ファッション業界でならあり得たかもしれないが、その会社はマスコミ関係だった。マスコミといっても一般的に想像する華やかなテレビ局や広告代理店ではない。新聞広告で見つけた求人に応募して書類が通り面接に行った。ビルの2階の小さなプロダクションだった。


少ない服の中から業界に合わせたつもりのきっちりかっちりスーツではないけど失礼に当たらない装いのつもりだった。白いノーカラーのブラウスとグリーン系のタイトスカート、パンプスで行った。当時のファッションとしてありふれたファッションだったと思う。


印刷物や書籍がどの机の上にも雑然と置かれた事務所の隅で始まった面接で、社長は開口一番関西人なら誰もが知っている芸能人の2人の名前を出した。自分たちは彼らのプロデュースをしていると言った。壁には彼らのポスターが掲示されていた。あぁ建物は小さいけれど大きな仕事をしているんだなとワクワクした。



その膨らんだワクワクは話せば話すほどにしぼんでいった。そして言われたのだ。
「今日の格好ダサいねん」
どういう流れでそう言われたのか記憶にない。まず驚いた。そして腹が立った。自分の全てを否定されたと思ったのか、「ブス」も含めて直接外見を否定されたことはなく衝撃だったのかもしれない。傷つき悔しかったんだろう。すぐさま反論したことは覚えている。多分「お前もダサいんじゃ」みたいなことを言い返した。今と違って毒舌を吐かなかったわたしだから面接の相手にストレートには言わなかったはずだ。昭和風に言えばオブラートに包んで言い返したと思う。


言いながら涙が溢れて泣きながら話をした。大人が面接で泣くのかと笑いたいならどうぞ遠慮なく。言い訳になるけどわたしは子供の頃からすぐ泣くのだ。赤ちゃんの頃は夜泣きが酷くて疳の虫封じの神社に参ったらしいし、小児鍼に連れて行ったと聞かされた気もする。幼稚園か小学生の頃は親から“泣き虫ハッチ”と呼ばれた。アニメ『昆虫物語 みなしごハッチ』のいつも泣いているハッチになぞらえたのだ。


今でもすぐに涙が溢れるがこれはどうにもならない。紫外線を浴びると肌が赤くなりブツブツができるとか、冷たい牛乳を飲むとお腹がゴロゴロするとか、乗り物酔いしやすいみたいな、自分の意思ではどうにもならない体質のようなものだと思っている。


その後も面接は続いた。面接というよりも闘論だったかもしれない。間違いなく不採用だと思っていたが、なぜか採用通知が届いた。けれどもわたしは辞退した。わたしはナイーブで繊細な女子だった。クソったれ、見てろよ垢抜けてギャフンと言わせてやる、仕事でも認めさせてやるみたいな反骨精神は持ち合わせていなかった。


その頃から今でも決してファッションセンスがいい人間ではない。骨格ウェーブかナチュラルか、パーソナルカラーがスプリングかサマーかも分からずいまだに似合うものが分からないファッション迷子だ。だけど「ダサい」と言われるほどではないと思っている。ただ、最近の自撮り写真を見るとちょっとこれは違うんじゃないのわたしって感じだ。


ここ数年新しい服や帽子を買わず、昔買ったものを着用しているが、以前似合っていた服や帽子が年齢を重ねた顔と体つきに合わなくなっているようだ。安くても今の自分に合ったものを身に着けなくては「ダサい」と言われかねない。


今のわたしが「ダサい」と言われたら、多分「えぇそうなんですぅーーーっ」とヘラヘラ返すだろうが、涙と言葉を垂れ流しながら論破する可能性もある。まぁ、今どき「ダサい」なんて言ったら侮辱罪に当たるかもで、誰も言わないだろうが。

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